第185話
「……」
「……」
「行くか」
「うっす」
去って行くアマツを無言で見送っていたけど、都丸さんの一言でみんな再起動する。
アマツのテンションが色々振り切ってて不安を覚えるけど、とりあえずはイベントを見に行かないとね。
「人多いなー」
入り口で配っていたバッグをポケットにしまいながらそう呟く俺。
会場内は今朝ニュースで見たのよりも更に人が増えているようだ。
「てかひっろ」
会場はかなり広く……それこそモーターショーをやる会場並にはありそうだ。
そんな会場がいくつかあってこの混み具合……どんだけ来場者が居るのだろうか。
その内どこか発表されたりするんかね?
「なんかいい匂いしません?」
「出店だろ。あとで食いにいくか」
会場内のどこかでマーシーが料理を用意しているのだろう。
食欲を刺激する香りが漂っている。
ダンジョン産の食材を使った料理ってことで、やっぱ牛さんとか羊とか……あとどこかのダンジョンに鳥が出るらしいのでその辺り?あとはもしかすると、アマツの肥料を使った野菜なんかも使ってる可能性あるね。
もしそうだとすると出所はうちのじいちゃんばあちゃんになる訳だけど……会場に居たりしてね?
まあ、お昼にはまだ早いのでご飯は後回しだ。
「まずどれから行きます?ダンジョン絶対混んでますよねえ」
「ダンジョンの内容についてパンフレットになんて書いてある?何度も潜れるような仕様であれば、期間中回数こなしたいところだが……」
メインの目的は限定ダンジョンだけど、内容によっては期間中ずっと籠もることになる……かも知れない。
「えーと……あったっすよ。……えっと、一日一回だけ潜れて、しかも2時間の時間制限付きみたいっすね」
「それなら今日のどこかで潜れば良いか」
ただそれだと他の催しが見られないし、それはアマツも避けるだろう……って思ったら、実際に時間制限とか付けて避けてきたね。
これなら他の物を見る時間はたっぷりありそうだ。
「じゃあ新要素の見に行きます?道中のもの見ながら」
「そうするか」
アマツが直接言いに来たぐらいだし、結構変化点の大きい要素かも知れない……ってことで新要素の天井に向かうことにした。
現地点から結構距離はあるっぽいので、道中色々みながら行こうと思います!
最初に目に付いたのはバイク用品の展示スペースだった。
これがまた広いんだ。
「バイク用品の展示スペース広いね」
「ダンジョン関連の品と言うよりは、バイク自体に展示が多いな」
広い理由はバイクが一杯並んでたからだったりする。
もちろんダンジョン関連のも一杯あるけどね。
「バイクもちょっと欲しいなあ……原付でも良いから」
「免許あるのー?」
「原付しかねーです……原付でもいいから欲しい」
原付はちょっと買い物に行ったりとかするのに便利そうなんだよね。
……実際には車ばかり使ってあまり乗らない可能性もあるけど……それでもちょっと欲しいのだ。
でかいのも良いけど、そっちは免許ないしねえ。
まあ、今買っちゃうと契約やらなんやらで時間掛かるから、買うとしたら後でだけど。
「なんかあっち人集り出来てるっすよ!見に行くっす!」
そう言われて顔を向ければ……確かにかなりの人集りが出来ていた。
あそこもバイクの展示スペース内なので、バイク関連で何かやってるのかな。
と、気になったので見てみると……そこではグォーンと音を立てて回るグラインダーに革で出来た手袋を押し当てて、ダンジョン産と普通の革でどれだけ強度に差があるのかを実演して見せていた。
「牛さんの革まじで丈夫だね」
「美味しいし、素材としても有用とか凄いな」
結果はダンジョン産の圧勝だった。
普通のもかなり持っていたけど……最終的にボロボロになってしまっていた。
それに対してダンジョン産は表面はかなり削れていたけど、まだまだ大丈夫って感じ。
牛さんやっぱ凄いな!
「これで弱けりゃ文句ないがな……」
「はははー……」
いや、それは本当にそう思う。
……最初の特殊能力持ちってことで、結構怖い相手なんだよね、牛さん。
現に隊員さんたちも大怪我負った訳だし。
まあ、弱すぎるとそれはそれでダンジョン側には問題だと思うので、難しいところだなーと思う。
ダンジョン産の素材を使った商品は何もバイク用品だけではない。
「羊のセーターとかマフラー売ってる……おう、お高い」
羊であればやっぱ羊毛だよね。
……普通の製品より桁が一つ違う。お高い……いや、むしろ安いのか?ダンジョン産の素材はまだ貴重だろうし、それを考えたら桁が一つ違うだけってのは凄いことかも知れない。
「ライターで炙っても燃えないんだ……あとこれ、ぜんっぜん静電気こない。すごい」
「このクッション良いな……買ってくか」
「それ気になってたんですよね。私も買おうかな」
質はむっちゃ良いんだよね、やっぱ。
燃えないのも凄いけど、個人的には静電気こないのが凄く良い。
あと太田さんがお子様に……と目を付けた羊毛使ったクッション、あれも良いね。
真四角のブロックになってるんだけど、色もたくさんあるし、並べて飾っても良さそうな気がする。
クロが欲しそうにしてたので、俺もついつい10個ほど買ってしまった……買いすぎた気がしなくもない。
でもバッグには入るから問題なしなのだ。
「しかしこのバッグ便利だな。期間限定だけじゃ無くて普段も使えると良かったんだがなあ……」
「ですよねー」
ちなみにこのバッグ、俺たちが普段使っているバックパックみたいに、中がしっかり拡張されていたりする。
違うのは使えるのは一回だけってところかな。
会場からでたらそれ以上物は詰め込めないし、中身を取り出せばただのバックに戻っちゃうんだって。
「……あそこの一角だけ人の密度高くないです?」
他にも面白そうなのないかなーと、キョロキョロ辺りをみながら歩いていると、前方に何やら人集りが再び見えてきた。
近くまで寄ってみると……どうも取り扱っているのは電化製品が多いように見える。
……電化製品?ダンジョン産素材を使って……?
と疑問に思ったが、一つだけ使えそうな素材があったのを思い出した。
「あー……たぶん、トカゲっすねあそこで扱ってるの」
「アイスリザードか」
あそこに並んでる電化製品は冷媒にトカゲの素材を使ってるんだろうね。冷蔵庫とかエアコンとかそんなのばかり並んでいるし。
「夏用にちょっと欲しいっすね」
北海道も暑いときは暑いからね。
あと暑さに慣れてないから、30度越えただけで異常気象だ、死ぬーとか言い出したりするし……地域によるけど。
「団扇とかある……欲しいけど、結露凄そうだよね」
団扇の紙の代わりに革を使った製品があった。
扇げば冷風がくるので良いなあって思ったんだけど……そうね、結露するよね。
まあ外で使う分には問題無さそうだけど……。
「こっちの小さい送風機とか良さそうだぞ。結露した水はここに溜まるんだろう」
「これ内地だと相当需要あるだろうな」
あ、これは良いな。
結露しないし、充電するだけで結構な時間使えるっぽい。
風もかなり冷たいの出るし……1個買っておこう。
後はー……変わったところだと、温度を一定に保つ性質を利用してロードヒーティングに……なんてのもあった。面白そうだけどコスト的に厳しそうなイメージがあるね。
気軽に持ち運べるサイズの冷房は、多少高くても売れるんじゃないかなーって気はする。
業務用のとかはこれからどこまでコスト下がるかによるかなー。
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