第206話
まずは21階に行ってドラゴンを数匹、さらには22階でシーサーペントを数匹狩ってみる。
多少ダメージ食らうかな? と思っていたが、全て無傷で倒すことができた。
「一週間やそこらじゃ、そこまで鈍らないか」
これが一月とか空いたらかなり鈍ると思うけどね。
とりあえず回収できるだけ回収してっと。
「んじゃ、予定通りこのままゲートキーパーに突貫しちゃおうか」
俺がそうクロに声を掛けると、クロは嬉しそうに「うなー」と鳴いて、さっさとバックパックを背負って先に行ってしまう。
どんだけ行きたかったのか……最近色々あったし、ストレス溜まってたんかな。
しばらくはダンジョンでリフレッシュしなきゃだね。
道中の敵は出来るだけ無視して、ダッシュで扉へと向かう。
大体30分とかそれぐらいで、俺たちはゲートキーパーの居る扉前へと着いていた。
「んじゃいっくよー」
そういって、扉を蹴破る俺。
……いや、なんとなく久しぶりだったもんで、ついノリで?
ちゃんと盾は構えてるし、油断はしてないよっ。
「空……?」
蹴破った先でまず目に入ったのは一面に広がる、青い空であった。
雲一つなく、眩しい太陽があるのみ。
特に敵が待ち構えているといったこともなく、それでも俺は盾を構えたまま一歩踏み出し――
「うっお!?」
――踏み出した先にあるはずの地面がなく、危うく落ちそうになる。
ずりずりとクロに引きずられる様に扉の外へ這い出て、どうにか落ち着いた俺は改めて扉の先の様子を伺った。
「うっそだろおい、足場がどこにも」
青い空は本当に一面に広がっていた。
上だけではなく下にもである。
足場が無い状態で、どう進めばいいのだと、とりあえず何かないかとあちこちを観察してみる。
「……あれがそうか?」
すると少し離れたところに、浮島を発見した。
距離は……ちょっと分からないな。あの浮島の大きさがよく分からないし、少し霞んで見えているからキロ単位で離れてる気はするけど。
しっかし、困ったぞこりゃ。
「いや、まじでこれどうすりゃ良いのさ」
多少の距離であれば、それこそジャンプすればいいんだけどね。
ここまで距離が離れているとなると、どう考えても届くわきゃねーわけでして。
「クロに抱えて貰うのもちょっと無理があるよな」
クロは空を飛べるから、一応移動するだけなら出来なくはないんだよね。
そう、移動するだけなら。
「……あ、やっぱなんかきた」
ただね、ここってゲートキーパーが居る場所なわけでして。
当然こっちに襲い掛かってるくるんだよね……それが無ければ余裕で移動出来たんだけどね。
っと、それよりもゲートキーパーをどうにかせんとだ。
こっちに真っ直ぐ向かってきたのは、巨大な飛竜だ。ついに空飛ぶ奴が出てきたかと、少し感慨深くもある。
ただ、この状態で空飛ぶ敵を相手にするというのは、どう考えても面倒なことこの上ないわけで、そこはちょっと憂鬱だったりもする。
……飛竜は、こっちに向かってきたあと、ある程度の距離を保ったまま旋回を続けている。
俺たちがゲートから出てこないのを見て、様子を伺っているのだろうか。
まあ、このゲートから出て戦闘するのは、どう考えても自殺行為なのでここから先に進むわけにはいかんのだけど……どうするかな。
ナイフ投げてもいいけど、回収できんよな。
そうなるとブレスか……あそこまで遠距離に居る相手に撃ったことないんだよな。
まあダメ元で撃ってみるか。
「おっちっろ!」
そう気合をいれて、ブレスをぶっぱする俺。
ブレスは出来るだけ遠距離に届くようにと、出来るだけ細くなるように放っている。
その分、速度も出るので放ったブレスはすぐに飛竜へと到達する。
が、当たるかと思った瞬間に、飛竜が急に飛行速度を上げ……ブレスの軸線から逃げてしまう。
俺もブレスの軌道を変えてどうにか当てようとするが、飛竜は滅茶苦茶な軌道で飛び回るため、なかなかあてる事が出来ない。
尾から雲を引いてるあたり、相当な速度で飛び回ってるのが分かる。仮にも生物がその速度で飛び回るとかやばすぎんだろ。
それでも何度かブレスが直撃する場面はあったのだが……。
「ダメだ。減衰して効いてない」
当たっている時間も短いし、なにより距離があるせいで威力が減衰しているらしく、たいして効いた様子が見られない。
勿論ノーダメージではないだろうけど、倒すまでに3桁はブレス撃たないとダメなんじゃないかな……。
そして、ブレスを放つ間ずっと飛竜が大人しくしてくれている訳もなく。
「げっ」
ブレスが途切れたのを見た飛竜が、ぐんっと機首をこちらへと向けて向かってきた。
そして口をがばっと開けたかと思うと、火球タイプのブレスをこちらへと向かい放ってきたのだ。
それも一発じゃなくて、何発も。
「てったーい!」
そう叫ぶと俺は扉を閉めて、急いで距離をとる。
クロ? とうの昔に避難してたよ!
そして一瞬間をおいて、扉の向こうから爆発音が何発も響く。
幸い扉が破られて、爆炎がこっちにも……なんてことにはならなかったけれど、困ったぞ。
うーん。
「待ち構えてんなあ」
少し間をおいて、扉を開けてみたけど、即ブレスが飛んできて慌てて扉を閉めるはめになった。
それに、ちらっと飛竜の姿が見えたのだけど、さっき与えたダメージがなくなってた気がする。
そこまで強力じゃないけど、回復能力持ちってことかな。まいったね、ほんと。
このままじゃどうにも進む事は出来ないだろう。と言うことで、この日はいったん撤退することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます