第210話


「……逃げたりしないよな?」


首を刎ねればいいだろうとひたすら攻撃していたのだけど、あからさまに狙うようになってから、飛竜の動きがどうも……こう、逃げ腰というのかな? じりじりと距離をとって、積極的に攻撃を仕掛けなくなってきたんだよね。


某ゲームの飛竜の如く飛んで逃げだしたらどうしよう。


まあ、定期的にクロが翼にダメージいれてるから、大丈夫とは思うけどね。

たださ、あの巨体であの速度で飛び回るのって翼から得る力だけじゃ無理な気がするんだよね。

だから魔法とかそういった力も使って飛んでるんじゃないかなーと思うのですよ。いざとなってそれでもって逃げだしたりとかありえなくはない。


もし飛んだらすぐ叩き落せるようにしておこうか。




「死んだよな? 首なしで動いたりすんじゃねーぞ……」


それから10分ぐらいがどつきまわして、どうにか飛竜の首を落とせたよ。

結局逃げたりはしなかったね。


もうね、タフ過ぎ。

首落としたけどまだ動くんじゃないかと不安になるぐらいだ。


「くっそタフかったなあ」


たいして山場もなく、ただひたすら消耗戦をしていたのだけど、ポーションの残りがあと1個とかになってたから、実はギリギリの戦いだったりする。


「こいつが複数出てきたらどうすりゃいいんだ……?」


どうにかして早めに首を落とせる方法を考えないとあかんね。ポーションをどれだけ用意することになるのやら……まあ、とりあえず飛竜を回収して、帰ってから考えるか。


「……何、尻尾気になるの?」


飛竜をバックパックに詰め込んでいると、ちぎれた尻尾の匂いをしきりに嗅いでるクロの姿に気が付いた。

……飛竜といえば、尻尾から良いアイテムが出るイメージがあるのだよね。某狩りゲームのせいだろうけど。


ダンジョンを造るにあたって、地球のゲームを参考にしているとかそういう話だったよな?

もしかするともしかするかも知れない。


狩りゲームだし、ダンジョンとあまり関連ないかもだけど……探してみる価値はありそうだ。




「よっしゃ帰るぞー!」


2時間かけて! 何も出ませんでしたとさっ!

くっそ、逆鱗みたいのあるんじゃないかなーとか思ってさ、鱗を一枚一枚はいだりしたのにさ!

ていうか、解体所もっていくなりすれば、素材ごとに分けてくれるんだしそれで良いじゃんって話だ。あほじゃん俺。

くそう、時間無駄にしたぜ。まあクロが楽しそうだったから良いけど……。


ぬう……さっき吐いたせいで、お腹も空いてるしBBQ広場に突撃だー!





帰りも飛んでかないとダメなの忘れてたわ。

まあ、ブレス無しでも大丈夫だったから良いけど。


ああ、そうそう。

一応次の階層覗いてみたけど、やはりというか浮島エリアだったね。

幸い島から島の距離はそんな遠くなさそうではあったけど、問題は飛竜の数がそこそこ居たことかな。

囲まれるとやべえですわ。何かしら対策してからじゃないと進めそうにはないね。




さて、とりあえず飛竜をマーシーに渡してっと……これで、食用に向いてませんとか言われたら泣くが。ないよね?


「ところでこいつ食えるよね?」


「勿論でございます」


OKOK。

じゃあ、食べようか。


「ふむ。それじゃあ調理はマーシーにお任せして……北上さんご飯ご一緒しませんかーっと」


クロと二人でも良いけど、せっかくの新しいお肉なんだし、北上さんを呼んでしまおう。

他の隊員さんは今度あったらだな!


中村? 次の週末にでも声かけるかね。


よっし、北上さんおいでませー。



「きったよー!」


1分掛からずにきたね!


さすがダンジョンに住んでるだけある。

それでも1分は早いから、たぶん今日は休日だったんだろうね。

最初から私服だったから、着替えずにさくっとこれたってことだろう。


まあ、そんな分析はさておき。

さっそくとれたての飛竜を北上さんに見せてあげよう。

頭だけだけど。


「うわっ? もしかしてこれが飛竜?」


「でっす」


バックパックから頭を取り出し、ごろんと転がす。

ぱっと見では以前倒したドラゴンに見えなくもないが、その大きさや色は大きく異なっているので、すぐに別物だとわかる。


かなり黒っぽいんだよね、こいつ。

それに少し緑掛かってる感じだ。


正直おいしそうには見えない。

ああ、でもウナギとかはこんな色だったかも。


……いや、でもこいつトカゲだしな。

やっぱ美味しそうにみえんなっ。


「前のドラゴンよりずっと大きいねえ……突破おめでとう」


「ありがとうございます!」


褒められると照れるけど、初回のドラゴンほどじゃないけど、苦労したからねえ。

ここは素直に喜んでおこう。変に格好つけて北上さんに「こいつめんどくさっ」とか思われても困るし。


すなおが一番だね。



さて、そろそろマーシーの料理も出来上がるころかな。

一体どんな味なのやら。





「お腹くるしい……」


「うー。お腹はじけるぅ」


1時間後。

広場にて、お腹を押さえて転がる俺と北上さんの姿があった。


味はとても美味しい。


てか美味しすぎる。

気が付いたら無言でひたすら肉食ってたよ……。

カニを食べる時よりずっと集中してたと思う。


これは、世の中に出しちゃあかんお肉なのではなかろうか?

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