おっさんが異世界行ったらおっさんのままだったので必死で生きます

マシンマン

第0話 おっさん異世界へ行く

 今日も残業を終え、会社を出る。


 まあ、本当は終わっていないのだが、どうせ終わらないのだから関係ない。


 そう考えながら宗治むねはるはとぼとぼと駅に向かう。


 給料は安いまま上がらず、残業もほとんどがサービス残業。唯一この会社でいいことは、人間関係が悪くないことだろうか。


 40歳になり今更転職する勇気も時間も根性も持ち合わせていない。正直集中してやればもっと早く終わらせることはできるだろうが、早く終わらせれば終わらせるほど仕事量は増えていく。


 そして仕事を早く終わらせる優秀な奴からこの環境に嫌悪してすばやく転職して行った。


 今残っている奴は自分も含めそれなりに対応力があり、面倒くさがりやばかりだと思う。


この拘束時間の長さには対応することはできるのに、そこから動くのは面倒で、いつの間にかこれ以上悪くならなければいいと思い始めている。


 本当にそうなのだろうか?

 考えた分だけリスタートは遅れる。

 それはもう、取り返せないほどに。


 そんなことを考えながら駅へと歩いていくと少しずつ町並みがにぎやかになっていく。


 いつもどおりの駅までの道。会社を出たのが八時、駅に近づくにつれ、飲み屋が増え、そこからは楽しそうな笑い声がこぼれている。


 自分も飲むのは好きだが、最近めっきり飲む仲間も結婚や仕事で連れなくなってきていた。


 今日は家に帰ったらビールでも飲もう。


 そう考えながら駅前の信号をわたって、


 わたっ……?


 あれ?


 足元にはあるはずの地面がない。


 大きな穴の用の空間にするりと落ちる。


「うぎゃあぁぁあぁぁ!!」


 どんどん落ちていく。


「ああ、俺死ぬのかな」


 なんとなくそんなことが脳裏に浮かぶ。


 だったらせめて痛くないのがいいかな。

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