第31話 脱走

 俺たちは逃げ出すため、木原さんの作戦通りに動いた。


書く魔法ライティングマジック 魔法No.7 静寂空間サイレントエリア


 俺は空中に"静寂空間"と指を走らせる。そしてこの一定範囲内の全ての音が消えた。


詠む魔法リーディングマジック魔法No.30 弾力具現化ゴムクリエイト


 木原さんの手の上に浮いていた弾力玉ゴムボールが、少しずつ膨れ上がっている。既に大きさはこの檻の中の半分を埋め尽くし、このままでは俺たちも埋まる。


書く魔法ライティングマジック 魔法No.3 葉操盾バリアリーフ


 俺は檻の外に落ちていた葉っぱを操り、自分達の周囲を囲んだ。

 その間にゴムはこの檻の全体を埋め尽くし、檻を破壊しようとしていた。


「爆ぜろ」


 その言葉にこだまするかのように、ゴムの膨張に耐えきれなくなった檻は粉々に弾け飛ぶ。

 完全に弾けとんだ後、俺は静寂空間を解除する。


「これで第一作戦はクリア。セカンドに移行する」


「了解」


 木原さんの指示で、俺たちはこの地獄エリアからの脱走を開始する。

 この地獄エリアは全てが石の壁と天井で覆われており、空が見えた瞬間、地獄エリアからの脱走は確定される。だがここは迷路のようになっており、簡単に抜け出すことはできない。


「木原さん。この曲がり角の先から足音が」


 俺たちはすぐに動くのを止め、足音の正体が近づくのをゆっくりと待った。

 俺と木原さんは魔法の用意をした。


 そして足音の主がL字の曲がり角を曲がり、姿を現した瞬間、俺は空中に文字を刻もうとした。だが、足音の主は生徒会長と副会長。


 敵か?味方か?


 そんな疑心暗鬼の彼らに、木原さんはゆっくりと近づく。


「生徒会長。ならびに副会長。あなたたちは、敵ですか?それとも味方ですか?」


「もちろん味方だ」


 だが木原さんが容赦なく風玉エアボールを生徒会長の腹にくらわせる。


「ぶはっ!?」


 大きく後ろに吹き飛ぶ生徒会長。そして壁に激突する。


「木原さん。まだ敵か判明していないのに」


「神崎。よく見てみろ」


 言われるがまま、俺は吹き飛ばされた生徒会長を見る。生徒会長の体は消滅していて、さっきまでいたはずなのに姿が見えない。


「ああ。これが目良の魔法。見る魔法コンタクトマジックだ」

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