第173話

んじゃ、バックパックにしまい終わったし、次の階層を覗いてみますかね。

なんとなーくどんなのが来るか予想は出来るけど。



「ああ、やっぱこんなフィールドかあ」


階段を降りた先にあったのは、広々とした水面であった。

所々浮島も見えるが……まあほとんどが水面である。


水面下には恐らくシーサーペントがうじゃうじゃ居るのだろう。


「これ、カード持ってないとダメダメじゃん。てか持ってても集団行動出来なくない?」


俺とクロのペアであれば活動は可能だ。

でも他のチームは相当厳しいんじゃないかな……ほかに何か対策手段を考えないといけないだろう。



その後、試しにと言う事で3体ほどシーサーペントを追加で狩って、その日の攻略は終了としたよ。


んで、お楽しみタイムと言う事で、解体したお肉をもってマーシーのところに突撃だ。

もちろん部屋に引きこもってる北上さんにも声をかけたよ。ごはん食べませんー?と聞いたら、いくいく!と言って速攻部屋から出てきた。



どんな料理にするかはマーシーまかせだ。

当然ながらシーサーペントなんて食べた事がある人は居ないからね。

どう調理すれば美味しく頂けるかはマーシーしか分からない。


まあ、串にちょっと刺したやつ貰って焚火で焼くぐらいは自分でするけどね。

これはこれで楽しみだ。


「お鍋が美味しいとな」


俺たちの目の前には、ぐつぐつと音を立てる美味しそうな鍋が二つ並んでいる。


マーシー曰くシーサーペントのお肉は様々な料理に合うが、特にお鍋とかスープにすると美味しいらしい。

そして寒い時期なので鍋が良いのでは?と言う事でお鍋になったのだ。


あ、お鍋以外にも色々あるよ。

唐揚げとか、お刺身……と言うか湯引き?あと焼いたのとか煮込んだのとか、本当色々ある。


「こっちが味噌仕立てで、そっちがポン酢とか付けて食べる方だってー」


そう言って北上さんがお玉を手に器に鍋の具材をよそっていく。

寄せ鍋てきなのと味噌仕立ての鍋……どっちもおいしそうだ。



「んっ」


「おー……こりゃ良いねえ」


まずは身を一口食べてみた。

身はホロリとしていて、程よく脂ものっている。臭みはない、むしろ少し爽やかな香りがするぐらいだ。

少し淡泊な感じもあるけど、ポン酢で食べたり、味噌仕立てにすることで丁度良いバランスだ。

肉というよりは魚の身だねこれ。ドラゴンの時ほど感動はしなかったが、それでも十分美味しいと言えるだろう。


クロもオオゥとか鳴きながら茹でた身を食べている。

噛んだ瞬間湯気がもわっと出て驚いたらしい。



身を食べたら次は別なもの……と俺が手を出したのはシーサーペントの肝だ。

1cmぐらいに厚切りされたそれを口に入れると、とろりと蕩けておそろしく濃厚な旨味があふれる。


「肝うっま!」


身は淡泊だったけど、肝はやばいぐらい濃厚だ。

でも飲み込むとすっとその濃厚さが消え、口の中がすっきりするのでまた次へと箸が伸びる。


「スープおいしすぎる……」


北上さんは味噌仕立てのスープを口にしていた。

よほど美味しかったのか、すぐにスープのお代わりをする北上さん。


俺も飲んでみたけど、出汁がめちゃくちゃ出てるんだよこれ。

淡泊な身なのに不思議だ……フグとかってこんな感じなんだろうか?


これ、絶対〆の雑炊めちゃくちゃ美味しくなるやつだ。




鍋を食べ終え一息ついたところで北上さんが鍋の具材について尋ねてきた。


「ところでこれってシーサーペントだよねー……?倒せたんだ?」


「ええ、オークション様様ですねー。わりとさくっといけました」


「おー、そりゃ良かったー」


実は何の肉か黙っていたんだよね。

なんとなく察してはいただろうけど。


んま、これでシーサーペント対策はばっちりになったので、明日からはガンガン狩っていこうと思う。

っと、明日はちゅーるの企業さんのやつがあるから、明後日からかな?


「そっちはどうです?カードとか……ぁ、なんでもないです」


隊員さんの調子はどうかなーと思って聞こうとしたけれど……北上さんの瞳のハイライトが一瞬で消えた。

やっぱまだカード集めには苦労してるんだなー……一緒に潜れる動物早く見つかるといいね。



んで翌日の午後。


「それじゃ行こうか。2時約束だから今から行けば10分前には着くはず」


俺はクロと一緒に車に乗り込み、企業の待ち合わせ場所へと向かっていた。

出張所がわりと近くにあって、そこにわざわざ本社から出向いてくるんだそうな。

こちらとしては東京まで行かなくて済むので助かるね。



ナビを見ながら運転すること10分ちょい。

俺たちは目的地へとついていた。


「2時から伊藤さんと打ち合わせの約束をしていた島津とクロです」


「……はい、ではご案内致しますね」


受付さんに話すと、一瞬クロを見て固まっていたが、すぐに何事もなかったかの様に対応を始める。

しかし、猫と打ち合わせの約束って冷静に考えるとおかしいよな。冷静に考えなくてもおかしいけど。



受付さんに案内され、会議室っぽいところに入ると、中には3人の男性がすでに着席していた。

俺たちが来る前から待ってたらしい。


「営業の伊藤です。よろしくお願い致します」


「開発の佐藤です。本日はよろしくお願い致します」


「副社長やらせて頂いとります三沢です。今日はお越しいただきありがとうございます」


「クロと翻訳の島津です。よろしくお願いします」


かなり偉い人たちがきちゃった……よく来られたなーと思う。企業のお偉いさんって忙しそうなイメージあるんだよね。


猫と打ち合わせをするので、副社長以下3名北海道に出張します。とか言って来たのだろうか。創造するとシュールな光景だ。



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