第22話

まあ、狩るのは明日からだけどね。


クロが飲んだ若返りのポーションが完全に効果を発揮するまであと3週間、その間に出来るだけポイントを稼ぎたいところだけど……無理しない程度に頑張るつもりなのだ。



「午前中もぐって、午後は端末の確認とー……筋トレでもするかな」


今までのように1日中狩るのは止め、午前中だけにしよう。

午後からは色々だ。 家事しないとだし、あと筋トレもしないと。


「結局買ったのはいいけど使って無いんだよね」


前に買ったダンベルとか、結局玄関に置いてそれっきりだったりする。

ぶっちゃけ使う余裕なかった。


でも今なら時間に余裕あるわけだし、休憩所に持ち込んで筋トレしちゃおうかな。




って事で早速持ち込んだのは良いんだけど。

問題が発生した。


「か、軽すぎる……」


レベルアップの恩恵で折角買ったダンベルがまったく意味をなしていない。


今使っているのは15kgのダンベルだけど、精々3~4kg程度にしか感じないのだ。



てかね、休憩所に持ってくる前に気付けよって話ですわ。



「戻すか……」


結局筋トレは家でやることにしたよ……。

あの狭い穴通るのむっちゃ大変だったぞっ!






15kgのダンベルを両手に一つずつ持ち、上腕二頭筋を鍛えるべく交互に持ち上げていく。


「59……60」


1秒に1回のペースで動作を繰り返しているが、その数が60に達しても勢いが衰える事は無い。


「ふぃー」


一息ついてダンベルを床に置く俺だが、その額には汗一つかいていない。

これはダンジョンに潜り続ける内に素の体も鍛えられたからである。




……何てことは無く。


「やっばいなこれ、がんがん筋肉付くの分かるぞ」


力こぶ、と呼ぶには些かひょろっとした腕をつついてそう呟く俺。

その傍らには空になったポーションがいくつも転がっていた。




ずるしましたゴメンナサイ。


いやー試しにポーション飲んでやってみたら捗ること捗ること……。

素だとせいぜい3~4回しか持ち上げられないダンベルもポーション飲めば何回でも連続でいけちゃうのだ。


しかも筋繊維が切れたそばから治っていくもんで、どんどん力強くなっていくんだよ……これまじでやばい。



筋トレの種類とかはネットで調べれば分かるから、取りあえず一通り60回1セットやってみようかと思ってる。


「んがっ……1っ……2っ」


上腕二頭筋の次は三角筋だ。


サイドレイズと言う、腕を真横に上げる筋トレをやってみる。

が、普段全然鍛えてないもんで、腕がぷるぷる震えて一度持ち上げるのがやっと……と言った感じである。



「59……60」


感じだったのだが、カウントが60行く頃には震えは無くなり、腕を上げる動きもスムーズだ。


それぐらい効果があるのである。

ほんとやばい。



「ポーションの在庫まだ結構ある……本格的に揃えるかな」


これだけ効果があるのならもっと本格的に器具を揃えてもいいと思う。

4階であまりポーションを消費しなかったので在庫に余裕あるしね。


「午前中ひたすら狩って午後はのんびり過ごす。 で風呂前に筋トレして寝る」


これを3週間続ければかなり鍛えられるのでは無いだろうか?

動画の人物の様にムッキムキになる日もそう遠くは無い。





「ちょっと買いすぎたかな」


そう考えた俺は即行でシャワーを浴びてスポーツ用品店に向かっていた。

俺の部屋の半分は筋トレ器具で埋まっていた。




筋トレを開始する前にクロの様子を見に行くと、丁度目を覚ましたタイミングだったらしく、眠そうにしながらもにゃーっと鳴きながら擦り行ってきた。


「ん、クロおはよ」


ぐるぐると喉を鳴らすクロをひとしきり撫で、ちらっと餌皿に目を向ける。

餌皿は前に見たときと変わっていないようだ。今までずっと寝てたんだね。


「筋トレしてくるからお腹空いたらご飯食べててね」


そう告げて家に戻る俺。

クロはにーと無くと餌皿に向かい歩いて行く。どうやらお腹が空いて目が覚めたらしい。


その日、俺の筋トレは夜中まで続くのであった。





翌朝、俺は予定通り5階でゴブリン狩りを始めていた。



「どっせい」


掛け声と共にゴブリンの顔面に蹴りを入れると、べきょっと首がへし折れグリンと顔が真後ろを向く。即死である。


「蹴りの威力上がってる……? ちょっと分からないなあ」


何となく蹴りの威力が上がっている気もするが、それが筋トレの効果なのかカードの効果によるものなのかは分からなかった。


午後になったらアマツに聞いてみようと思う。

昨日は筋トレに夢中で聞くの忘れちゃったんだよね。



「まあいいや。 やっぱ犬より弱いよなこいつら……えっと、今のでポイントいくら貰えたのかな?」


ちなみに今俺がいるのは小部屋の中である。

ちょうど4体しか居ない部屋があったので突っ込んで見たのだ。


やはり俺の感じた通りゴブリンは犬より弱かった。

力は犬とどっこいで、素早さは大分劣るといったぐあいかな。


手に持つ刃物も切れ味が鈍く、犬の牙と大差ないだろう。

つまり10匹部屋でも余裕と言うことだ。


「4体で20ポイントか……美味しいな」


それなのにポイントを確認したところ1体につき5ポイント貰えているようだった。犬の5倍だよ、美味しすぎる。



「よっしゃー、狩るどー!」


これだけ効率良いのなら猫部屋を追加するのも夢ではない、俺は気合いを入れると次の小部屋へと突撃するのであった。

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