第117話

首相直々の依頼とか怖すぎるんですけど。




 

「出来れば全身ですか。可能ですけど少し時間掛かるかもですね」


なんて身構えていたのだけど、依頼自体は割と普通のやつだった。

公表に向けて、素材とかの詳細を確認しておきたいって事で色んな企業さんに調査依頼するらしい?

んで、出来るなら一部だけじゃなくて全身が欲しいと……しっかり依頼料は弾むので、10階層以降の敵を確保して欲しいとの事だった。

9階より上は自衛隊で確保するらしい。


なんだ、身構えていたけどそこまで酷い依頼ではなかったね。

依頼料いっぱい貰えるらしーからはりきって狩っちゃうぜ。ふふふ。




「ぜひお願いします。……それともう一つ。こちらはまだ確定では無いのですが、来月国内で日米の会談が行われる際に、向こうの攻略組がぜひ島津さんと会ってお話を……と希望していまして」


ハハッ。



「英語喋れないです」


とっさに出た言葉がこれだった。

いや、違うんだ、喋れないのは合ってるけど、単に俺は断りたいだけなんだ……。


「通訳はつくから安心しろい」


「とは言え実際に時間が取れるかは難しそうですし、会わずに終わる可能性は高いです……ですが、都合が付いてしまった場合は会って頂きたいのですが、良いでしょうか?」


「攻略組って偉い人達ですよね……?何かやらかしそうで怖いんですけど……」


やだよ、アメリカの人でしょ?ハグとかしてきそうじゃん。

力加減誤って口から臓物飛び出たらどうすんの。


そんなんでニュースのトップとか飾りたくない。




「ああ、そう言った方は本当に一言二言交わして終わると思いますよ。メインは軍の実際にダンジョンに潜っている人達ですね」


む……。

そっか、攻略組だもんな。

お偉いさんとは別に軍の人もいるか。


会談に一緒に何人かついてくるんかね?



「なるほど……そう言うことであれば、はい」


あっちの人達にも頑張って貰いたいし、俺が会うことで何かプラスになるのであれば……と承諾してしまった。


ま、まあ。軍の人らはともかく、お偉いさん方は実際に時間取れるか分からないし!

会わずにすむかも知れないし……なんて……。



……首相が直接依頼するような話だし、たぶん会うことになるんだろうなー。

首相に頼まれて断るとか、普通無理だし。


ちくせう。

どーなっても知らないんだかんねっ。






俺に依頼の終わった首相たちは、そのままアマツの元に向かったので。

俺はクロと二人でもんもんとしながらケーキをぱくついていた。


すると狩りを終えた隊員さんたちがやってきたので、ケーキを奢るからと愚痴を聞いてもらうことに。


ああ、一応依頼については関係者であれば話しても構わないと確認とってあるので、安心してほしい。


「……なんて事があったんですよ」


「そいつは災難だな」


愚痴をこぼしながら、ケーキをばくばくと食いまくる俺を見て、苦笑する都丸さん。

良かったら変わりますか?と聞いたら絶対嫌だとの事である。がっでむ。


はー……まあ受けちまったもんはしょうがない。なるようになんべ。




「メーカーさんには話いってるんですねー」


まあ、海外の攻略組と会うのは置いといて。

メーカーさんに話が行ってるってのがちょっと意外だった。

一般開放しまっせー的なお話してから入ってくるかと思ってたんだけどねー。



「発表前にポーション以外のダンジョンに潜る理由が欲しいんだろう」


「あのトカゲの素材が特に注目されてるらしい」


「夏とか涼しそうだもんねー」


そういやトカゲの素材とかいかにもファンタジーな素材だったな。

確かにあれは良さそうな気がする。


身に着けるものとかに使うと、夏も涼しく過ごせるんじゃなかろうか。

北海道でも暑い時は暑いし、ていうか30度近いと暑くて死にそうってなるし。


革製品なら何でも行けそうだし需要はありそう。

鱗とかはどうするか知らない。血液は冷媒とかになりそう?


内地は相当暑いらしいから、結構役立つかも知れない。

メーカーさんにはぜひとも頑張って貰いたいところだね。



「攻略のほうは順調ですか?」


隊員さんはオークもりもり狩ってたはず。

ただ怪我も多そうだったから、ちょっち気になってたんだよね。


「順調とは言い難いが、まあ何とかなってるよ」


「来週には次の階層っすかねー」


「おぉ。さくさく行ってますねー」


怪我はやっぱまだしてそうだね。

ただ来週には次の階層ってことなので、1週間はオークを狩り続けるってことだろうし、それだけ狩ればレベルも上がって装備も強化出来るだろうし……あ、もしかしてゴブリンのカード集めもいれて来週ってことなのかな?


……オークの次って牛さんだよな。

牛さんから特殊能力持ちになるから、準備が不十分だとかなり苦戦しそうな気がする。


さくさく行くのは良いけど、まじでやべー敵だって事はしっかり伝えておかないとだ。




首相からの依頼を受けちゃった数日後、俺はじいちゃんから週末に例の小麦の収穫を行うと連絡を受けていた。


「それじゃ明日の朝いくねー」


「おう、まっとるでな」


台風もそれたし、小麦はばっちり育っているそうだ。

ばっちり育ちすぎていて、ちょいちょい近所の人……近所と行ってもキロ単位で離れてるけど、近所の人たちが畑の様子を見に来たりしてたらしい。


周辺の農家さんが気になるぐらい育ってるって事だよね。

こりゃどれだけ収穫出来るのか楽しみだ。

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