第56話

とりあえず残りのダンボール箱を渡してしまおう。


「これで家にあるのは全部です」


家にあるのはね。

ダンジョンに行けば幾らでも……って訳じゃ無いけど追加で1000個は余裕で用意できたりする。


装備にポイント使わないから余りまくっているんだよなあ。

これが毎回装備を買うとなると逆にカツカツになるんだろうけど。


そう言えば15階に行ったから購入できる品が増えているはずだね。あとで確認しておかないとだ。


「確かに、すごい量ですね」


おっと……それよりもこっちが大事だ。


さて、上手く話が進むと良いけれど……最最低でも一緒にダンジョン潜るところまでは持っていきたいけどなあ。



ま、なるようになる!

当たって砕けろだっ。


「……あの」


「何でしょうか?」


「すみません、実はさっきの会話聞こえていまして……もしかして隊員さんにポーション行き渡ってないんですか?」


「……」


実はさっきの会話聞こえてたんですう……って全員無言になるの怖いんだけど。

笑顔のまま固まるのやめてくだせえ。



「自衛隊さんなら結構深い階層まで潜ってますよね? だったら一人当たりポーションの100や200……と言うか1000ぐらいさくっと集まると思うんですけど……」


「詳しくお聞かせ願いますか?」


そう和やかに聞いてくる隊長さんだけど、目が怖え……周りの隊員さんの目もまじで怖い。


ごめん、冗談なんだーあははは!とか言ったらがちで怒られそう。

言わないけど。


てか、ポーションを大量に入手出来るってところは規制されてないのな。

次はどうかな?


「詳しくも何も……貯めたポイントで購入するだけですし」


「……すみません、もう一度言って頂いても?」


「貯めたポイントで購入するだけです」


俺の言葉を聞いた隊員さん達に同様が走る。


「今確かに言ったよな?」とか「聞いたはずなのに……なんだこれ」とかザワザワしている感じだ。



なるほどね。

規制ってこんな感じになるのか。



ふーむ。

原因を言いたいけれど、規制されているかどうか分からんのよね。まあ試しに言ってみよう。


「えっと……たぶん自衛隊さん達は条件を満たしてないんで、情報に規制が入っているんだと思います」


「情報に規制? どこが……ダンジョンが?」


お、これはセーフか。


「規制を解除する方法は?」


「レベルを5に上げて、5階に到達することです」


「……今、解除方法を言いましたか?」


「はい」


こっちはアウト。

チュートリアル突破して判明する情報はアウトって感じかなあ。


「条件を満たせば私達でもポーションを大量に入手できる、と言うことですか?」


その通りですとも。

ただ条件については教えられない見たいだけど。


さて、どうしようか。

あとは自分の肉体を使って戦うと良いですよーと伝えれば、レベル上がっていずれはチュートリアルを突破出来ると思うけど……信じて貰えるかな?


やはり一緒に潜って俺とクロの戦いを見て貰うのが手っ取り早いと思う。

でもそれを普通に申し出ても却下されそうな気もするんだよなあ。


一般人を連れてダンジョンに入るだけの理由がほしい……。



んー。


「そうですねー……ところでですね、実はダンジョンにもポーションを隠していまして、一緒に取りに行って貰えると助かるんですが……」


「それは……確認を取るので少々お時間頂けますか?」


そう言うと隊長さんは車両の方へと戻っていく。

上の方と相談するのだろう。


ポーションを貴重だと思っているのであれば許可でそうな気がする。



でなかったら……それはその時に考えよう。



「島津さん」


「はい」


隊長さんを見送ってから少し間を置いて、隊員さんが声をかけてきた。

俺が返事をすると、隊員さんはびしって感じで礼をして、言葉を続ける。


「さっきの情報ありがとうございます。 おかげで何とかなるかも知れません」


「いえいえいえ! やっぱ現場で体張って頑張ってる人に回さないとですからねー」


改めてお礼を言われると、なんか恥ずかしいぞっ。

ワタワタと手を振る俺に対してさらに別の隊員さんが話しかけてくる。


「かなりダンジョンについて詳しい見たいですが、もしかするとかなり前から潜っていたんですか?」


「ええ……半年ぐらい前からですね。 報告を強く推奨するって最近ニュースで知って焦りましたよ」


本当はもっと前から知っていたけどね。

それ言うと何で黙ってたんだーってなるから言わないけど。


「半年……ちなみに何階まで行きましたか?」


「15階ですね」


「15!?」


むっちゃ驚かれた。

まあ……銃だけだと詰んじゃうらしいからねえ。

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