第129話

まあとりあえず確かめてもらおう。


まだ悲痛な表情を浮かべる隊長さんを促して、動画でスライムの核が見えるか確認してもらう。


「どうです?」


「……見え、ます」


お尻をもぞもぞと動かし、どこか落ち着かない隊長であるが、無事に核を見ることができたようだ。

俺はと言うと一時的に尻尾を外しているので見えない……わけでは無いが、かなり見えにくくなっている。それでも見えるのはレベル差が影響してるんだろうかね?

やっぱ高レベルは正義である。



「ポイントはそこまで高くないので、皆さん着けることをお勧めしますよ?一見普通の敵なのに……ってパターンもありますし」


そう言ってもぞもぞしている隊長に……なんで何時までもぞもぞしてるかなあ。

それ、別に物理的に刺さっている訳じゃないからね。単にくっついているだけだし、動かせるから最初は違和感あるだろうけどすぐ慣れると思うんだけどねー。


それとも物理的に刺さっているほうが良かったのだろうか?あいにく俺はその手の趣味は無いので理解は出来ないが……今度アマツに言っておいてあげよう。アメリカ版の尻尾は物理的に刺して使う仕様にして欲しいそうだ、と。



ああ、そうだ。この間録画したトロールとの戦闘映像を見せてあげよう。

頭潰しても復活するのはかなりインパクトあるだろうからね。


とりあえず全員尻尾をつけてみてからかなー。




「……こんな化け物がいるのか」


トロールを見た隊長さん……というか皆顔色がよろしくない。

よく考えると、頭が再生するところってグロいよな。

事前に注意しておくべきだったか……いや、でも彼らは軍隊だし……これはどっちかと言うと、もし戦ったら的な意味で顔色が悪いのかな。


「尻尾ないと消耗戦になるんで、結構きついですよ」


実際きついと思う。

動きはそこまで早くないから、攻撃を受けることは早々ないけど……長期戦になれば注意力が落ちていつか食らうかも知れないからね。

そうなれば大ダメージ受けるのは間違いないだろう。ポーションあれば復帰は出来ると思うけど、在庫に限りがあるしねー。

怖い怖い。




「……買う気になりました?」


俺の言葉に、複雑な表情を浮かべ頷く隊長さん。

やったぜ。


これでアメリカも尻尾が標準装備になること間違いなしだ。

素晴らしいね。


「……いや、ですが……しかし」


ん?何か迷ってる?さっき頷いたのに。


ああ、そうかポイントが足らないんだね、いいよいいよ貸してあげるよ。

買ってあげてしまうと後々問題になりそうだからさ。ああ、安心して、利子なんて要らないからね?逃がさないよ。






そんな感じで俺とアメリカの攻略組の対談は成功に終えたと言えるだろう。


お偉いさん方もうまく行ったらしく、みんな笑顔で帰っていったよ。

尻尾については気が付いてなかったかな?ほら、背後にまわらないと見えないからね。たぶん帰ってから気が付くんじゃないだろうか。俺からのプレゼントみたいなものだ、きっと驚いて喜んでくれるに違いない。



帰る彼らを見送っていると、よこから宇佐美さん声をかけてきた。

その視線は彼らの尻尾に向いている。


俺らからは背後が見えるからね、尻尾が10本ぐらい揺れているのがばっちり見えているのだ。



「……なあ、なんで皆尻尾生えてんだ?」


「趣味らしいですよ」


俺の。


「……そうか」


「弱点看破の効果があると教えたら、喜んで着けてましたね」


「……」


嘘は言ってない。

これでスライムも楽に倒せるようになるだろうし、喜んでいるのは間違いないはずだ。可愛くなるし。



さて、見送りも終わったしアマツにさっきの話をしておかないとねー。





アメリカの人らと会ってから1週間ほどが経ったある日の昼下がり。

俺のもとに久しぶりに大塚さんが訪ねに来ていた。


「追加依頼ですか?」


「ええ、可能であればトカゲを数体……いえ、多ければ多いほど良いそうで」


相談があると言うことだったので、内容を聞いてみると……以前、首相から受けたやつの追加依頼についてだった。対象はトカゲ限定か。


「あー……そういやトカゲの素材って、色々使えそうでしたからねえ」


俺の言葉に頷いて答える大塚さん。


トカゲの素材って日本だとかなり有用な気がするからね。

夏とか必需品のレベルになるかも知れん。



「構いませんよ。いつ狩ってくれば良いです?」


受けるのはまったく問題ない。

最近トロール狩りも行き詰ってきた……ってほどじゃないけど、もう少しレベル上げないとだめそうな感じでねー。

カードも出ないし、ちょっち疲れが出ていたところなのだ。

なのでこの話はむしろありがたいとすら言える。



「早ければ早いほど嬉しいです。極端な話今からでも大丈夫ですよ。メーカーからは何時でも取りに向かうので、ぜひお願いしたいと……」


ほほう?


「相当有望な素材だったのかなあ」


ずいぶんと気合入ってるね。

よほどいい感じの素材だったのかな?


「こちら、今回の追加依頼に対する条件です。よろしければ

サインをお願いします」


「……報酬の桁が増えてるんですけど……?」


桁が変わっててやばい。

これ、慎ましく生活すれば一生暮らせる額ですやん。


……トカゲそんなすごいの?気になるなあ。

正直ダンジョンで出たモンスターって食えるかどうかぐらいでしか見て来なかったから、素材としてどんな価値があるのかとかさっぱりなんだよな。


メーカーさんがきっちり調べてくれたのであれば……うん、知りたい気持ちが大きくなってきたぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る