第299話
大量の冷えた敵の体内からコアを探すのは少し手間かと思ったが……他は真っ黒になっている中、一か所だけ赤くなっている部分がある。
どう考えてもあそこにあるよな、コア。
「この中か? ……よっと!」
中にあると分かればやることは一つ……ではないかもだけど、とりあえず蹴りをぶち込む。
氷礫だと、中まで効くか分からんし、蹴るのが一番だよ。たぶん。
俺が放った蹴りは、赤くなった箇所を黒く固めて砕く。
砕いた瞬間、足に妙な感触がきた。
グニッて感じで、弾力のあるものに触れた感触だ。おそらくコアだろう。
「これコアか。さすがにでっかい……いや、本体の大きさ考えると小さいか?」
砕けた体に混ざって、ボール状の物体が転がりでる。
大きさはでかめのスイカぐらいはあるだろう。
転がったコアは周囲の黒くなった体とは違い、紅色にうっすらと光っている。
触れても熱くないことから、冷え切った状態がこれということなんだろう。
気が付けば、次の階層へと続く階段も出現している。
さっきの蹴りが止めになったということか。コア部分は耐久がかなり低いみたいだ……まぐれ当たりさえすれば、一撃で倒せる可能性もあるなこれ。
ま、それは帰ってから考えるとしよう。
「これ食えるのかな……それとも強化にしか使えない? 身の部分なんて固まった溶岩と見分け付かんし……とりあえずコア持って帰るか」
ドラゴン以降の敵はみんな美味しかった。
それを考えればこいつも美味しいんじゃないかと思うが、肉体は岩か何かのようでとても食えるとは思えない。素材として使えるかも微妙だろう。まあ、欠片ぐらいは持って帰るけど。
必要なものをバックパックに詰め込んでさあ帰ろうかといったところで、クロが俺の足をたしたしと叩き『にゃあ』と鳴く。
「一応次も覗いてけって?」
俺がそう返すと、クロはてってってーと階段へと向かって行く。
まあ、そうよね。次の階層覗くだけ覗いてくのが普通よな。
なんか疲れてこのまま帰るつもりになってたわ。
さて、次の階層はどんなのカナー?
「うん……まあ予想通り。あれを複数相手すんのきっついぞ……」
一面マグマですね。
ちらほらとマグマから飛び出してるやつが見えるので、例にもれずゲートキーパーが次の階層の敵になるようだ。
たまには例外があってもいいんだよっ? そういったサプライズは大歓迎だ。
より厄介な敵になっていたら泣くけどな。
しっかしなー、こんだけ広いフィールドで敵を倒しながら移動するって絶対キツイよな。
「コアを素材にすれば、耐熱はある程度なんとかなりそう……ていうかなってくれ」
大分希望がはいるけど、今までの素材を使った強化具合を考えると耐熱に関してはそれなりにましになるはず。
1匹倒した程度で飢餓状態になるってことはまずないだろう。おそらくレベルアップも加味して数匹は倒せるはず……数匹じゃダメなんだよなあ。
「てか問題は火力だよ火力。メインの攻撃手段が効かな過ぎてヤベエ」
そっこうで倒せば、ダメージも少なくてすむしな。
攻撃は最大の防御なり! だっけ? やっぱ火力は正義なのだ。
その火力が通じない相手なんで苦労するんですけどね。
土蜘蛛効かないとか、ちょっと想定外だわ。
「とりあえず帰ろっか。ご飯食べて今日はゆっくり休もう」
そのへんの火力うんぬんについては、帰ってから考えるとしよう。
さすがに疲れたわ。
バックパックを背負い直し、元来た道を戻っているとふいにクロが俺の肩に飛び乗る。
どうかしたのかな? と思っていると、クロは俺のバックアップをごそごそと漁り、戦利品のコアを取り出し俺に『にゃん』と鳴いた。
「これどうすんのって?」
どうするもなにも強化に使う……と思った瞬間お腹がすごい音でなった。
……ちょっとダメージくらいすぎたかな。戦闘中はそこまでじゃなかったけど、時間が経ったからか腹の減り具合がやべえことに今更気が付いた。
「んー……やっぱ強化……いや、でもどんな味か気にはなるし」
冷静に考えれば強化一択なんだけどね。
戻れば飛竜の肉とか食べ放題だし。
でも腹が減り過ぎて冷静な思考ができない……おそらくクロもお腹が空いているんだろう。いつものクロなら強化一択であって、むしろ食おうと悩んでいる俺を窘めるはずだ。
むぅ……せめて半分だけ食べて、残りを強化に……そんなこと可能なのか? 素材として完全に残さないとダメか……いや、でもこれだけ大きければ一口ぐらい齧ってもバレないんじゃないか。システムだって誤魔化せる。きっと誤魔化せる。
ほら、さっき蹴った部分とか凹んでるし、一口齧るぐらいなら……あっ。
「……足跡ついてるぅ」
あかん。
誰だよコアに足跡つけたの。俺だよ!
とどめの蹴りかあかんかった……ぐぅ、一気に食欲がなくなったぞ。
ちくしょーめっ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます