記憶の散乱

フラワー

1


 誰もが去ったあとの広間には、捕えたばかりの小鳥がある。籠へ入れられ止まり木の上で、私には勝手の効かない鳴き声を上げながら。その鳴き声は廊下や畳に流れ出て、陽の当たる椅子の上に埃で柱を建てた。湿気が固まって埃となり、埃は集まって小鳥になる。真空の跡に不気味な因果を感じる西陽の部屋は、半時間前に過ぎていった雲と、溺れて飛んだ蜻蛉の欠片を轢いた残照の線路の上。 


 紅に編まれた新しい家は、野山の鳥には重いようだ。価値も涙も浮かばない目に、籠は森の一区画を移したように自然と存在する。餌と糞の交換が、この生き物に与えられた価値であると、棚から見下ろす黒電話が伝えて止まない。雲よりの造形で命のような白い粘土細工は、侮蔑に襲われ静かに身を横たえた。そのまま、珍しい空からの出土例を全てが染めてしまえば良い。空は蒼い穴だけを残して、小さな雲は半時間前に過ぎていった。

 

 

 

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