登場人物その2 魔族たち1

〇エン国

・エン国王カイ

 魔族を統べる大魔皇帝の弟で、兄弟の中では三男に当たる。ミドルショートの金髪をしている。話し方は子どもっぽく、派手好きとも称されるが、時折国君の威厳を見せることもある。

 エルフの森に軍を送って返り討ちにされたことを根に持っており、ヤタハン砦をトモエとリコウに奪われた際もこれを放置してエルフの森への侵攻を優先させた。

 彼の魔術は宮殿の壁を素材にして岩石の巨人を生み出し、自身は内部の核に入って操る土魔術「岩石巨王ロック・ジャイアント」と、地面から上方向に飛び出す光線「地割れ光線グラウンドレーザー」。「狂暴なるカイ」の異名の通り、戦いにおいてはパワーと防御力にものを言わせてひたすら破壊活動を行う。

 大魔皇帝の兄弟は皆見目麗しい美少年の姿をしており、そのためトモエにはその容姿を気に入られていた。しかし結局トモエは彼を許すことなく、トモエに抱き締められ、ベアハッグによって殺害された。

 大魔皇帝の弟たちの中で初の戦死者であり、大魔皇帝は彼の死を大いに怒り悲しんだ。


・スウエン

 エン国の御史大夫ぎょしたいふ。リコウを目の敵にしており憎悪を燃やしているが、今の所理由は不明。

 元はセイ国人であり、リンシ大学を卒業後は諸国を巡り官職を求めた。セイ国とエン国の両方から声がかかったが、エン国の方が俸禄が高かったのでエン国に仕えることとなった。投石機などの兵器の改良を行い、その功績が認められて御史大夫に昇った。

 得意魔術は金魔術「拘束金輪キャッチング・リング」、相手の体に金輪を発生させ拘束する魔術である。拘束された者は魔術も扱えなくなるという強力な魔術である。その他、千里眼や転移魔術なども扱うことができる。

 歩兵十万戦車二千台の大軍を任されてエルフの森侵攻を命じられた際には自らの改良した投石機を使って油壺を投射する火計を行い、エルフの森の南半分を焼き払うことに成功する。総大将を任されたのも、作戦の鍵を握る改良型投石機の設計者であることからだった。しかし副将ゲキシンがエイセイに討ち取られ、自身もトモエの拳によって重傷を負わされたことで軍は作戦行動の中止を余儀なくされた。

 その後、エン国の都ダイトに突入したトモエたちと二度目の対戦を行う。拘束金輪キャッチング・リングでトモエたち四人を全員拘束したが、トモエの頭突きを食らって魔術が解除されてしまい、結局カクカイの力を借りて逃亡。その後は行方知れずになってしまった。

 ゲキシンとはリンシ大学時代の学友であり、彼には「あねさん」と呼ばれていた。


・ガクキ

 エン国の大司馬だいしば。元はギ国人であり、国王カイがカクカイに屋敷を立て師と仰いだという話を聞きつけてエン国に仕官し、東方での戦いで功績を挙げ大司馬に就任した。

 深緑色のミドルヘアーをした中性的な美少年。魔術師として強力な力を持っているのみならず用兵にも長け、ゴブリンを操るゾートの反乱の鎮圧に成功した。

 得意魔術は陽魔術「照灼たる晨光サニー・レイ」。青白い偽の太陽を上空から出現させ、そこから太い光線を地上に発射する範囲攻撃魔術である。遠距離に攻撃できる他、目視では攻撃の出所を探られにくいという利点を持つ。自身の千里眼の能力と組み合わせると非常に強力な攻撃魔術となる。

 国王カイを討ったトモエたちに報復戦争を仕掛け、九万の軍隊を率いて彼らを待ち構えたが、トモエとの戦いで深手を負わされてしまった。

 エン国がシン国の直轄地になった後は州の長官である州刺史に任命されたが、重傷で暫くは政務を執り行うことができず、妹のガクジョウに当面は政務を一任することとなった。


・ガクジョウ

 大司馬ガクキの副官にして彼の妹。容姿はそっくりだが前髪に二ヶ所、白いメッシュが入っている。

 ゴブリンとの戦いでは大雨を降らせる「大狂乱驟雨ガスティ・ヘビーレイン」を使って渡河中のゴブリンたちを押し流した他、手薄になったゾートの本陣を急襲し討ち取る活躍を見せた。

 その後、ガクキがトモエに重傷を負わされると、州刺史の役目を果たせなくなったガクキに変わって暫くの間実務を行うこととなった。


・カクカイ

 エン国の丞相じょうしょう。官吏の最高職である丞相に就任しているが、エン国における丞相は名誉職の意味合いが強く、実験はスウエンとガクキに掌握されている。もっとも、本人はこのことをあまり不満には思っていない。

 エン国王カイは彼に屋敷を立て、師と仰いで教えを乞うていた。その後、噂を聞きつけたガクキを推挙して招き入れ、続いてやってきたスウエンをも取り立てた。

 ガクキとスウエンが功績を認められて昇進すると、カクカイ自身は彼らを招いた功績で丞相に昇った。

 得意魔術は水魔術「平和主義者の護法ガード・スケイル」と「水流斬撃アクアカッター」。前者は魔術をかけた者の光の反射をずらす魔術で、これを自分や味方にかけることで敵の攻撃を逸らしてしまう。後者は圧縮した水を放つ攻撃魔術である。

 ダイトの宮中に突入したトモエたちと戦い、「平和主義者の護法ガード・スケイル」によって苦しめたものの、シフに魔術のからくりを見抜かれ、彼女のアドバイスを受けたトモエに殴られ戦死した。丞相、御史大夫、大司馬の所謂「三公」の中で唯一の戦死者となった。


・シンブヨウ

 エン国の衛尉。ダイトに突入したトモエたちの前に立ちはだかり、トモエとの一騎討ちを行った。衛尉とは「三公」のワンランク下である「九卿きゅうけい」と呼ばれる高位の官職の一種であり、宮殿の門の護衛部隊を統括する。

 得意魔術は火魔術「火葬塔デッドリィ・フレイムタワー」。敵を追尾する炎の柱を出現させて敵を攻撃する。しかし、トモエには敵わず戦死した。


・ゾート

 元はエン国の武官であったが官給品を横流しして私腹を肥やしていたのが発覚し、死罪を言い渡される。贖金制度が適用されて官位の剥奪と罰金刑で済んだものの、家財の一切と職を失い貧窮に陥る。そのことを逆恨みした彼は死霊魔術を応用して総勢百万というゴブリン大軍団を作り上げてエン国に反旗を翻すも、歩兵十二万戦車二千台の軍を預けられたガクキと戦い、守りを固めたガクキに兵を誘い出されて手薄になった本陣をガクジョウ率いる別動隊に奇襲され、自身は傀儡兵に包囲されて戦死した。

 ガクジョウは武官時代の彼を知っており、以前から素行の悪かった彼を密かに蔑んでいた。


・ソダイ

 エン国軍の北方方面における前線基地「ヤタハン砦」の司令官。金髪碧眼の美青年。

 必勝を期してロブ村に三十台の重戦車からなる重戦車部隊を送り込むも、トモエの活躍で全滅させられてしまう。その後、砦にたった二人で乗り込んできたトモエリコウ両名と戦いになる。

 得意魔術は陽魔術「光よ、我が敵の目を奪えフェイタル・フラッシュライト」。強烈な光を放って敵の視力を奪う魔術である。しかし、目を見えなくした程度でトモエを止めることはできず、ナイフを持って接近した所をトモエに殴打され戦死した。その後、ヤタハン砦は人間側に占拠された。


・ゲキシン

 エン国の武官。上将軍の印を授けられてエルフの森侵攻部隊の総大将となったスウエンの副将を務めた。得意魔術である火魔術「干旱乾風ショッキング・ドライゲイル」によって火計のサポートを行い、森の半分を焼失させた油壺投射作戦に貢献する。しかし、単独で五千の兵を率いてエイセイらの討伐に向かったスウエンに本陣を任された際にエイセイの「暗黒重榴弾ダークハンドグレネード」の直撃を受け戦死した。

 元ギ国人で、スウエンとはリンシ大学時代の学友。彼はスウエンのことを「姐さん」と呼んでいたが、スウエンには度々やめるように戒められていた。


・リップク

 エン国の武官。エルフの森戦争において兵五千を率いたスウエンに帯同してエイセイが長距離攻撃を行う山を包囲した。ラーテと戦い、木魔術「茨姫の城トーン・キャッスル」を使って茨のツルでラーテを拘束するも、それを引きちぎったラーテに長斧で斬られる。その際にナイフでラーテを刺し殺すも、自らも長斧の一撃が致命傷となって戦死し、相討ちとなった


・ソンタツ

 食糧庫の帳簿付けを仕事とする地方の小役人。ゴブリンに襲われて逃げている途中に追いつかれた所をトモエに助けられ、トモエ一行を高位の魔族と勘違いして彼らを船に乗せ、国都ダイトまで送り届けた。トモエたちの正体を知って驚いたのもつかの間、トモエの一撃で昏倒させられた。それ以降は不明。


・キキョウ

 エン国の武官。ガクキの命令で歩兵五千戦車七十台の軍を与えられ、人間に占拠されたまま放置されていたヤタハン砦を襲い司令官フツリョウと城兵たちをまとめて捕虜とした。ガクキとキキョウは捕虜を見せつけてトモエを脅迫したが、直後に現れたエルフたちの攻撃によって麾下の傀儡兵が撃破され、捕虜を解放されてしまう。その後、キキョウはエルフたちと交戦するも敵わず戦死した。

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