第21話 女子、3日会わざれば、やきもきして見よ
「ぐばぁはっ!!」
肺の空気が噴きだしたようだ。
シグマはルイの腹に深々と入った掌底を抜く。
ガクッガクゥ!!
今日会ったばかりなのにわかってしまうほど、プライドが高く、それとともに武力が高いルイ・エナジーが膝と手を地面につき、四つん這いになる。
「がっふ。がっ!」
まだ呼吸ができないのか苦しそうに地面に顔を伏せる。
「ん?もしかして、両刃の拳のルイちゃん?」
「ぜぇぜぇあ…がはぁ」
「ねーねー!政府軍のルイちゃんでしょ??」
「うおぇえあ…はぁはぁ」
「なんで無視するの?ルイちゃん!!」
走って近づいていくと、回復で精一杯のルイさんに、質問をかけまくり、肩を揺さぶるシグマがいた。
「おいシグマ!ルイさんのダメージが回復してからにしなさい!」
「あ!そっか!ごめん!」
「ぐっ…くっ!はぁはぁはぁ…」
ルイさんは悔しそうに、こちらを睨みながら、か細い呼吸を繰り返している。
「ちょっとやり過ぎちゃったかな。。」
「自分の力を自覚した方がいいな…」
「だって、スズキーノを虐めてたように見えたからさ…つい力が入っちゃって。」
シュンとしているシグマの顔。
か、可愛い。
「まぁ…ありがとな。助かったよ。」
「え!うん!」
急に笑顔になるシグマ。
俺の一言一言に、そこまで一喜一憂できるものなのか。
ただ、シグマは笑顔の方が可愛い。
「はぁはぁ…人の頭の上で…はぁ。いちゃつくな!」
「ルイちゃん大丈夫?」
「ふっ!敵の心配をするとわな。。その甘さのおかげで、国は潰れずにすんでいる。」
「もう勝負は見えているのに、なんで降伏しないの??」
「我々の国が負けるなど、あっていいわけがないからだ!!」
俺の空気嫁とクラスメイトが、どっかの国の命運を握っている。
この大きな話に、普通の高校生である俺は割って入ることができなかった。
「そっか。じゃあ、お互い負けられないね。」
「最初からそうだ。」
ギュッとルイさんが拳を握る。
あの掌底をくらって尚、シグマに立ち向かう気力があるらしい。
ルイさんの闘士を感じたシグマも拳を握りそれに応える。
というか、シグマの戦う理由って、もしかして旅立つ前に言ってた、
(スズキーノが私を選んでくれるなら!!私は世界をあなたにあげる!!!)
に関係しているんじゃないだろうか。。
だとしたら、シグマが負ける理由は大いにあるぞ。。
そもそも世界をもらっても困る。大魔王じゃあるまいし。
そう考えると、国を守ろうとするルイさんと、私欲の為に世界を掌握しようとするシグマの戦いは、さながら勇者と魔王の戦いのようだな。。
どちらを応援すべきか、人間性を問われているようだ。
「はぁーー!!!」
ルイさんが己を奮い起こすように大声を出す。
「…」
シグマはルイさんの雄叫びに動じず、静かに戦闘態勢を固める。
すると辺りは真冬の冷気を帯びたように冷え切り、ビリビリと感じるシグマのプレッシャーで草花や空は白黒に見え始めた。
「ぐっ…」
完全に気圧されたのはルイさんだった。
心身ともに鍛え上げられたルイさんだから立っていられるんだろう。
俺はシグマに敵意を向けられていないのに、具合が悪くなり跪く。
「シグマ。。お前少し見ない間に、どうなっちまったんだ。。」
グラグラ…
ルイさんも今にも倒れそうだ。
どうにかしてシグマを止めないと…
「おい!シグマ…!」
「鈴木!!私のお尻を触れ!!!」
聞き間違いかな。。?
ルイさんが変なことを言ってる…
プレッシャーとは、ここまで人を狂わせるものなのか…
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