第164話
「夢も希望も無いんだよ」
「何を言っとんのだお前は」
太田さんがあたった。
この世に神様なんていないんだ。
あ、でもアマツがいるか……あれって神様なのだろうか?宇宙人枠?どんな存在なのかいまいち分かってないよな、そう言えば。
……まあ、祈っても効果あるか微妙な気がするし、止めておこう。
その後も何度か別れて狩る機会があったけど、北上さんとペアになる事はなかったよ……おかしいなあ、確率的にはなってもおかしくないんだけどなー?
まあ、そんな訳でペアには慣れなかったけど、狩り自体は順調だったよ。
基本土日しか潜らないけど、大体人数分のカードは揃えられていたしね。
中村については平日もうちのダンジョンに潜っていたので、レベルも上がってポーションもそこそこ入手出来ていたりする。
……うん、ちょいちょい平日潜ってるよな、こいつ。まじで仕事クビになったりしないだろうな……。
「ちょいちょい有給とってるど大丈夫なん?」
「おう、ちゃんと許可とってるから大丈夫よ!」
ホントカナー。
怪しいなーと思い、じとーっと中村を見つめるが、当の本人はそれに気付かずにしゃべり続ける。
「てか非生物系のダンジョンの話出てから皆行きたがっててさ、この前社長も行きたいつってたし……その内社員総出でダンジョン潜るかも知れない」
「まじで」
ああ、そうだ。
非生物系のダンジョンだけど、実装が決まったんだった。
今回のトライアル期間中には間に合わなかったけど、来月には人数増やしてトライアルをまたやるらしく、その時には実装が間に合うそうだよ。結局モンスターの体内にコアを作り、それを使って装備を強化出来るシステムになったとかなんとか。楽しみだね。
てか大丈夫か中村の会社、本業は良いのか。
「仕事で指とかやっちゃう人多いんだよ……最近はほとんど無いけど、熟練の人とかはな……チュートリアル突破して、施設使えるようになれば治せるだろ?」
「あー、そうだね」
そういやどんな会社か聞いてなかったけど、あれかなープレス機とか使う会社なのかな。
あれってまじでヤバいからなあ。金属がああなるんだから、人間の体なんてそらもう耐えられる訳もなく……。
そして気を付けていても事故が発生するときは発生すると。
今までは失った指とかは再生出来なかったけど、ダンジョンに潜って追加された施設を使えば治せるもんね。
チュートリアルを突破する必要があるけど、物が持てるのであれば行けるはずだ。
「それに最近は仕事もあまり無いらしくて……ダンジョンに潜ってお金になるのならって、初期装備とかは会社で面倒見て……ってな感じで結構本気で考えてそうなんだよ」
ああ、仕事自体もあまりないと……早めにダンジョンに参加出来るのであれば、お金は結構稼げるだろうねえ。早ければ早いほど良いと思う。
会社の体力があるうちにやっちゃうのは有りと言えば有りかなー……本当に儲かるかはやってみないと分からないから博打要素は大きいけどね。
あとはー……機械で加工とか出来るのであれば、そうだねえ。
「それはそれで面白そうだね。素材次第では加工して売っちゃうとかも出来るんじゃない?」
原料は自分らで確保いて加工も行っちゃうと。
出来たものが売れるかどうかは知らんけどなっ。
「あー……いいなそれ!ありだと思う!」
「まあ、そんな訳で有給取りやすい環境にあんのよ。潜るときにアドバイス欲しいって言われてるけど、そんぐらいなら問題ないし……ああ、勿論秘密な奴は言わないからな?」
休み取りまくってる中村だけど、まあ聞いた感じだと問題はなさそう。
あとはオークションまでにどれだけレベルを上げられるか……俺とクロもできれば欲しいものは落札したいから、ポイントとか色々ためておかないとなんだよね。
オークションまで残り期間はそんなに無いけど、がんばって狩りまくるどー!
狩りまくりました。
一度攻略した階層をひたすら巡るのは結構きついものがある。
あまり上の階層だと脳死状態で狩る訳にもいかんしねえ……まあでもそのかいはあった。
「結構たまったなあ……」
手に持ったカードの束、それらは決してトランプではない。
ネズミやウサギなどを除いた……ゴブリン以降の敵のカードである。
宝石や欲しいカードが出た場合、お金以外で交渉出来るかも知れない、って事でドラゴン以外も時間が空いた時にクロと一緒に狩って少しずつ集めたのだ。
その結果、各モンスターのカードを3枚ずつ、ドラゴンに至っては5枚集めるに至る。
ドラゴンの枚数が多いのは、ポイントも稼いでおかないといけないなと思い、毎日最低100体は狩る様にしていたからである。
うちのダンジョン以外についても割と順調に集まってはいる。
大、中、小ダンジョンの1~4階のモンスターカードを全て揃えたところで止まってはいるが……それでも十分な成果だと思う。
あとは隊員さん達の攻略具合だけど、今は羊の階層をクリアしてオーガとかの階層まで進んでいるね。
こっちも順調……なのかなあ?
オーガの階層に行ける様にはなったものの、毎日死んだ魚の目をしながら、ひたすら羊と鹿を狩り続けているのでカード集めは難航してそうではある。
鹿も羊も必須と言えるレベルで有用なカードなので、人数分を何とか揃えたいのだろう……どちらのカードも3枚までセット出来るので、合計48枚……聞いただけで吐きそうになる枚数だ。
ほどよく休みながら狩る様に言っておこうと思う。
てか、自衛隊で犬とかを導入する話ってどうなったんだろうね?いい加減心が病んできそうな人が居てもおかしくは無いのだけど……。
ああ、中村も順調だったよ。
結局ギリギリ牛さんを狩るまで行けたからね。
もう有給残ってないと思う。
宝石は出なかったから行けるか不安ではあったけど、盾で牛さんの攻撃をいなすのに重点を置いて、ちまちま攻撃することでなんとか攻略出来ていた。
盾の使い方は本当にうまくなったなーと思う。これで宝石ゲットすればもっと安定するんだけど……ま、そこはオークションに出品される事を期待しておこうか。
可能であれば全部落札したい……いや、さすがに顰蹙買うか?どうしようかな。
「まあ、明日になったら雰囲気みて決めるか」
実は明日がオークション開催日なんだよね。
そもそも出品されるかも分からないし、実際にものが出てから悩むとしよう。
「いくらで売れるかねー?」
俺の言葉にPCの画面を見ながら尻尾を揺らして答えるクロ。
ここ最近は色んな商品を見るのが楽しいらしく、夕方の決まった時間はああやって画面に張り付いているのだ。
ちなみに俺とクロは出品、落札両方とも参加するつもりだよ。
出品するアイテムは20階で手に入るポーションをいくつか出しておいた。
大量に出そうと思えば出せるんだけどね、それをやっちゃうと他の隊員さんやトライアル参加者が出品したポーションとかの値段が下がっちゃいそうだから、ちょっと遠慮しておいたのだ。
クロも通販で購入できるだけのお金が手に入れば良いって話だしね。
「大量にあるカードは売ってもよかったかなー……今更だけど」
そう言って端末をぽちぽち操作する俺。
オークションへの出品自体はすごく簡単だったりする。
ゲーム内で出品するぐらいの感覚で端末をぽちぽち操作するだけで出品出来てしまうのだ。
落札するのも端末を操作して行うよ。
金銭のやり取りとかは端末とダンジョンの許可証……あれが実は銀行口座と紐付いているらしく、端末に許可証を翳すだけで出来てしまう。
めっちゃ簡単。
ああ、端末ない人はパソコンとかスマホつかってやらないとだけどね。
それか会場にいってやるかだ。
そっちはちょっと手間が掛かるけど……まあ大したことは無いか。
と言う訳で、端末さえあれば出品は簡単だけど、もう出品の締め切りは過ぎているのでカードを追加で出すことは出来ない。
まあ、次の機会を待とうと思う。
んで、そんなカードを集めまくった俺だけど……オークション開催の当日、会場の前でぽつんと一人佇んでいた。
もうあたり一面雪景色となっており、そんな中一人佇んでいると非常に寒そうに見えるが……実際にはそうでもない。
きっちり冬服を着込んでいるし、首には黒くてもふもふしたマフラーを巻いている。
それに……ダンジョンで身体能力が上昇しているおかげもあって寒くはない。たとえ5%と言えども結構影響あるんだよね。
「……早く着きすぎたかな」
んで、なんで俺がこんなところに一人で居るかと言うとだ……一つは勿論オークションに参加するためであり、そしてもう一つは……。
「あ、島津くんはやいねー」
「今来たばっかりですよ。それは行きましょうか」
北上さんと一緒に参加する事になったからである!
やったぜ。
いやー……オークションの参加も応募して受かった人だけだったからさ、隊員さん達も皆参加したかったらしいんだけど、尽く落選しててねー……頑張ったかいがあったと言うものだ。
いや、本当色々あったのですよ。
聞くも涙語るも涙の事件が。
あれは1週間ほど前の出来事……中村が有給をとってうちのダンジョンに潜っていた時のことだ。
「オークションかー……会場行きたかったけど、こんなん受かる訳ないしさー」
オークの群れに中村を突っ込ませる事およそ1時間。
いい加減休憩しようぜと言うことで、休憩所でダラダラしていたのだけど、ふいに中村がオークションの事を愚痴りはじめた。
どうやらオークションに参加したくて応募したがあえなく落選してしまったようだ。
「ソーダネー」
「……まさか島津お前」
おっと、棒読み過ぎたかーまいったねー。ハハハー。
「受かった。しかも2枚」
「まじかよっ!??」
まじですよ。
2枚も手に入れるの苦労したんだからねー。
具体的に言うと……あれなんで、まあ苦労したとだけ。
「まさかお前……」
ナニカナ。
その疑いのまなざしは。
……と思ったら、急に笑顔になってこっちに近づいてきたぞ。怖い。
「なあ、島津。俺たち友達……いや、親友だよな?」
ほう……そうきたか。
確かに俺と中村は高校時代をずっと同じ教室で過ごした仲だ。
放課後もよく遊んでいたし、親友といっても確かに間違いではないだろう。
「悪いけどソロで潜ってくれ」
「裏切り者ォオオオ!!?」
だが、それとこれとは話が別なのだ。
床に崩れ落ち、手を伸ばす中村を置いて俺は……。
なんて事があった。
まあ茶番デスネ。
それはそうとオークションですよオークション。
いつまでもこの寒空の下に居るのもあれだし、ささっと会場に入って席についてしまおう。
席は決まっているから座れないなんて事は無いんだけどね、混んでくると席に行くのも大変だし……って事で北上さんを連れ、会場へと入るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます