第114話 リゾートダンジョン(2)
「海水の品質は問題なさそうだ」
「魔物の気配はしないにゃ。罠ももちろんなさそうにゃ」
「ええ、私もこのダンジョン全体を周りましたが罠はありませんし……ダンジョン下層への入り口もなかったのでおそらく、このダンジョンは今私たちがいるリゾート部分のみの編成でしょう」
クシナダは薄い浴衣を羽織ったまま暑そうに額の汗を拭った。
彼女は暑さに弱いらしい。
蛇だからな……。
「私もあんな風に水着になって泳ぎたいなぁ」
「クシナダは温泉好きだもんな」
「ええ、でも暑いのは苦手で……」
こんがりと小麦色になったヒメたちを見てクシナダは苦笑いをした。
俺とサングリエは昼飯の準備、安全確認ができたので大工たちやたくさんの人がリゾート施設を建設するためにやってきている。
「ソルトさんも泳ぎましょう!」
ぐいっ!
腕が引っこ抜かれそうなほどの馬鹿力で俺を引っ張ったフィオーネはザブザブと海に入っていく。すごくスタイルがいいし色気もあるはずなのに、フウタの言う通り全く色気を感じない。
まるで3歳児と遊んでるみたいだ。
——ざぶんっ
「ぶはっ!」
俺は尻餅をついて、しかも波ですっ転んだ。浅瀬で溺れかけるところだった。
近くではフウタがサクラに泳ぎを教えている。
ユキはウツタと一緒に貝殻探しに夢中だったし、シューは俺とサングリエが捕まえた海の魚に夢中である。
「はははっ! 遊泳場にするのにブイを設置するんです! 競争しましょう!」
と言いながらフィオーネは合図もなしに泳ぎだす。いくつものブイを勝手に持っていった。
「あぁ、めんどくさいからほっとこ」
「ひどいなぁ、ソルトは」
「ソルトさん、お肉が焼けましたよ〜」
ミーナとリアが炊き出しを始めているようだった。俺もあっちの手伝いをしないと。
***
「ごくろう……だったというよりはとても楽しんだようだな」
エスターは眉をヒクヒクさせた。
それもそうだ、日焼けしたやつら、浮き輪つけっぱなしの奴ら。
「あはは、ただ安全確認とそれからポートもグレードアップしておきました」
「グレードアップ?」
シューが胸を張って猫耳をピロピロと動かした。
「ツクヨミの力で入り込めないようにしたにゃ」
エスターは顎を上げてシューを見据える。
「ここの狐姉妹の力も借りたにゃ」
えへへ〜。とヒメとソラがエスターに会釈をした。エスターはまた無表情に戻る。
シューが使ったのはヒミコから教わった魔術だそうで。
まぁ、流通部を通ったものしかあのリゾートには運ばせないから恐らく大丈夫だろう。
「俺がしばらくは護衛隊の隊長を務めることになったんだぜ」
フウタが俺にVサインを向けた。
エスターのお気に入りだけあって好待遇だな。
「じゃ、俺たちはここら辺で」
「日焼けした子たちはいったん流通部によっていきなさいね。日焼け後のケアをしないと……」
はーい。と返事をした女たち。
俺とクシナダは先に帰ることにした。
ギルドのリゾート建設が無事、終わりそうなことにほっとした俺であった。
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