第11話 落命
「そんな……なぜだ……あのとき確かに州刺史府ごと焼き殺したはず……」
「いやーあのときは危なかった危なかった……脱出が遅れてたら死んでたわ」
覚束ない足取りで立ち上がったガクキを見下ろしながら、トモエは拳をぽきぽき鳴らしている。ガクキにとって、絶望的な状況であった。
トモエの危機察知能力を、ガクキは見誤っていた。トモエが回避を得意としているのは、ただ単に俊敏だからということではない。彼女には「第六感」ともいうべき危機察知能力が備わっており、そのために今日まで矢の一つももらわずに生き残ってきたのだ。
「さて、最後の仕上げ、いきましょうか」
ガクキのみぞおちに一撃必殺の鉄拳が叩き込まれたのは、その直後だった。吐血しながら壁の外まで吹っ飛ばされたガクキは、そのまま城外の地面に垂直落下した。その頭はトマトのように潰れ、土の地面に赤いシミを作った。
一時はエン国軍の大司馬まで務めた高官の、あっけない最期であった。
ガクキを失ったダイト守備隊は崩壊した。官吏もそれ以外も、我先にと城門から飛び出していった。エン国の都であったダイトは、ここに落城したのであった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます