第10話 空気嫁の奇行
朝6時
眠い。。
テスト前夜に、まったく勉強してないのに、徹夜した時の気分だ。。
今日は、男女共に人気のある美人な幼なじみが、俺の家に来るという日。
実家の時は、お互いの部屋をよく行き来していたが、一人暮らしの部屋となると、なんとなくニュアンスが変わる。
世で言う、お家デート、大人になる日、本番である。
そんなウキウキの日なのに、俺はシグマと徹夜でマリカーをやってしまった。。
そして、見渡す限り、物が散乱した部屋。。
カプセルベットで爆睡する恥物(空気嫁)
なにから、どう手をつけていいかわからない。
「と、とりあえず、寝よう。」
寝てから思考して、掃除なり、空気嫁の追い払いなりをやった方が、効率がいいに決まってる。
そうだ。そうに決まってる。
これは戦略的睡眠だ。。zzZ
ピンポーン!
ピンポーン!
ピピピピピピピピンポーーーン!!
俺を仮眠から起こしたのは、アラームではなく玄関のインターフォンであった。
「う。。う〜ぬ。」
震えながら時計を見る。
13時ちょうど。
しっかり7時間の仮眠をとってしまった。
ということは、この忌々しいリズムのチャイムは、美幸が鳴らしているのだろう。
「ど、どうしよう。。」
「おはよー!どうしたの??」
シグマは先に起きていたようだ。
「どうしたもこうしたもない。美幸が来ちまったんだ!!部屋の掃除もシグマの追い払いも終わってないのに。」
「やれやれだよ。スズキーノ君、周りを見たまえ。」
「周りってなん…やだ、きれい。」
子供のおもちゃ箱のようだった部屋がキチンと整えられている。
「シグマ様が掃除をやったんですか??」
シグマはニッコリ笑いながら、親指をクイッと自分の方に向けてジェスチャーする。
「ありがとう!お前は天才だ!神様だ!大仏だ!!」
整理整頓がいき届いているだけではなく、見知らぬ観葉植物や絵画すらある。
これはやり過ぎだろ。。
「スズキーノもようやく私の凄さに気づいたか!はっはっはー!」
「はっはっはー!あとは、お前をタンスに隠して終いだな!」
「え。何を言って…」
「すまん!シグマ!眠ってくれーーーーい!!!」
素早くシグマの後ろをとり、右足の親指から発生させた力を、足首、膝、腰の順に力を倍増させながら伝えていき、渾身の手刀をシグマの首に向かって放つ。
「ふふっ。」
「んげっ!」
嘲るように笑ったシグマは、俺の手刀をしゃがんで躱し、そのまま振り返りながら強烈なショートアッパーを放った。
俺はシグマの動きを目で追うことができず、気がついた時には、細長い指で作られた綺麗な拳が顎の直前で止まっていた。
「す、すんませんでした。」
「女の子に手を挙げるのダメだよ?」
「おっしゃるとおりです。」
「じゃあ、私に美幸さんを紹介してくれるかしら?」
「承知いたしました。」
ピンピピピン!ピピピピピピピ!
ピンピピピン!ピピピピピピピ!
美幸はインターフォンでカノンを奏で始めていた。
俺の気分はベートーヴェンの運命なんだけどな。。
ガチャ
「やぁ…美幸。」
「おはよー。あんた耳栓して寝てんの?」
「た、たまにね。上の階の人がタップダンサーみたいでうるさいんだ…」
「それって…一番上の階にいて欲しくない職業の人ね。」
「しかも夫婦そろって。」
「単純に二倍うるさいわね。」
信じた。
やっぱり、美幸は天然なところがあるな。
「じゃあ、おじゃましまーす。」
「美幸。野暮用とかないか?」
「ん?別にないわよ?」
「そっか。。100円あげるから、ディズニーランドでも行ってこいよ。」
「10000円の間違いでは?」
「わかった。じゃあ、俺がここで10秒逆立ちできたら帰ってくれ。」
「何がわかったの?」
「うおりゃあああーーーー!!」
結果は3秒だった。
「鈴木何がしたいの。。?」
「そんなに言うなら、あっち向いてホイしようぜ。」
「そんなに言ってない!てか、いい加減にして!」
ズカズカと美幸は、俺の家に入ってきてしまった。
それとなく帰ってもらう作戦は失敗した。。
そして、今シグマのいる部屋の扉を美幸が開いた。
「え!?」
シグマを美幸に見られた。。
絶対に俺とシグマが、ただならぬ関係だと考えただろう。
言い訳が思いつかない。
いっそ空気嫁が進化し過ぎたんだと言いたい。
…いや、やっぱり恥ずかしいから言いたくない。
「すっごい!綺麗にしてるじゃん!」
「え?」
あれ?シグマがいない。
「私この絵画知ってる!!大好きな作品!」
「え?」
「そう!絵!海と空の青が絶妙で好きなんだ~!」
「へ~…」
あいつどこ行ったんだ?
「あと、観葉植物もいい!私植物好きなんだ!」
「お、おう。それはよかった。」
シグマの性格は美幸に似せてあるから、
好みも一致しているんだろう。
「普通窓開けるときは、網戸閉めるけどね。」
ガラガラガラ
なるほど。シグマは、また窓から飛び降りてったらしい。
でも、なんで急に出て行ったんだ?
「さて、ちょっとテレビでも見ない?」
「ええよ。」
シグマの奇行は考えても答えがでないので、美幸に集中しよう。
リモコンでテレビをつける。
「あんっ!//あんっ!//いやーーーん!!////」
「潮ジョーズを倒せ!伝説のクイクイ競泳水着カーニバルだ。。」
純然たるAVが流れ始める。
しかも、タイトルを言ってしまうほど、俺の好きな作品だ。
たぶんハリーポッターより見ている。
シグマめ。とんでもない地雷をおいていきやがった。
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