第255話

家に戻り、ビニール袋から生首を取り出すが……俺は取り出したそれを見て、思わず眉間に皺が寄ってしまう。


「……嬉しそうだな、おい」


「そりゃあねえ、あいつのあんな顔を見たのは初めてだよ……くふふ」


「さいですか……」


なんというか……アマツも災難だなあとしか言えねえ。

人様の恋路に横槍を入れるつもりなんざないけれど、イースはもうちょっとこう……まともにアタックすればいいんじゃないかなあって思うんです。

見た目は美人なんだしさ……いや、こいつらの美的感覚とかどこまで当てにしていいのか分からんけど。


まあ、アマツが本当に憎いと思っているのであれば、この生首は今頃ここにはおらんだろうし……って、俺が悩んでもしゃーないな。


とりあえずゲームを与えておけば、当分の間は大人しくしてるだろう。

あとで新作チェックしてよさげなの買っておくかね。



そんなことがあった翌日。

俺とクロは喫茶ルームで北上さん会い、先日投稿した動画を見てもらっていた。

感想欲しかったんよね。やっぱ俺とクロと中村の意見だけだと不安がちょっぴりあるし。

もしダメそうなところがあれば、ちょっと方向性変えるのを検討しようかなーってね。


「すごいね。思ってたよりずっと良い出来だよー」


「そうなんだよね。中村がこの手の作るの得意らしくて」


「へー、意外だね」


「ねー」


北上さんの反応は割とよさげだ。

実際、動画の出来はいいと思うしね。

内容についても特には問題なさそうな感じである。

クロの動画を見てちょっとビックリしていたぐらいかな?


「今週末も撮影するんだよね?」


「そそ。それで出来れば北上さんも出て貰えたらなーと……あと太郎も」


北上さんと太郎が追加されれば、一気に視聴者増えると思うんですよね。

なんかその内、島津と中村いらねえなあとか言われそうでちょっと怖いけど。


「いいよーう。土日は暇だし……その代わりあとでちょっと付き合ってもらおうかなー」


「俺で良ければいくらでも。むしろ喜んで」


北上さんは出演OKと。

付き合うってどこにだろうか? まあ、よほど変な所でなければ喜んでお供しますとも。


「お? いったねー? それじゃ撮影終わったら付き合ってもらっちゃうぞー」


「ばっちこい」


俺の言葉を聞いて、ニンマリと笑みを浮かべる北上さん。

この北上さんの笑み結構好きなんだよね。とてもかわいいとおもいます。


しかし撮影終わったあとかー……これあれだよね。

『中村くんごめん、私たちこのあとちょっと用事があってー』とか『わりいな、また来週よろしくっ』とか言って、中村を一人置いてお出掛けすることに……中村泣いちゃいそうだな。


解散してからお出掛けするか。

バレたら泣きそうだけど。しゃーなしだ。



さて、これで今週末の予定は埋まったな。

ただ平日は割と空いているので。


「さてと。今週はちょいと気合入れて狩りますかね」


飛竜狩りまくっちゃおうと思う。

北上さんはこの後、お仕事ってことなので一旦分かれてクロと一緒にダンジョンにきたよ。


「そろっそろカード出てもいいと思うんだよなー」


なんだかんだでちょいちょい狩ってるからね。

運がよほど悪くなければそろそろ出ても良い頃なのだ。

運がよほど悪くなければなっ。



と、フラグ立てながら狩りをしていたのだけど……5匹目かそこらでそれは起こった。


「いきなり出たっ!?」


ジャーキー用にと尻尾を捥いでいたら、ふいにカードがぽんっと出てきたんだよ。

尻尾からじゃないよ。本体からね。


「おおっぉぉぉ」


こんなサクっと出たのは初めてかも知れない。

思わず変な声が出ちゃった。


「も、戻って効果確認しよっか?」


狩り始めたばかりだけど、カードの効果が気になって仕方がない。

ソワソワしている俺を見て、クロもため息をはきつつ『んなー』と小さく鳴く。


さっさと効果確認して、セットして狩り再開すっぞということらしい。

ありがてえありがてえ。


まあ、間違いなく良い効果のはずなので、セットして狩りを再開すればより効率良く狩れるはずだからね。

しゃーねえなと思いながらもクロだって反対はしないのだ。


よっし、戻って確認すっぞ!


とりあえずクロを頭に抱えてブレス吐いて飛んでいかないと……いい加減この移動方法もどうにかしたいところだよね。

まあ、カード効果に期待しよう。飛竜ってぐらいだから飛べる可能性だってある。



「さてさてさて。どんな効果かなー……ドラゴンカードがあんだけぶっ飛んでたんだし、こいつも相当だと思うけど……」


ドラゴンカードは竜の因子とかいう格好よくて、効果もぶっ飛んだものだった。

それより深い階層ってこを考えると、自ずと期待も高まるというものだ。


さて、端末を起動してっと。

カードの効果確認だ!




龍の魂……龍神を崇め、奉えよ。龍の魂をその身に受け入れよ。肉体と精神は魂にヒカれ、やがて龍と化す。

以下が解放される。


スキル:????、????、????

称号:????



…………は?

え、ちょっと意味が分かんない。


「え、なにこれ説明こんだけ?? てかこれ絶対使っちゃダメなやつじゃないの……龍と化すってなんだよ。まさか一度使ったら戻れないとかじゃないだろな?」


効果とかそれ以前に、書いてある内容が物騒すぎてセット出来んぞこんなの。

いやだよ、ずっと竜化状態になるとか。



「てかなんで? ばっかなんだよ……アマツゥゥゥ??」


あと肝心な効果が分かんない。スキルが3つとなんか称号つくってのは分かるけどさ。

なんか表記も他のカードと違うし……どうなっとるんじゃこいつは。


これはもうアマツに聞くしかないな。

とりあえずクロを抱えてアマツのところに突撃だ!

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