第191話


「不法侵入者ヲ検知シマシタ。直チニ排除シマス」


「なんでぇっ!?」


隠し扉見つけてはいったらこれとか、ひどい罠にもほどがある!


……どうする?見た目がヤバすぎて忌避感がすごいけど、こいつ倒せるのか?

この大きさの蜘蛛……まさか土蜘蛛か?俺はこんなキモイやつのスキルをバンバン使っていたのか。地味にショックだ。



もっとこう、格好いい姿を想像していたのに……ん?まてまて、土蜘蛛にしては足が細い。土蜘蛛は俺の胴体より太い……でもこいつのは俺の足と大差ない。こいつ土蜘蛛じゃないな……なら倒せる可能性もあるけど、どうする?てか、排除するって言ってるんだからもう戦うしか……。


「……盗ッタモノヲ置イテイケバ見逃シマショウ。30秒待チマス……1、2、3……」


やるしかない、そう思い武器を構えると……蜘蛛はそんな事を言い出した。

そうか、これはイベントなんだし、一般の人も参加する……つまりこれはちょっとしたドッキリ?たちが悪すぎると思う。




さて、そうなるとだ……。


「すたこらさっさだぜ」


せっかくわざわざ30秒待ってくれているんだ、その間に取るもん取っておさらばしよう。

走れば30秒以内に出口につくだろう。



……


…………?


あっれ、おかしいな?そろそろ30秒経つと言うのに出口が見えてこないぞ?

フラグ立てて即回収した落ち?ははっまさかねー……。




……ちらっ?


「っ!?……きたぁぁああっ」


気になって振り返った瞬間、背後で破砕音がしてガシュガシュと何かが高速で近づいてくる音がする。

何かってあいつしか居ないんですけどねっ!


やべえ、逃げなきゃ!と思い全力で走る俺だが……背後の足音は徐々に大きくなっていく。

こいつ俺より早い!!




「待チナサイ」


「っ!?……出口!」


もう声が聞こえる距離にまで詰められた!?

出口、出口は……見えた!


出口の手前に居るのはゲートキーパーか!



「どっせーい!」


背後からやばいのが迫る中、俺はゲートキーパーに向け飛び蹴りをかまし、そのまま勢いで出口へと滑り込む。


そしてその直後、背後でズドンッと重い音がする。

ドガッドガッと音が続いてるのは、どうにかしてこちらに来ようとしているのだろう。


その音はしばらく続き、やがて諦めたのかガシュ……ガシュと歩く音が徐々に遠ざかっていった。



「……こっわ!?」


怖すぎんよまじで。


「なんだよあれぇ……怖すぎだろ。トラウマもんだよぉ……」


子供がトラウマなるとかそんなレベルじゃなく、大人もトラウマなるわ!


「……まあ、面白かったけど」


ただあんなにドキドキしたのは久しぶりだったし、ちょっち面白かったとは思う……ちょっとだけ。


それになんだかんだでアイテムは大量にゲット出来たし……結果良ければすべて良しなのだ。


さて、走った分他の人より早くついちゃったみたいだね。

誰もおらんし……しゃーない、暫く待つか。




そんな訳で、入手したアイテムの効果を確認しつつ時間をつぶしていると、ちらほらと散開みんなが集まってきた。

あ、ちなみに入手したアイテムだけどね、手に取るとぽんってポップアップが出ててきて、効果とか分かるようになってるんだ。まじでゲームみたいだよね。



皆結構アイテム拾ってきてるっぽいし、これだけあれば十分かなあ?

てか皆隠し扉は見つけてないのか……まさかの俺だけ?一人だけ恐怖を味わったとか酷い話である。



なんて思ってたら、よろよろとした足取りで中村が近づいてきた。

その口からはわずかに独り言が聞こえる……ええと、何々?


「……蜘蛛に……顔が人の蜘蛛が……」


中村、お前もか。


「ああ、中村もか……なんとか逃げ切ったけど、あれまじでビビったよね」


「え、逃げ切った……まじ?」


「全力で走ったらギリギリ……中村はアイテム返したの?」




なるほど、話を聞く限り中村はどうやら逃げる選択をせずにお菓子を返したらしい。

その割には手持ちのお菓子が多い気がしなくもないが……。



「落ち込んでたら、しょうがないですねって……お菓子何個かもらった」


「ああ、返したらそうなるのね……」


そうならそうと最初から言ってくれれば……言ったらネタバレになっちゃうからしょうが無いんだろうけどさーっ。




まあ、いいや。

若干名心に傷を負ったけど、みんな無事揃ったしステージ2を進めるとしよう。




ステージ1と違い、ステージ2は割とちゃんとした迷宮になっている。

なのでマッピングしながら進まないと、どの部屋は攻略済みとか、自分たちが今どこにいるかとかが分からなくなり、最悪の場合は時間切れまで迷宮を彷徨う事になるだろう。


一人だけじゃ不安もあるので、マップは俺と太田さんが描いている。大丈夫かな?


「マッピングも久しぶりだ」


「結構描きなれてるな」


「最初はオートマッピングなかったですから……」


……そう、最初はなかったんだよね。


おのれアマツめ……っと、いかんいかん。マッピングに集中せねば。



あと道中に色々ある仕掛けなんだけどね。


「次に進むには……あれか」


「よっと!」


結局力づくで進める事になってしまいました……今も床がなくて、色々仕掛けをいじらないと通路が出ないって場面なんだけど、ジャンプすれば余裕で届いてしまう……ってことで皆してジャンプしてる。ゆるせアマツ。


「敵もそれなりに強いか」


「事前にみた通りだ」


道中の敵も今の俺たちであれば問題なく倒せるレベルだ。

最後のゲートキーパーは他と比べて強めだけど、それでも苦戦するレベルではない。




「ステージ3ついたな」


そんな訳でさくっとステージ3についてしまった。


「これは……」


「広い」


「中央に何か居るな」


「あれを倒せってことか」


ステージ3は1と2と違い、だだっ広い空間に出た。

フィールドタイプのダンジョン……と、まではいかないが、半径500mぐらいのドームって感じかな?

相当広いね。


そして中央に何やら人影っぽいのがいくつかある……んー?


「なんか羽生えてますね、あれ」


「よく見えるな」


レベル上がって視力も良くなってるのか、俺の目は中央に居る人影の輪郭をある程度正確にとらえていた。

手には槍と盾を持ち、背中からは羽が生えている……天使か?

表情までははっきり見えないが、ほぼほぼ人と近い外見をしてるように見えるぞ。


「……」


ここまで人に近い相手と戦うのは初めてじゃないだろうか?

まあ、まだ戦うって決まった訳じゃないんだけど、この状況は戦えってことだと思うし……果たして戦えるのだろうか。

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