第70話
時は流れて場面は変わる。
4階のある一室にて戦闘が終わり、荒い息をする隊員達。
身に着けている装備にはところどころ血が滲んでいる。
6匹の犬が居る部屋に挑んだが、かなりの苦戦を強いられてしまった。
事前にポーションを飲んではいるが、戦闘中に受けたダメージ、それに疲労を回復しきれていない。
「……皆さん大丈夫ですか?」
そう隊員さんに声を掛けるが、おぉ……とか、あぁ……と返ってくるだけで、反応は芳しくない。
皆疲れていてすぐに返事をする余裕がないのだ。
その後ポーションを追加で飲み、どうにか落ち着いて話せるぐらいに回復したようだ。
「……犬ってのは恐ろしいもんだな。 だが、慣れれば問題は無い」
そう都丸さんは言うが、他の隊員達の顔色は優れない。
何せ相手はただの犬ではない、ダンジョンに出てくるあいつは通常の犬よりもずっと凶暴で、強いのだ。
ここまでの道中で、2階のウサギは割とあっさりと、そして3階のでかウサギも1対1で倒せていた。 数名蹴りを受けて吹っ飛んでいたが、まあポーションあるし……次からはくらってなかったし。
なので行けるかな?と4階まできてみたが、まださすがに早かったようだ。
2対1であれば問題は無かったが、これが1対1の場面になると足に噛みつかれて引き倒されて、そのまま首に噛みつかれそうになるなどかなり危ない場面があった。
後ろで見ていた俺が、即割って入ったので無事だったが……その場面以外でも防具で防ぎきれずに傷を負う場面が多々あった。
やはり思い返してみても、犬はまだ厳しい感じがするな。
たぶん1匹に対して二人で相手すれば安定して倒せるとは思う。
でもそうなると一度に相手出来るのは4匹までかー……効率はあまり良くない気がするが、さてどうしたもんか。
そもそも犬を相手にした場合、1回の戦闘でかなり消耗するんだよね。
肉体的にも精神的にもかなり。
……あれ、そう言えば普通のゴブリンは弱い割にポイント美味しかった気がする。
犬より後の階層だし、経験値的なものも悪くないはずだ……ここは犬よりもゴブリンを狩った方が効率的に良い気がするぞ。
まだ時間はあるし、話してみるか。
「……実はここの犬よりも、この先にいるゴブリンの方がかなり弱かったりします。 俺としてはここで犬を倒すより、先に進んでゴブリンを倒す事をお勧めします」
「ゴブリンか、そう言うことなら先に進むか。 犬を相手にするよりはずっとマシだろう」
よっしゃよっしゃ。
「注意点としてはゴブリンがナイフを持っている事ですね。 ただ切れ味はかなり悪いので、突き刺されても恐らく貫通はしないか、深くは刺さりません。 慣れるまでは最初に俺とクロが部屋にはいって、ナイフを奪います。 慣れてきたらそのまま戦う、でどうでしょうか?」
「ああ、それで構わない。 皆も問題ないか?」
都丸さんの言葉に他の隊員さんも頷く。
ゴブリンは他のダンジョンで見たことがあるし、相手が武器を持っていないのなら問題ないと判断したのだろう。
「よろしい。では1100まで休憩、その後ゴブリンとの戦闘を開始する」
おお、時間の言い方が違う……本当にこんな風に言うんだなあ。
他にも言い方が違うのあるのかな?
「島津さん」
「はいっ」
なんて考えていたら急に話しかけられてビクッとしてしまう。
話しかけて来たのは田尻さんだね。
何だろう。
「大体で良いんだが、このままダンジョンに潜り続けたとして、どれぐらいで条件を満たせると思う?」
また難しい質問を……えっと、確か一番最初に1階で狩ったときは100以上狩って、体の変化に気が付いたな? ってことは150も狩ればレベル上がっちゃうか? レベルがあまり変わらないからか、敵を倒すのに時間掛かるんだよなー……1時間で10部屋行ける……かな?
「そーですねえ……3日あれば行けるんじゃないかと思います」
「思ったより早いな」
「たぶんですけどねー。ゴブリンは弱いですから、さくさく倒せるんで……明日からは二手に分かれて効率上げて、それぐらいで行けるかなーと。 多少怪我を負うのは前提になってしまいますが」
「だからそれだけポーション用意したのか……分かった。 それで行こう」
慣れたら二手に分かれてガンガン狩って貰おう。
そうすれば3日で行けるとは思う。
俺とクロと比べて大分進むの早いけど、これは適正人数でやるからかな。
俺とクロの場合は少ない人数で対応するために、時間を掛けて適正レベルより上げてるから時間掛かってる。
まあ、その分カードは豊富にあるし、装備の改造もばっちりなんだけどね。
カードをろくに集めずに進んでいくと、その内どこかで詰まりそうな気がしなくもない。
あまりサクサク進むと後で苦労しそうな予感。
休憩が終わったところで、俺とクロを先頭にガンガン進んで行く。
移動はほぼ駆け足で、道中の犬は出会って数秒で瞬殺である。
10分かそこらで俺たちは次の階層へと続く扉の前に辿り着いていた。
ここは他の階層と違って、扉がちょっと豪勢だ。
ここを突破すると本来であればアマツが居るんだけど彼らは条件をまだ満たしていないだろうし、中は無人だろう。
あ、ちなみに扉の中にはちゃんとボス的な奴が待ち構えていたりする。
俺たちが倒して以降一度も姿を見せていなかったので、てっきり最初に現れて終わりかと思っていたのだけど、そうでは無かったようだ。
新たな人が入った場合は出て来る様になっているんだろうね。
なのでこの奥にもゴブリンが要るはずである。
数は3体、俺たちが手出しをしなくても行けると思うけどさっき話した通り、最初の方は武器を奪ってしまうつもりだ。
さて、開けてみますかね。
「じゃ、武器奪ったら中に入ってくださいね」
中にはゴブリンが3体いた。
持ち物も変わらず粗末なナイフのみである。
あ、腰みのはあるからね? そこの所は安心して欲しい。
俺とクロは隊員さん達に声をかけ、中へと入る。
直ぐにゴブリンが反応するが、その時には既にナイフは脱出口済みである。
「お見事」
そう言って隊員さん達が部屋へと入ってくる。これで後はゴブリンを倒すだけ……なのだが、このゴブリン達後から入ってきた隊員さん達には目もくれず、俺とクロだけ執拗に狙ってこようとする。
どうしようかなーと思っていると、クロが隊員さんの方へと駆け、脚の間をすり抜けて背後へと回る。
そうなるとゴブリンとクロの間には隊員が居るわけで、その場合はさすがにゴブリンも隊員を狙うようである。
それを見て俺も隊員さん達へと向かい走り出すが……俺はクロと違って隊員さん脚の間をすり抜けるなんて事は出来ない。なので俺は隊員さんの目の前で飛び、天井に着地するとそのまま走り抜け、隊員さんの後方へと降り立った。
ゴブリンのターゲットはきっちり隊員さんへと向かっていた。
よしよし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます