第144話


「竜化にブレス……」


「竜化って、あのドラゴンみたいになるんすか?」


「いえ、ちょっとドラゴンぽくなるだけですね、一部に鱗が生えたりとか……ちょっと使ってみますよ」


皆にはまずカードの効果を説明した。


何人かは竜化と聞いてぎょっとした表情を浮かべている。

どうやらその言葉通り、俺があの竜のようになると捉えたようである。


説明してもいいけど、見せたほうが早いだろう……と言うわけで、皆の前で竜化を披露しよう。



「っとまあこんな感じです」


相変わらずメキメキ……なんかメリメリって音もするけど、竜化は装備を改造後でも特に問題なく行えた。……とは言えやはり前に竜化したときよりも、より装備の見た目がドラゴンっぽくなっている。前はドラゴンの素材を使った装備かな?と言った見た目であったが、今はこう言う生き物なのだろうか?と思うような見た目をしている……まあ鏡で見てはいないから、頭部とかどうなっているか分からないけどね。見える範囲から判断するにそんなに間違ってはいないだろう。


さて、皆の反応はどんなもんだろうか。



「装備の見た目も変わるのか……いや、一体化してる?」


一体化はしてないです。してないよね??


「一体化はしてないですよ。外見変わっただけで……体はこんな感じで鱗が生えたりします」


ちょっと不安になったので、手袋をめくって中を見せる。


……うん、めくれたから一体化してない。してないけど、ちょっと鱗の量が増えてませんかね?

なんでだよー……装備改造しただけで、なんで肉体にまで影響でるんだよー……こりゃ、フェイスガードは外さないほうがいいね。



「ほわー……ちょっと触ってもいいー?」


「どうぞどうぞ」


北上さん、爬虫類とか苦手では無いのかな。

鱗に興味をひかれたのか、ぺたぺたと触ってくる。



「これ、すんごい堅そう」


爪で鱗をつついてそう話す北上さん。


「堅いですよ。素手でトロール思いっ切り殴っても、こっちはまったく痛くないですしね」


……実際には手袋つけて殴ったんだけどね。

一切痛みがなかったから、素手だけでも相当防御力は高いはずだ。



「凄いねえ。しかもブレス吐けちゃうんでしょー?」


「見ます?」


俺が見ます?と言うと、それまでご飯を食べていた隊員さん達がわらわらと集まってくる。

皆ブレスに興味津々らしい。


半ば冗談だったんだけどなー……まあ、吐くのは問題ない。

ちょっとお腹いっぱい過ぎて別なものを吐く心配があるけど、たぶん1発ぐらいならいける……と思う。




一応皆には離れてもらい、さあ吐くかーと思ったところで、ふと疑問が浮かぶ。



「……これ、ここで吐いていいものなのかな?」


ここBBQ広場なんだよね。上空に吐けば平気だと思うけど……ここが見た目通りの空間か分からんのだよ。

もし見えない壁とかあったら大惨事になるかも知れないし。どうするかなー。



「周囲の被害はすぐ修復出来ますし、ほかの方に被害が出ないよう処置しましたので問題ありません」


「そう?じゃあやってみようかな」


俺がどうするか悩んでいると、マーシーから問題ないとの言葉が……処置してくれたとか、まじマーシーは優秀だ。


と言うわけでいってみよー。


目標は……近すぎるとあれだし、とりあえず上空に放ってから少しずつ下に向けるか。

あとは、あまり広範囲に広がるのもあれだなあ……口を窄めたら上手く絞れて直進しないかな?



……まあ、上手くいったらラッキーってことで。

皆も距離とってるし、よし……発射!







「ひえぇ……」


結果から言うとブレスを絞るのには成功した。


撃つと同時に、俺を中心に爆風が舞い、空に向かってまるで極太のビームの様なブレスが伸びていく。


徐々に向きを下に向けていくと、触れても居ないのに木々が燃え、そして地面に触れると爆発を起こし、地面を融解させていく。


……ちょっと、やばすぎませんかね。



「いやいや、威力上がりすぎっ」


装備改造に竜化、全部こみこみだけど、これはさすがに威力上がり過ぎでしょっ。

こんなの食らったら骨まで融けるわっ。



「そうなのか?」


「そう!威力高い分にはありがたいけど、使い処難しいぞこれっ」


そうだよっ。


威力が上がること自体は嬉しいんだけど、上がりすぎて誤爆が怖すぎる。

地面に当たったら爆発してたし、下手に近くで撃つと自分もやばいよこれ。



「出会い頭に撃つとかー?」


「そうだろうな。一度混戦になったらもう使えないだろう」


確かに……出会い頭に撃つしかないなこれ。

出会い頭で距離があるなら十分使えると思う……あとは相手が遠距離攻撃主体だった時とか?


今まで遠距離主体の敵ってあまり居なかったけど……弓もったゴブリンぐらい?もしかすると今後出てくる可能性だってあるからね。


まあ、使いどころが難しいけど強力なのは間違いないので、ちょいちょい練習はしておこうかなーと思う。



……と、言ったところでその日の昼食は程なくして解散となった。

皆お腹いっぱいだったし、ブレスみて満足してたからね。


今更だけど引かれなくて良かったなっ。




んで、その翌日のこと。


朝食を食べて、さて今日はどうするかなーと考えていたらスマホに着信があった。


「あれ、大塚さんだ?」


誰かな?と思い見てみると、発信先は大塚さんであった。

また何かあったんだろうか。



「どうしましたー?」


「実は島津さん宛てに荷物が届いてまして……」


おや、珍しい……しかも大塚さん経由ってことは……どう言うことだろう。普通の荷物じゃないって事だよな。

一瞬メーカーさんが早速試作品を送ってきたのかなーと思ったけど、それなら事前にこちらに話をしそうなもんだ。


なんだろう……ちょっぴり受け取り拒否したくなってきたぞっ。

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