第2話 いらないはずの
俺は間違って生まれたたぬきだった。
幼い頃からたぬき社会にうまく馴染めず、何をしてもどこに行っても幅1センチほどずれていた。
他のたぬきたちはうまくやっているのに、どうして俺だけ馴染めないのだろう。
考えて、考えて、でも答えは出なくて、いつしか、自分は間違って生まれてきたのだと考えるようになっていた。
俺は間違って生まれてきた。でも、たぬきの存在意義の一つ、「ヒトを化かし」て帰ってくれば、立派なたぬきとして認めてもらえるかもしれない。
そう考えた俺は、成獣になってすぐに里を出た。
ヒトの形をとり、ヒトになろうなろうとして足掻く日々。里で人間学を学んではいたが俺はできないたぬきだったし、実際のヒトと里で習った「ヒト」とはまた違っていて、たぬきの中にいたときに味わったような「馴染めない気持ち」をここでも散々味わった。
しかし俺はヒトではなくたぬきなので、馴染めなくてもまあ当然かという気持ちもあったし、なんとかぎりぎりのところでやって、だんだん社会にも馴染めてきたような気がしたところで、この騒ぎ。
まあ馴染めていたような「気がしていた」だけで、本当のところは馴染めてなどいないのは明白だったし、日々積み上がっていく仕事にぎゅうぎゅうの満員電車に乗って会社に向かう日々にもうんざりしていたのでまあ、いいのだ。いいのだが、いざ里に帰ったところがこれでは少し困る。少しというか、大いに困る。
里以外に特に行くところもない。どうしたものか。
うーむと唸って顔を上げて、里の中央付近、大樹があったところに、人影を見つけた。
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