第300話

くっきりと俺の足型が残ったコアをみて、スンッとした表情になる俺とクロ。

こうもくっきり残ってるとねえ……切り落とせば良いかもだけどさ、一度みちゃった後だとなー。



「強化をお勧めするよ!!」


「声でけぇ」


どうしたもんかなーと考えていると、ふいに頭上からバカでかい声が響く。

このやりとりも久しぶりな気がするな。

俺たちがせっかくの素材を食おうかと悩んでいるのをみて、たまらず出てきたのだろう。


……ん? 頭上?


「そいつを強化に使えば耐熱性はばっちりだよ! だから食べるのは止めておくことをお勧めするね!」


頭上からにゅるりと落ちてきたアマツは、親指をグッと立てながら早口でまくし立て、スタッと着地する。

落下しながらしゃべるとか器用なやっちゃな。


「まあ強化に使うんで大丈夫っすよ……」


なんだろうね。俺たちがコアを食っちゃうと思って焦って登場したんだろうか。

もうコアへの食欲無くなっちゃったし大丈夫なんだけどね……お腹はまだ空いてるけど。



「ところで次の階層なんですけど」


「ん? 何か質問かい? いいとも! 何でも聞いてくれたまえ!!」


せっかく向こうから来てくれたことだし、ちょっとお話しよう。


「……今回も結構苦戦したんすけど、もしかしてドラゴンの時みたいに装備の強化だったりが前提の敵だったりします?」


聞きたかったのはこれだ。

ドラゴン戦の時ほどではないにしろ、かなーり苦戦したからな。


まさかこれから実装予定のが必須なんですー! とか言わないと思うけど、思うけどっ。

もしそうだったら生首ぶつけてくれる。




「もちろんだよ!!」


そんな俺の思いを知ってから知らずか、アマツは良い笑顔を浮かべると、そうはっきりと答えるのであった。

おいこら。



どの角度から撃ち込むのが最適だろうか? とアマツをじろじろと見ていると、アマツは変わらず笑顔を浮かべながら言葉を続ける。


「具体的に言うと、別のダンジョン産のカードが前提だね」


あー。


「とはいえドラゴンの時ほど厳しくはないよ? 一応は時間掛かるけど狩れなくはないレベルの強さだからね」


「……なるほど」


そういうことか。確かにミディアムぐらいで焼かれたけど、倒せないレベルではなかった。火力さえあればもっと楽に倒せただろう。

他のダンジョン産のカードは勿論実装済みだし、単純に俺たちの準備が甘かったということか。


それなら納得だ。

アマツに生首を撃ち込むの止めておこう。


「オークションで頑張るっきゃないかー」


「そうだね、オークションをお勧めするよ。いくら君たちでも他のダンジョンで有用なカードを手に入れるとなると、それなりに時間が掛かるだろうからね」


「ですよねー」


オークションかー……次の開催いつだったかな。

最悪、海外のオークションに参加って手もあるけど、英語わっかんねーしなあ。


……遥さんに頼み込んで一緒に参加するか? BBQ広場の無人島について詳細つめないといかんし、その時に聞いてみよう。



さて、聞きたいことも聞けたし、アマツはなんだかんだで忙しいらしいし、とりあえず戻って飯食って……いや、先に強化か? 手元にコアが無ければ、間違って食う事もないだろうし。


よし、そうしよう。

戻ってまずは強化。そしてご飯だ。

そうと決めたらさっさと帰るぞー!




「これはこれでなかなか格好良いね?」


鏡の前で軽くポーズをとる俺。

そんな俺のつぶやきを聞いて、クロは無言で尻尾をぱたんと振る。


……どう意味だろうねえ? まあ深く考えるのはやめておこう。



ちなみにもう強化は完了してるよ。

俺とクロ、どっちを強化をするかについては、話し合った結果俺の装備を強化することになった。

役割的にそうなるんだよね。クロは地面を走り回って溶岩を固める。で、俺はその間に敵と戦闘することになるから、ダメージ食らう可能性が高い俺の装備を強化するって話になったのだ。


「んじゃご飯にしよっか。さすがにそろそろ限界だ」


お腹と背中がくっつきそう。

これ以上お腹がすいたら、目の前にあるものに齧り付きそうで怖い。


飯にしようとクロに声を掛けると、クロは嬉しそうに「にゃ」と鳴いて小走りで休憩所へと向かっていく。

クロも相当お腹が空いてたんだろう。俺はクロをおって、小走りで休憩所へと向かった。




「っ!?」


「うお」


「あ、どもっす」


休憩所に入った直後、こちらをみた隊員さん達が一斉に身構える。


龍化したままだったわ……いや、龍化したままなのはちょいちょいあるけど、新しい素材で強化してるから、いつもと見た目違うんだったわ。


とりあえず誤解を解くために挨拶してっと。


「島津か……その恰好は、階層更新したんだな。おめでとう」


「ありがとうございます。どうにかいけました」


久しぶりに見た気がする都丸さんにぺこりと頭を下げ、礼を言う。

他の隊員さんたちもああ、なんだ島津か……といった感じで、口々におめでとうと祝福してくれた。

ありがてえありがてえ。


ちなみに今の俺の見た目だけど、全身甲殻で覆われてるのは変わらなくて、ただあちこちに紅色の筋が走ってるんだよね。

どうも薄く発行しているようで、暗い所にいくと結構目立つ感じ。

個人的には結構恰好いいなーって思うけど、人外感が増してるのがねー。

下手に他所のダンジョンに入ってこの恰好でうろついてたら、モンスターと間違えられて襲われかねないのがなんとも……もちろん返り討ちにするけど。


まあ、中村の動画でちょいちょい姿晒しておけばたぶん大丈夫っしょ。たぶん。

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