第256話
「アマツさん-ん!? ちょっと出てきてくれませんかねえ??」
「……よんだかい?」
休憩所で端末を開いていた訳だけど、俺はクロを抱えて個室へと入りアマツを大声で呼んだ。
するとすぐさまアマツも反応し、ひょいと顔をのぞかせた。
どことなく警戒しているように見えるのは、前回の生首のせいだろうか。今回は生首はいないので安心してほしい。
「いたいた。このカードの効果なんなん?? 怖すぎんだけどっ」
端末の画面をさしながら、アマツへと詰め寄る俺。
アマツを端末を見ると、おっ? といった表情を浮かべ、笑みへと変える。
「あ、手に入れたんだね。おめでとう!」
おう、ありがとうよ!
「なんかそれっぽい説明考えて……直さずにそのまま実装しちゃったやつだね! ハハハ!」
でも説明怖すぎて使えないんですけど、これどういうことなんですかねえ?
と、アマツにさらに問い詰めると、笑いながらそんな答えが返ってきた。
ハハハ!
「まあ、別に元に戻れないとかそんなことはないよ。安心してほしい」
ほんとかなあー?
「なるほど……ちなみにこのスキルとかはなんで『?』になってるの」
内容分からなすぎて怖い。
副作用とかないだろうな。
「なんかそっちのほうが雰囲気でるかなと思って……どうどう、落ち着きたまえ」
こやつめ。
「それで、本当の効果ってなんなんです?」
「それはね! っと」
説明があれなだけで効果はちゃんと実装されているのだろう。
俺の問いにアマツは嬉しそうに答えようとして、はっとした様子で口をおさえる。
なんだよお。
「セットしてからのお楽しみさ! セットすれば分かるよっ」
「……まあもとに戻れるって事なんでセットしますけど」
楽しそうだな、アマツ。
今までの付き合いから、変なことはしないであろうことは分かってる。
なので本人から問題ないとお墨付きをもらった以上、使うことに躊躇いは……あまりない。
「んじゃセットしてっと」
さて、どんな効果なのやら。
端末操作して効果を確認っと……。
「いやあ、楽しみだねえ。島津くんはどんな龍になるのかな」
「はい?」
ちょっと待てえいっ。
このタイミングで何をいっとんのっ!?
ちょ、これどんな効果なんだ……??
スキル:呪殺の視線、滅びの光、龍化
称号:□□神の寵児
うん。
……ちょっと待ってみたけれど何も起こらない。さっきアマツがえらい不穏なことを口にしたけれど……もしかして龍化を使った後の事を言ってたのかな。タイミング悪いなっ。
とりあえずスキルとかはまあ、物騒なのあるけど割とまとも……まとも? なんか変なのあるぞ。
「このなんとか神の……ちょ、寵児? 読み方あってんのかなこれ」
「あってるよ!」
称号が……なんだこれ。
寵児ってどういう意味だったっけ。
それよりもだ。
「なんとか神って……」
「私だね! いやあ、実際に名前を入れるとなると恥ずかしくてね。ちょっと伏せてみたよ!」
「なるほど……」
そっかーアマツのことかー。
そうだよなー。
アマツってようは天津ってことなんだろうなあ。
そっかー、神の……意味がちょっと分からんけど、なにかになってるってことよな。
うーん。
「……これ、本当に使って大丈夫だよね? てか龍化以外も字面が物騒なんだけどさ」
「大丈夫大丈夫。ドラゴンカードと併用できるから、試してみるといいよ!」
さいですか。
なんか色々と聞きたいことはあったけれど、なんか疲れたのでまた今度にしよう……。
とりあえずクロと合流してカードの効果を確かめることにしたよ。
セットするのは俺ってことになった。
龍化ってのが、おそらく飛べるようになるんじゃないかなーって予測からそうなったよ。
ほら、羊とかもそうだったけど……あるモンスターを倒すのに有効なカードを、まさにそのモンスターが出すみたいなパターンじゃないかなって思ったのだ。
まじ勘弁。
「じゃあ……どうしよ、まずはゴブリンからでいっか」
試し切りは例によってゴブリンに決めた。
クロも『うにゃ』と賛同しているので、クロ的には試し切りはゴブリンでとなっているようだ。
かわいそう。
まずは呪殺の視線からかな……ドラゴンカードと違って、セットしただけで全身体能力が上がるとかはなさそうなので、いきなりスキルから試そうと思う。
使い方は使おうと思えばなんとなく分かる。
スキル名のまんま、視線に入った敵を呪殺するスキルである……これ、うっかり味方が視界に入っちゃったらどうするんだろうな。
味方には効かないとかだと良いけど、試すのはやりたくないのであとでアマツに確認しておこう。
さて、とりあえず10匹部屋をのぞいて……発動っとな。
「ひえっ」
視界に入ってたゴブリンが全て崩れ落ちた。
膝から崩れ落ちるように倒れたとかそんなんじゃなくて、文字通り崩れ落ちた。
グズグズの肉片になって、ブスブスと煙を上げて……やがて肉片も消えてしまった。
なにこれぇ……。
「ちょっとこれは……ドラゴンで試すか」
さすがにゴブリンに対してはオーバーキルだったのだろう。
肉片すら残らないとかヤバすぎんよ。
ただドラゴンあたりであれば強さが段違いなので……どうなるかな。
このスキル、使った感じレベルの低い相手には即死、ある程度のレベルからは身体能力を下げたり、持続ダメージ与えたりとかそんな感じのスキルぽいんだよね。
ドラゴンに使ってみて良い感じに効くのであれば、今後かなり役立つスキルになるのは間違いないと思う。
「お、いたいた」
そんな訳でドラゴンみっけ。
出会って即発動!
「おぉ……めっちゃ効いてる」
明らかに動きが鈍ってるし、口から涎たらして息が上がってる。
相当苦しそうだ。
ドラゴンでこんだけ効くんなら、かなり良いな!
次は滅びの光を試してみよう。
なんかどこかで聞いたような響きだけど……まあアマツがなんぞ影響されて決めたんだろう。
使い方はブレスに近い。
ただゲロを吐く感じとは違うんだよね。使いまくってもゲロを吐くことはなさそうだけど、そもそも連打があまり効かないように調整されてそうな気もする。
ま、とりあえず使ってみよう。目標はそこの弱っているドラゴンだ。
「念のためクロは後ろに下がっててね」
威力がどれだけあるか分からないので、余波を警戒してクロには後ろに下がってもらう。
この位置なら俺の障壁と体に守られて、クロには被害は及ばないだろう。
よし……じゃあ、発射!
スキルを発動した瞬間、喉元に何かが込み上げてきて……口を開くと光があふれる。
やがて視界いっぱいに光が広がり……収まった時にはどらごんの体の大半が消し飛んでいた。
光が通った後は地面がえぐれ、地平の先まで続いている。周囲の地面は真っ赤に赤熱していて地獄絵図って感じ……そして急に体を焙る様な熱に襲われた。
障壁が破れたらしい。
慌ててクロを抱えて後方に避難したよっ。
「……やっばいな!?」
熱が及ばないところまで避難して、改めてスキルを発動した箇所を遠目で眺めているのだけど、ほんとヤバい。地形も変わっているし爆発も起こっていた様で舞い上がった埃? 煙? が……火山から出る煙みたいに、バリバリと雷が走ってるのが見える。
室内で使ったら自爆しそうだなこれ。威力に関しては文句ないけれど、使う場所は選ばないとダメそうだ。
「あとは龍化だけど……竜化も併用できんだよな? たぶん」
ちなみにさっきのスキルは龍化どころか竜化もせずに使ってあれなんだよね。
それで竜化状態で放つブレスより威力は上なので……竜化と龍化を併用したらどうなるんだろう。
とりあえず竜化したあとに龍化して……さっきのスキルは飛竜に使うかな、あそこなら周りの被害はそこまでじゃないはず。
「んじゃいっきまー」
よし、龍化発動っとな。
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