104.砂漠エリア

 無事に街へと帰還した俺たちは、三日間ほど休暇をとった。

 思いもよらぬ長期滞在となり、過酷なスケジュールの疲れが溜まってしまったからだ。

 俺はその間に、次なるエリアに向けて準備を進める。

 と言っても、ほとんど用意は終わっているけど。


【次はどこいくんだ?】


「砂漠エリアだよ」


 宿屋で準備をしている最中に、ベルゼが尋ねてきた。

 砂漠エリアは、雪山エリアとは対極の灼熱地帯。

 加えてどのエリアよりも乾燥していて、日差しも強い。

 必要な装備は、氷結晶から作成した魔道具の指輪と、日差しを遮るマントだ。

 マントは人数分をアンディー道具屋で揃えて、俺のスキルで効果を付与した。


 三日後――


 俺たちはギルド会館で集合する。

 集まった所で、俺が最初に尋ねる。


「十分に休めたか?」


「もちろん!」


「大丈夫」


「わたしもです」


「キリエは?」


「あたしも万全! 次で名誉挽回するからな!」


 キリエも元気になったようでホッとする。

 そうして俺たちは、ひしめき合うギルドボード前に移動した。


「ワーム討伐のクエストはないか?」


「あったよ!」


「よし! それとったら退散だ」


 ミアが依頼書を見つけ、勢いよくボードから剥がした。

 それを確認して、俺たちは人ごみから抜け出す。

 何度も経験しているけど、この混雑だけは慣れないな。


 俺たちは一旦席につき、ミアが持っている依頼書の中身を確認する。


 依頼内容はサンドワームの討伐。

 生息範囲は、砂漠エリア全土と広い。 


「砂漠エリア用の装備は準備してある。先に配っておくよ」


 俺は指輪とマントを配布する。

 砂漠エリアも危険な場所だが、暑さと乾燥さえ耐えられれば、雪山エリアより楽かもしれない。


「砂漠で採るのってワームの皮だけだっけ?」


「いや、ゴーレムの心臓もだ」


「そんなのどこにあるんだ? ゴーレムって魔物じゃないし、自然発生しないよな」


 キリエの言う通り、ゴーレムは魔物ではない。

 ゴーレムは何かを守るため、人工的に生み出された兵器だ。

 現代の技術でも、単純な構造の物なら再現できるらしいけど、俺たちが探しているのはそれじゃない。

 

 砂漠エリアには、大昔に作られた遺跡がいくつかある。

 そこには未だに強力なゴーレムがいて、遺跡を守っているらしいんだ。


「じゃあ目的地はその遺跡?」


「ああ」


「オッケー! そんじゃ出発しよ!」


 張り切って最初に立ち上がるキリエ。

 自分でも言っていたけど、雪山でのことを挽回しようと意気込んでいる。

 張り切りすぎて無茶だけはしないでほしいな。


 砂漠エリアは、海岸エリアを越えた先にある。

 海岸エリアもいずれいく予定だから、ちょこっとだけ下見をした。

 下見と言っても、通り過ぎたときに見ただけなんだけど。


 そこから海岸エリアを抜けると、急激に気温が上昇する。

 植物が減り、地面もサラサラと乾燥しているのがわかる。

 そして、出発から丸一日かけて、俺たちは砂漠エリアに足を踏み入れる。


「あっつ!」


 最初の感想は、キリエが叫んだ一言に尽きる。


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