らてまるとラライラさん

@rairahura

前提としてラライラはBBA


あれだけ勢いよく走っているところに水を差すようでどうも気が乗らないのだが

このまま見えなくなってしまうのは困るからのう

仕方あるまい

目の前を駆け抜けようとする丸い紫がかった頭に向けて言う

「出口はそちらではないぞ」

丸い頭はギクリと立ち止まるとこちらに振り返る

らてまる 私と同じデューンフォークの娘だ

彼女は口をあまり動かす方ではないようだが

薄い色の瞳は非常に雄弁で何を考えているかは容易くわかる

またやってしまった そんなところだろう

戦いともなれば誰よりも前で敵方の攻撃を受けて立つ なんとも頼もしい盾役なんだがな

他のところはどうも気が抜けておるのかむしろ急いておるのか

特に道を覚えるのがどうも苦手らしい

今日だけで道を逆走することはや3回

いつ変な分かれ道に入るか気が気ではなかったがなんとかそれだけは阻止できておった


らてまるの方向音痴は今に始まった事ではない

今回のように私と2人だけであれば特に問題はない いちいち指摘すれば良いだけのこと 時間がかかったとて私は特に気にはならん

盾役としての仕事についてはらてまるは非常に優秀だから癒し手たる私は楽をさせてもらっておるしな

だが他の者も共に行くとなるとそうはいくまい

ここは一つ 心を鬼にして教え込むしかなかろう

「らてまる」

私が呼びかけるとらてまるはおずおずとこちらを見る

やはり道を間違えることを気にしてはおるのだ 焦ってしまって余計に失敗してしまうといったところだろうか 若いのう

「今回はもう道を間違えても私は指摘せんぞ」

やはり口を開きはせんが薄い色の目は沢山の感情を伝えてくる

不安やら焦りやら

らてまるはどうも小動物のような雰囲気がしておってあまり強くものを言うと怖がらせてしまうのではないかと心配になる 私と背丈はほとんど変わらんがな

「一度落ち着くが良い 深呼吸だ」

私が言うとらてまるは詰めていた息を吐き出す

「心配するな 怒っておるわけではない お前さんなら落ち着いてしまえばきちんと道を選べるはずだ」

出来るだけ優しく語りかけるとらてまるは少し落ち着いたようで頷く

何度か深呼吸をすれば瞳から焦りの色が薄れていくのがわかる

そして小さな声で

「頑張るよ」

うむ その意気だ


一度敵を倒したら立ち止まって道を確認して

また敵を倒したら立ち止まって

ゆっくりゆっくり私たちは進んで行った

そして

「やった!」

らてまるが喜びの声を上げたように私たちは洞窟の最奥までたどり着いた

やはり落ち着いて進めばきちんとできるのだ

らてまるは喜色満面といったところ うむ 成功体験を積むのはよいことだ

まあ若いのだし焦ることもあろうがゆっくり成長すればよい


依頼人が要求していた品を回収すればもうここに用はない

「さあ帰ろうか」

「うん!」

らてまるは嬉しそうに頷いた

・・・頷いてから帰り道「ではない道」をずんずん突き進んで行った

まだまだ前途多難なようだの

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