第22話 国を懸けたスケベな戦い

「るるるるルイさん!?何を言ってるのかな!?」

「私のお尻を触れ!!!はやくっ!!」

「ルイちゃん何を言ってるの…?これ以上私の怒りをかっても得することはないわよ?」

「何をためらっている!触れ!!」


ルイさんが膝をついて動かない俺の近くにお尻を近づける。

栗田が青春を捨て、意識が丸一日飛ぶほどの痛みと引き換えに得た幸せが、

何のリスクもなく俺の前に差し出された。


左手が本能的にルイさんのお尻めがけて動き出す。


だが、お尻を目前にして、右手に阻まれる。

本物の女性のお尻を触ることに、理性が反発したのだ。


左手が言う、女性側が触れと言っているんだ!!触って罪に問われることはないだろ!!


右手が言う、動画で証拠映像を撮ったのか!?もし、触った瞬間にルイさんが叫び始めて、警察に訴えたらどうする!?証拠がなければ、この展開を警察は信じてくれない!!


「ぐんぬ~~…」

「くっ…こんのぉおお!!腰抜けがーー!!」


お尻の直前で止まっていた俺の手に、ルイさんが自ら動いてお尻に少しだけ触らせた。お尻というより、もはやスカートだ。


「くっっっ////」

それでもルイさんは羞恥に悶えた。


「ちょ!ちょっと//!!スズキーノに何すんのよ!!」

「ふふふ///来るがいい。今の私は。。」


怒ったシグマが右ストレートをルイさんの顔面に向けて放つ。

凄い拳圧だ。。拳に当たる前に吹っ飛ばされそうだ。。

砂煙で目が開けられなくなる。


ズバーーーーーン!!!


ビリビリビリ!

拳の当たった衝撃波が俺の体を打つ。


顔の砂を払い、目を開けると5mほど後ろに吹き飛ばされ、横たわるシグマの黒パンティーが見えた。


「シグマ!!」


どうやら、当たったのはシグマのパンチじゃなく、ルイさんの裏拳だったようだ。


「ふふふ!どうだシグマーノ!これがスケベの力だ!!」


ルイさんが、かなり恥ずかしいことを堂々とドヤ顔で言ってる。。


シグマに駆け寄り抱き起こす。


「シグマ!大丈夫か??」

抱き起こすと傷一つない綺麗な顔が見えた。

あのルイさんのスケベ力で上がった拳を受けて傷がない。。?

よく見ると、腕まくりしたシグマの左腕が赤く腫れていた。

どうやら左腕でガードしたらしい。


「うっ、うう。。」

「シグマ!?」

「いったいな~。。」

「大丈夫か?」

「う、うん//」


俺に抱かれていたことに気づいたシグマは、こんな状況なのに嬉しそうだ。


「でも、まずいかも。。あんなにルイちゃんが強いなんて予想外。。というか、何か変よ。」

「何か分からないが、ここは逃げるしかないな!」

「…ねえ、スケベ力って何?」

「…」

さっきのルイさんの恥ずかしい発言が聞こえていたのか。。


「さっき、なんでルイちゃんのお尻触ったの…?」

「…」


「私のも触って。」

「え!?」

「だって//さっきのルイちゃんの裏拳の威力は普通じゃないもの!何か仕掛けがあるのよ。」

「だからってそんな…!」

「四の五の言わずに!はやく!//」


素早く立ち上がったシグマは、顔を真っ赤にしなが俺にお尻を向けた。

俺がつくったとはいえ、美しすぎる女性のボディラインに鼻血が出た。


「貴様!!スケベ力を使う気だな!!そうはさせん!!」


ルイさんは俺の鼻血に気がつき、こちらに走ってきた。


「スズキーノ早く!///」

慌てて急に近づいたシグマのお尻に顔がぶつかる。


「ぐぅっ!!」

「きゃっっ///ごめんスズキーノ!!」


顔に感じた柔らかいが適度に反発のある感触は、1秒も満たずに離れていった。

幻のようだったが、シグマのスカートについた俺の鼻血と、仄かに残る甘い香りは現実であったことの証明だ。


ズドーーーーーン!!!


シグマのお尻の感触を忘れまいと、脳にバックアップをとっていると、

重い鉄球が硬い大地に落ちたような音がした。


バタンッッ!!


シグマのスケベ力で高めたボディブローが当たり、ルイさんは白目を向いて地面に倒れた。

ルイさんのプクりとした赤い唇に、刺さるように出た白い八重歯は、

気絶するまでの数秒の痛みを物語っている。


今、一つの国の悪巧みが失敗に終わった。


「シグマ。家に帰ろうぜ。」


夕陽に照らされるシグマの背中は、朱色の翼が生えたかのように、

気高く、自由で、美しかった。


「うん!」

そして、笑顔で振り返って返事をする、その顔は夕陽よりも俺の心を赤く染めた。





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