第5話 予期せぬ初陣
トントントントントントントン!
「。。。ん?」
携帯のアラームではない音で目覚めた。
なんだこの小気味よい音は。
どうやら音は台所の方から鳴っている。
「おっはよー」
台所に行くと空気嫁が味噌汁を作っていた。
「シグマおはよー」
そういえば、美幸は料理得意だったっけな。
「もうすぐできるから器出してくれない??」
「。。おう」
寝る前と同様で会話が自然すぎるな。。
それにしても、なんてことない数秒の会話でさえ、天沢さんの顔と先生の体の強烈な色香で心臓の心拍数が上がってしまう。
「よし!できた!ご飯にしよー」
「おう」
一人暮らし用の小さなテーブルの上に、
焼き魚、白飯、味噌汁、浅漬けを所狭しと並べる。
立派な日本の朝食だな。
何時から作ってたんだろうか。
「いっただきます」
「いただきます」
二人で対面になって座り、食事にありつく。
味噌汁を飲んでいると、エプロンを脱いだシグマの服装が目に入った。
「うげぇーー!!」
味噌汁を少し吹いてしまった。
「ちょっとー?どうしたの??」
「い、いや、シグマその服装。。」
「制服がどうかしたの?変?」
「いや、制服は変じゃない!!制服を着ているのが変だ!」
「だって、今日は学校でしょ?一緒に通うのに必要じゃない。。」
さも、当然のようにシグマは俺と通学しようとしている。。
「じょ、冗談じゃない!!お前と一緒にいるところを人に見られたら恥ずかしくてしょうがない!!」
自分の快楽の為に創造した恥物を人前に晒すのだ。
想像しただけで羞恥に悶えてしまう。
「。。。そっか。。」
急に沈んだ表情になったシグマは箸を静かにテーブルに置く。
「じゃ、じゃあ私は先に行くね!!」
有無を言わせない速さで通学カバンを持ち、4階の窓から外に飛び出す。
「へ。。?」
俺の一年間の全てを費やし、苦労して創造した恥物が今外に飛び出してった??
「いやだーーーーーーーーーー!!!!」
状況をようやく把握して、シグマが飛び出してった窓から外を見る。
ここはマンションの4階だ。
恐らく落下したダメージで壊れているだろうが、どう回収したら良いか、作戦を立てねばならない。
落下地点を見ると、そこにシグマの姿はなく
、激しく凹んだアスファルトの道路が見えた。
パッパーーー!!!
「え!?」
損傷した道路から、遠く離れた地点で、車のクラクションが鳴り響く。
恐る恐る目を向けると、シグマがいた。
車と並走して、学校の方へ走っている。。
家の防犯対策で、少し強靭な体に作ったつもりだったが、
あの頑強さと身体能力は異常だ。
アイアンマンって意外と簡単にできるかもしれない。。
人生で初めての、巨大な衝撃の連続に、体の力が抜けきったように部屋に寝転ぶ。
少し貧血が起きているらしく、薄暗くなっていく部屋の天井を見る。
なぜか、昔先生が言っていた話を思い出した。
今では、殺生の道具として、多く使用されるダイナマイトは、
元々殺生の道具ではなく、建設工事において、頑強な岩を吹き飛ばす為に発明された。
ダイナマイトの開発により、巨万の富を得たノーベル氏は、兵器として使われる自分の発明を悲しみ、ノーベル賞を立ち上げ、今尚人類に貢献し続けているという話だ。
俺の場合はこうだ。
空気嫁は元々殺生のマシーンではなく、一人暮らしの高校生が己の欲求を満たす、性玩具として発明された。。
空気嫁の露見した、すずきーの三世は、今尚人類に蔑まれ続けている。
すずきーの三世賞ってどうやって作るんだろ。。。
正気と狂気の狭間で故障が生じたのは、シグマじゃなく俺だった。
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