第146話


「隊員さん達のステータス気になるなあ」


あと確認したい……と言うか、気になるのが俺たち以外のステータスだ。

隊員さん達はおそらくレベル10~15のはず。その状態で俺たちとどれぐらい差があるのか気になるんだよね。


んー。


「見せて貰っちゃおうか?」


そうクロに話すとうにゃんと返事がくる。

お任せーって事らしい。


んじゃ、都丸さんに電話でもしてみよう。


こっちのステータスも見せるから、見せてーってお願いしたら見せてくれないかなー。





「別に良いぞ」


「やったー」


すっごいあっさり許可が出た。


とりあえず休憩所で合流しようと言うことで、俺とクロはさっそく休憩所へと向かう。


そしてほぼ同時に休憩所へと戻ってきた隊員さん達からステータスを見せて貰うことになる。



【名 前】 都丸 竜司

【種 族】 人

【レベル】 13

【耐 久】 12987(12987)

【M P】 130

【STR】 958(1018)

【VIT】 999(999)

【AGI】 615(615)

【DEX】 758(758)

【スキル】 夜目、踏ん張る、火事場

【魔 法】 


「おー……」


とりあえずは都丸さんのステータスを見たけれど……レベルは予想通り。でもステータスが低い感じがする。補正無しで4桁行ってないんだねえ。ちょっと意外だった。てっきり半分ぐらいかなーとか思っていたんだけど。



俺とクロが隊員さん達のステータスを見る一方。

隊員さん達も俺たちのステータスを見てたりする。


あっちはあっちで……高過ぎだろとか、スキルの数が頭おかしいとか聞こえてくるので、予想とは違っていたらしい。




ふむふむ……お?


都丸さんのスキル欄に踏ん張るがあったね。

ってことはあの宝石を手に入れたってことか。



「宝石手に入れたんですね」


「ああ、何とかな」


そう応える都丸さんは嬉しそうだ。

あれがあると大分楽になるからなー……立体的な起動も出切りようになるし、かなり戦力アップになるはずだ。


たださすがに全員分は出なかったらしく、今もちょいちょい宝石目当てに少人数で下層で狩ったりしているそうな。



「ステータスだが、レベルに比例して上がるのでは無く、指数関数的に上がるようだ。 あとは恐らくだが……本人の元々の力と、どう言った戦い方をするかで補正が入っているのだろう」


「ふむふむ」


なるほどなるほど。


俺たちと自分のステータスを見比べた都丸さんが、そんな感じの仮説を立てた。


何となくあってるんじゃないかなーって気はする。

盾持って前で戦う人はSTR、VITがあがりやすい。で、後から攻撃する人はSTR、DEXが高い傾向にあるそうな。


俺たちの場合も一応当てはまるかな。

クロがAGI高いのは種族的なものと、駆け回ってるのが関係してそうだ。


「その辺りはもっとサンプルがあればその内分かるだろう」


ふむふむ。サンプルとな?


「俺たち以外の隊員も大分育ってきているからな」


ああ、なるほど。

そう言えばダンジョンに潜っているのは何も都丸さん達だけじゃないからね。

彼らにもステータスが実装されていうだろうし、サンプルが多ければステータスについてある程度解明されることだろう。



ステータスを見せ合いっこしてから数日が経過した。


俺はクロと共に何時もの如くダンジョンへと潜っていた。



「いやー……竜化強いねー」


最初あれだけ苦労したドラゴンも、装備を改造し、ドラゴンカードをセットした今となってはあまり苦戦する相手では無くなっていた。


もっとも大勢に囲まれた状態でブレスを撃たれたら相当キツいが……それも竜化してしまえばどうにかなってしまうのだ。



俺とクロの周囲にはドラゴンの死骸がいくつも転がっている。

大量のドラゴンが集まっているのを発見し、クロと二人で竜化を使い、一気に殲滅したのである。


「しなくても倒せるけど、数を一気にこなせるし……良いよね、竜化」


いそいそと素材をバックパックに詰めるクロを眺めながらそう呟く俺。


竜化なしでももちろんドラゴンは倒せるが、竜化した方が圧倒的に楽に、そして大量に狩れるのだ。

竜化に頼り切りになると不味い気もするが、使えるのは日に3度まで。

それぐらいであれば毎日使用しても問題は無いだろう。



……ただね。


「唯一の欠点は、崩れた鱗が服の中でチクチクすること……いやあ、結構キツいぞこれ」


竜化が終わると体に生えた鱗などは砂のように崩れ落ちるのだけど……これがね、服の中でチクチクして困る。



「……一度戻ってシャワー浴びて良い?」


服をバサバサやったぐらいでは落ちないので、装備はクリーニングに出して自分はシャワーを浴びねばならない。



クロにごめんと拝むと、クロはしょうがないにゃあ……と言った様子でバックパックを背負い込むと、出口に向かい歩き出す。


「ありがと、一度戻ろうか」


俺も礼を言ってクロの後へ続く。




「それじゃシャワー浴びてくるから、クロは寛いでてー」


クロに寛いでてと一言残し、シャワールームへと向かう。


中途半端な時間に引き返すことになったが、休憩と思えば良いか。

シャワーを出たらクロと相談して、この後どうするか……あれ?


「……んあ?鱗が微妙に残っとるし……とれた」


ゴシゴシと手足を擦って折ると、感触に違和感があった。

目を向けると鱗が数枚崩れずに残ったままだったのである。


ただ剥がれ掛けだったのか、爪でちょいちょいと引っ掻くと鱗はすぐに取れた。


……これ、何かに使える?



と一瞬考えたが、一応は自分の体の一部ではあったので、ちょっと使うのはなあ……止めておくことにする。



「おまたー……あれ、それは」


シャワーを浴びてお休憩所に戻るとクロが何やら食べていた。


「この前貰った奴か。美味しい?」


何かなと思ったら、以前貰った海外の猫缶だった。

缶まで開けるとか本当に器用だよね。



美味しい?と聞くとクロはうにゃと鳴くと、前足ですすすっと猫缶を俺の前に押し出した。


「え……あ、ありがと」


少したべて良いよ?と言うことらしい……いや、別に食べたいわけでは無いのだけどね。


しかし折角の厚意なので食わないわけには行かない。


あまりいっぱい取るとクロが悲しげな表情を浮かべるので、ちょっとだけ……。




「……結構じゅーしーでいけるかも。いっぱい貰えて良かったね」


割といけた。

塩味ほぼないけど、中身は鶏肉だったようで人でも食える味わいだった……ジューシーなサラダチキンみたいな感じ。


クロに猫缶を戻すと、ガツガツと食べ始めるクロ。

結構気に入っているようだ。



休憩中と言うことで、ぼーっとスマホを眺めていると、今日の記者会見のニュースが目に入る。


「いよいよ会見かー……今日はダンジョン行かないで大人しくしてよっか」


いよいよ今日の夜に会見が行われるのだ。

……疲れて寝ちゃってもあれだし、今日はこのまま家で大人しくしておこう。


そう考えて、クロが猫缶を食べ終えるのを待ち、家へと戻るのであった。





そしてその日の夕方。

夕飯を食べ終えた俺はソファーに座り、適当な番組をクロと一緒に観ていた。

会見までは2時間を切っているけど、まだ結構時間があるんだよね。


で、他に何かやっているかなーとリモコンに手を伸ばしたとき、ふと腕に違和感があったのだ。



「んお?まだ鱗が……いや、まて」


ん?と思って腕を見るとそこには鱗が数枚残っていた……が、これはおかしい話だ。



「なんで鱗が残ってる?全部とったはず……」


なぜなら昼間に残っていた鱗は全て取ったはずだからだ。

それにその後はダンジョンに潜っていないし、竜化はしていない。


つまり鱗が生えるはずが無い。



だが、現に俺の腕には確かに鱗が生えている。



「……そう言えば、あの時なぜか体の心配されたような」


ドラゴンとの戦闘を終えた際に、アマツから体の心配をされたのはまだ覚えている。

あの時は激しい戦闘だったから単純に心配してくれていたと思ったけど、今考えると少し引っ掛かる。


怪我は完全に治っていたし、話すタイミングも……普通は最初に言わないかな?


それに俺の体に生えた鱗……あの時アマツは俺の体の異変に気付いていたのではなかろうか?




考えても分かることではない。


「……や、やあ」


「……ちょっと聞きたい事が有るんだけど」


なので俺は直接アマツに聞くことにした。



5階にいたアマツに声をかけるが、どうも顔色が優れないようだ。

椅子から立ち上がろうとしていたので、そっと肩を押さえる。




「ハハハ!……ちょ、ちょっと忙しいから、また後で良いかなー……なんて」


ほう。

忙しいのかーそっかー。


ならしょうがない。




俺は懐からおもむろにチューブを取り出し、アマツの眼前にもっていく。


「これ、ワサビって言うんだ」


「へ、へえ」


そう言うと俺はキャップをあけ、片手でアマツの首をガッと固定する。



チューブの向く先は……。




「これを今からアマツくんの鼻の穴に詰め込みます」


アマツの鼻の穴である。



きりきりはけーいっ!

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