第130話

素材についてはいずれ内容を教えてくれるとの事だったので、その日が来るのを楽しみにしながらトカゲを狩ったり、攻略を進めたりと過ごしていた。




ただ相変わらずトロールの階層はあまり進捗がなく、少しだれてきたなー……と感じ始めたある日のこと。

何時もなら朝早く起きられるのだが……前日遅くまで動画を見ていたせいで、寝坊してしまったのだ。


「ごはん食べたらすぐ行くから、クロは中で待っててー」


大盛りのどんぶり飯に生卵を三つ。

時間が無いときはやっぱこれだね。あとは野菜ジュースでも飲んでおけば栄養もばっちりでしょ。


クロに先に行っててと言い、一気に飯をかきこむ。

食い終えると食器を持って流しへと向かう。

食うのは一瞬だけど、洗い物しないとだからね……まあ、これもすぐ終わるけど。


さて、クロを待たせちゃ悪いし、すぐ行かないとだ。






「ほーれほれ、ここがええんか、ここがええんかー?」


ダンジョンの休憩所に入ったら、クロが北上さんにわしわしされてた。

喋りがなんかおっさん臭い。北上さん、こんなキャラだっけ?



「……何してるんです」


「……やだ、島津くんじゃん」


声をかけると、ピタリと動きを止めてゆっくりふりかえる北上さん。

そして声をかけたのが俺だと分かると、再びクロをわしわしする。


……北上さん猫好きだったのかな。

こう、撫でるポイントがかなり的確だ。


クロが逃げずにされるがままと言うことは、かなり気持ちが良いのだろう。


猫と戯れる尻尾付きの女性。

良いね。



良いんだけど……なんだろう、この気持ちは。

これがNTRと言う奴だろうか。





「いやー、ダンジョン攻略がなかなかしんどくてねー……癒し成分を補給してたのよー」


俺がアホなことを考えていると、満足したのだろう、クロを解放した北上さんが話し掛けてきた。


「なるほど。牛がやっぱ手ごわい感じですか?」


「そうだねー……なんとか2匹同時には行ける様になったんだけど、やっぱ死にかけてからのがきつくって」


やっぱ牛さんは強敵か。

死なないけど命懸けの戦いを続けると精神がすり減って……そこにたまたまクロだけが現れたもんで、さっきの行動に至ると。


ちなみに他の人はカフェで茶をしばいてるそうな。

こっちもかなり精神やられてるらしく、かなりグロッキーぽい。


うーむ。



「うーん……レベルと階層が同じで適正レベルって話ですけど、もう少しレベル上げたほうが良いのかもですね」


「そーだねえ」


俺とクロみたいに適正レベルより5上げろ、とは言わないけど2~3は上げた方がいい気がする。


「ほらRPGとかでも次の街に向かう時って出てくる敵は倒せるけど、無傷では行けないじゃないですか。あれと同じ感覚なのかなーと」


アマツが適正レベルって言ってたのだけど、そう言うことだと思うんだよね。

ゲームだと適正レベルとその時点で一番良い装備をしていたとしても、無傷ってのはまず無いでしょ。


レベルも装備も余裕あればかなり楽になるけど、それでも攻撃食らうときは食らうし。


「ゲームだとポーションなり魔法なりで治して終わり、ですけど……それをリアルでやると相当きついですよね」


「あー……そうだよねぇ、レベル上げかあ」


レベル上げと聞いて、北上さんの目のハイライトが消えていく。

そしてフラフラと毛繕いしているクロに向かい……。



「しんどっ」


もふっとお腹に顔を埋めるのであった。







「しんどっ」


しんどいわー。

あ、これ言ったのは俺ね。


あのあと北上さんが色々とダメそうだったので、クロを連れて行けば少しは心が安まるかもよ……と、クロだけ隊員さん達に同行することになったのだ。


んでその間、俺が何をしていたかと言うと……まあ、ひたすらトカゲを狩りまくってたよ。


メーカーの解体担当も後半死んだ目をしてたし、どれだけ狩ったか分からないぐらい狩った。


そしてその結果、今度は俺の精神がダメージを受けたのである。

もうね、クロと長時間別行動って時点でもきついのに、ひたすら作業をやったのがいかんかった。

これなら俺も隊員さん達について行くべきだったなあ。



まあ、クロに顔を埋めていればそんなダメージもすぐ癒えるのだけどね。






復活した俺は、クロから隊員さん達について話を聞くことにした。


戦闘に関しては大分ましになってきているが、やっぱレベルはもっと上げた方が良いとのことで、俺と同意見だった。


「ダンジョンに潜るパートナーとして、犬や猫を連れて行けるようにしたいと……なるほどなるほど」


気になったのは、クロを連れて行ったことで大分精神的に楽だったようで、クロみたいに猫や犬をダンジョンに連れて行けないか?と話していたそうだ。


これについては俺も賛成……ではある。

色々と課題はありそうだけどね。




「俺以外と行く気はない……でも彼らなら気が向いたら行ってやってもいいと」


あとは……また一緒に行こうと言われたらしいんだけど、俺がどうするの?と聞いたら俺以外と行く気はない、だそうだ。NTRなんか無かった。


まあ、とは言え隊員さん達とは結構仲も良いし、たまになら行ってもいいかなーとのこと。


彼らがダウンしても困るからね。

たまに一緒に行くのは良いんじゃないかと思う。勿論俺も同行するけどねっ。






涼しいから、徐々に寒いに変わってきた今日この頃。

なぜか朝っぱらから宇佐美さんと二人で茶をしばく事になってしまった。

クロは隅っこで丸くなってる。



てかね、今の時刻って朝の7時なんだけどさ。

こんな時間からここに居るって……宇佐美さん、もしかしてダンジョンの個室に住んでたりしない?


さっきも今日はどの階層にしようかーとか話してたら、ひょこっ現れたし。あれ、絶対個室から出て来たと思う。


まあ別に良いんだけどね。



んで、茶をしばくことになったけど。

別に茶をしばくのが主目的って訳じゃ無い。

本当だよ?



「年内に3カ国合同で会見を行うのが決まったぜ。これはその際に発表する例の素材のレポートだ……もっともそのままじゃ発表できんがな」


「量がすごい……」


俺が集めまくった素材について、メーカーからある程度まとまった資料がきたんだそうな。


んで、これは3カ国合同の会見で使うと……さらっと重大なこと言ってません?


まじで年内に一般開放まで行くつもりかな。すごいね。


それよりレポートの内容を見よう。

レポートの内容を……分厚いなっ。


これ全部読むとすごい時間かかるぞ……。

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