第213話

「吐きそう」


浮島まで結構距離あったわ!

目測誤ったぜい……まあ、その分島の一つ一つが大きいから、戦いやすいし場所を選べば少ない数を相手するのは可能なはず。


さて……さっき飛んできた時に、少なくとも1体には見つかっていたから、そろそろ来ても良い頃だけど……っと。


「来たか……2体いやがる。もーやめてよー……」


もう1体にも気付かれていたかー。

2体同時相手はきっついな。がっすがすブレスくらいそうな予感がする。

あれ、遠距離と速度に特化したブレスだから威力はそこまでじゃないんだけど……何発も連続で食らえば死ねるだけの威力はある。


とりあえず逃げに専念して隙を……いや、いっそのこと初手でかますか? 最初に大きく削って……あわよくば倒してしまえば、だいぶ楽になる気がするぞ。


よし、初手からかましちゃおう。


とりあえずクロにその事を伝えて……あとは上手い具合に連中の眼前にスタングレネードをぶん投げるだけっと。



そうして、俺はスタングレネードを構え……飛竜が2体とも近づいてきたところに、思いっきり……。


「ほれ」


ではなく、ふわりと放り投げる。


変に思いっきり投げると、攻撃と思われて撃ち落される可能性が高いと思ったんだよね。

それにふんわり投げた事で飛竜どもの虚をつけたというか、興味を引くことはできたっぽい。

投げたスタングレネードに目が釘付けになっていたからね。


そんだけ見ていたら、間違いなく目をやられるだろうさ。



上空から閃光と爆音、それに飛竜の悲痛な声が聞こえる。

俺とクロは目を背けて備えていたので被害はない。


「さて」


飛竜にちゃんと効果があっただろうか?

俺は確認のために上空に向かい目を向けた。


クロは既に上空を飛び回っている。

そして飛竜は……落ちずにその場でもがいていた。これで落ちなかったのは残念だが、クロが間もなく飛竜の翼を切りつけ、地面に叩き落すことだろう。


俺はその落下地点で待ち受けるのだ。


程なくして、飛竜の背後でタイミングを計っていたクロが、一気に距離を詰めて翼を切りつけた。

切りつけたというか、あれ土蜘蛛だな。翼が1本千切れて落ちた。

そして本体も落ちてくる。


「おっしゃ、もーらい!……土蜘蛛ォ!」


こちらに向かい落ちてくる飛竜に対し、俺はしっかりと地面を踏みしめて鉈を振るう。

狙うのは持ちろん首だ。

落下速度と、飛竜の重量が合わさり、それに土蜘蛛。それらが合わさると遅しい威力となる。

哀れ、飛竜の首は千切れて首が宙を舞う。ついでに俺の腕も捥げた。


千切れた腕は、液体操作ですぐ回収し、接合する。

ぐちゃぐちゃになった腕も回復能力ですぐ元通りである。


「いけるいける」


思っていた以上の成果に笑みが浮かぶ。

腕と全身がくっそ痛かったけど、一撃で倒せたのは非常にでかい。


さて、もう1体はどうしたかなっと。

……居た。ちょっと距離とってこっち窺ってるな。目はもう治ってるかな? こっちを見てるから、見えてそうだ。


「ほれ、もういっちょ」


それならもう一発食らわしてやんよーと、スタングレネードを放り投げるが……。


「げ」


今度はブレスできっちり撃ち落された。


それならばと数個同時に放り投げるも、今度は背を向けて距離を取りやがりましたよ。こんちくしょう。



結局その後、何度かスタングレネードを投げては見たが、飛竜の目を焼くことは出来なかった。

とりあえず投げると背を向けると分かったので、それを利用して叩き落とせはしたけれど、倒すまで1時間ほど掛かってしまった。


「うーん……有効だったけど、何度も食らうほど頭は悪くないか」


ゲームは何度も食らってくれたけど、あれはあくまでゲームだからなあ……本当の生き物であれば、そりゃ学習するよなって話だ。


「1体で居るのを狙うか、それか数匹まとめて狙えるタイミングでやるか……色々試すっきゃないなあ」


理想は1体ずつボッコボコにすることだけど、どうしても複数同時に相手することが多くなるだろう。

だからやるとするのであれば、さっきのように2体同時に目を焼いて、1体は土蜘蛛で、もう1体は蛇のあれで翼を縛り上げるか……かな? それであれば2体はどうにか出来そうな気がする。


問題はこれが、3体、4体と増えていった時だよなあ。

今のところ手が無いように思えるが。色々試行錯誤を繰り返すしかないか。


「日に10体を目標に頑張ろうー……これ、カードはいつ出るんだろうなGWぐらいには出ると良いけど」


おそらくカードが出れば全て解決するとは思う。

でもさ、こいつらを1000体倒すとかむっちゃ大変だよね。

センサー発動したら、下手すりゃその何倍も狩らなきゃいけなくなるし……うーん、辛そう。


「うーん、吐きそう」


それになによりやっぱ移動がきつい。

島の上を移動するのは徒歩で良いんだけどさ、島間の移動がねえ……空中で襲われちゃたまったもんじゃないし、やっぱブレスぶっぱして移動するっきゃねーわけで。

その内、飛んでる最中に吐いて口内で爆発しそうな気がする。


とりあえず、何体か狩ったら帰るとするか……。





結局、それからアメリカに行く前日まで狩ったけど、カードは出なかった。

狩り自体はと言うと、スタングレネードをあてるのは大分上手くなって、一度に2体ならさくっと倒せて、3体なら苦戦せず倒せるけど、4体は苦戦する。それより多いと逃げるっきゃないって感じ。


あと、弓を中村から借りてはみたんだけどね、俺はどうもそこまで弓が向いてないらしい。

当てるだけならいけるんだけどさ、飛竜が近付いてくると、ついつい弓でぶん殴ってしまうのだ。

そして弓は殴るのには向いてないので……まあ、壊れるわけですよ。あかん。


まともな成果としては……ああ、そうそう。病気治療用のポーションを事前に飲んでおくと、吐き気が収まることが判明したよ。

だから移動だけなら一応なんとかなる。見た目酷いけど。


空中での戦闘は無理だね。

そこはやっぱ何か対策が必要だと思う。

いずれ強制的に空中で戦わないといけなくなったりとか、決してないとは言い切れないしね。



あと何かあったっけかな。


……飛竜の素材で装備を強化したぐらい?

あとは、ちゅーるのメーカーさんが嬉しい悲鳴を上げてたね。

今でもクロの監修を受けて、新商品がんがん開発しているところに、飛竜がドーンってきたわけだからねえ。


さすがに少しだけ待って欲しいと言われたので、少し落ち着いてから飛竜のちゅーるを開発することになりそうである。


そんな感じかな。


そして明日はいよいよアメリカへと出発する。

何に乗って向かうのかなーって思ってたんだけど、旅客機丸々1機をチャーターしたらしい。

凄いお金かけてんなーって思ったけど、後から得られる利益を考えれば、どうってことないのかもね。


ま、そんな訳で今日はダンジョンに向かうのは止めて、必要な荷物やらを準備していたりする。

海外とか行ったことないから、正直何もっていけば良いのかさっぱりだよっ。

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