第54話
「そんな時はちょっと良いポーションを使うんだ!!」
「声でけぇ」
声は新たに出現した扉からだ。
どう考えてもアマツである。
てか良いポーションね。
そういや俺って一番最初のポーションしか使ってなかったんだよね。
何度か敵から攻撃受けてはいたけれど、全部あれで治ってたもんで敢えて良いの使う意味がなかったんよね。
とりあえず扉の先に向かおう。
でもって治療したい。 戦闘終わってからだんだん痛みが酷くなってきてるし。
「やあやあ、おめでとう!」
「ありがとうございます」
扉の先ではアマツがテーブルやら椅子やら用意して待ち構えていた。
お茶と茶請けまで用意しているあたり準備が良いと言うかなんと言うか……とりあえず先にポーション買って飲んでおこう。
「さて、これで国に報告することになるんだったかな?」
「はい、そのつもりです」
ちょいポイント高めのポーションを飲むと、拳の痛みがすぐに和らいだ。
調子を確認するように拳を閉じたり開いたりしていると、アマツがこの後について聞いてきたので、はいと答える。
今日はさすがに報告しないけれど、明日荷物を片付けたりしてから報告するつもりだ。
ダンジョンで入手したものを全て没収という可能性もある……と言うかたぶんそうなる気がする。
なので鍛えた装備類はすべて隠しておくつもりだ。
一応当てはある。
「わかった。 全力でフォローはするから頑張るんだよ」
「はい! 遠慮しなくていいので全力でフォローお願いします!」
「あははははっ」
まじでお願いねっ!?
割と本気でこの先の俺の運命って、アマツに掛かってるんだかんねっ。
とまあ、そんな感じで翌日ついにダンジョンを報告する日がやってきた訳だけど。
「まずは装備隠さないとね」
ダンジョンの休憩所にて端末を見ながらそう呟く俺。
今までは別に必要ではなかったので作っていなかったが、ポイントで購入できる施設の中には個室なんかもあったりする。
「個室作成~っと。 さて、中はどんなもんかなー」
ポイントはかなり余っているので気にせずさくっと制作する。
すると休憩所内に扉が新たに出現したので、俺はさっそく中を覗いてみることにした。
「せまっ」
思っていたよりも個室は狭かった。
4畳……いや3畳かな? まあでも装備を置くだけならまったく問題はない。
「まあいいや。 荷物詰め込むだけだし。 クロ、どんどこ入れちゃおう」
さっそく装備を入れようとクロに声を掛けるが、なぜか反応がない。
「おう?」
振り返るとなぜかクロの姿がない……。
「クロー? あ、いた」
おかしいなと思い、個室の外に出ると扉のすぐ目の前でクロが座って待っていた。
「もしかして入れない? あ、やっぱり……どうやったら入れるようになるんだろ」
入れない?と聞くとクロがにゃーと鳴いたので、やはり入れなかったらしい。
購入した本人以外は使えないということだろうか。
別にポイントは余っているのでクロ用の個室を購入しても構わないのだけど……他人が入れないってのは部屋としてどうなのだろう? 個室だからか……いや、でもどこかにそれ関係の機能があるんじゃないかな。
とりあえず端末をポチポチといじってみる。
「あ、これか?」
施設の欄を見ていると、新たに招待という欄が増えている事に気が付いた。
招待欄を見ると、クロの名前が出てきたのでぽちって見た。
すると問題なく入れるようになったので、追加で個室を買う必要は無さそうでよかった。
「よっし、こんなもんか。 あとはもしアイテム渡せと言われた時に備えて家にポーション置いておくかな」
装備といってもそこまで量はないからね、しまうのはすぐ終わってしまった。
あとは念のためポーションを用意しておいて……何個くらいかな?各100もあれば良いだろうか。
とりあえずその辺の空いてるダンボール箱に詰めておこう。
さて……あっさり準備が終わってしまった。
あとは電話するだけなんだけどー……。
「あー……緊張する」
今更ながらドッキドキしてる。
どうなるか分らんし、ネット見ても大した情報ないし、アマツはちょっと不安だし。
……ええい、悩んでいてもしょうがない。 かけるぞっ!
「こちらダンジョン通報コールセンターです。 ただいま電話が込み合っています。 恐れ入りますがそのままでお待ちください」
……繋がらないがな。
報告がいっぱい上がってるのか、それとも窓口少ないのか……気合入れて電話掛けたってのにちくしょうめ。
結局5分ぐらい待ってやっと繋がった。
「……あ、もしもし」
「はい、こちらダンジョン通報コールセンター。 蓮田が承ります」
「えっとですね、自宅でダンジョンを発見したのですがー」
「……はい、自宅にですね。 どう言ったものを発見したのでしょうか?」
なんだろうこの間は。
「えっと、人がなんとか潜れるぐらいの穴が出来まして、中にダンジョンがあったんです」
「人が潜れる程度のですか……その、失礼ですが何か別のものと見間違えたとかではなくて、本当にダンジョンでしたか?」
嘘じゃねーですよ。
確かにハチ公前のはでっかい扉だったし、それに対して人がなんとか潜れる程度の穴って言われたら……まあ、それ本当にダンジョン?って聞きたくなる気持ちも分らんでもない。
「ダンジョンですね、明らかに人工物ですし、明かりも無いのに昼間並みに明るいですし……モンスターもいました」
「分かりました。 すぐに調査チームが向かいますので、ご住所、お電話番号とお名前をフルネームで伺ってもよろしいでしょうか?」
「はい」
「あー……疲れた」
とまあ、ある程度話すと本当だと思ってくれたのか調査チームを派遣してくれる事となった。
これから現地で確認するらしい、その後のことは調査チームが説明してくれるそうな。
調査チームかー……変な機材とか持ち込んだりするんかねえ。
あと変な学者とか来そう。 映画とかのイメージだけど。
「……外で待ってるか」
なんか外の空気吸いたい。
すぐ来るって話だし、クロと一緒に縁側にでも座ってよう。
そんな感じでしばらくクロを撫でたり、ブラッシングしたり、たまにスマホ見たりとダラダラ過ごしていると、遠くに珍しい車両が走るっているのが目に入る。
「ん? 自衛隊だ。 珍しいなこのへん通るの」
車両は自衛隊のだった。
一応近くに基地があるんで自衛隊の車両は時たま見かけはする。
でもこんな街中で見かけるのはほとんど無いんで、かなり珍しい事だと思う。
「んんん??」
珍しいなーと思っていると、自衛隊車両は家の前まで来て……停車した。
「おおう? まさか調査チームって自衛隊……いや、そりゃそうだよな。ダンジョンだもん、普通の人は来る訳ないか」
調査ってことは中に入るんだろうし、ダンジョンってことはモンスターが出る訳で、そりゃ一般人は入れないよね……海外のあの動画みれば分かるけど、少なくとも銃の類は持っていないと無理と判断するのが当然か。
まあ、ここのダンジョンは最初に出るのネズミなんですけどね。
しかし、自衛隊が来るとはなあ……これ、アマツの頼まれごとをどうにかするチャンスでもあるのかな?
どうにかして話を切り出したいけど、さてどうしたものか。
……思い浮かばないので当たって砕けろ方針でいくか。
「ま、とりあえず出迎えますか」
車両からぞろぞろと6名ほどの隊員が降りてきた。
考えるのは後にして出迎えに行かないとだ。
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