41.ボスモンスター②ミノタウロス

 日記の内容と地図の数字を頼りに、俺たちは一つの可能性を導きだした。

 正しい順番を見つける者に期待する、という一文。

 ボス部屋に割り振られた数字。

 この二つから推測するに、正解の順序でボスを攻略すれば、繋がっていない部屋へいけるかもしれない。

 ただ、この推理が正しいのだとすると、最後に倒すべきはヒドラでなくてはならない。

 俺たちはついさっきヒドラを倒したばかりだ。

 

 というわけで――


 翌日の早朝。

 日を改めて俺たちはダンジョンへ戻ってきた。

 準備は万全。

 昨日手に入れた地図を見ながら、最初のボス部屋へと進んでいく。

 最初に攻略するボスモンスターは、ミノタウロスをモデルにしている。

 大きさはヒドラに劣るが、俊敏性は圧倒的。

 両手に持ったアックスをたくみに振り回して相手を両断する。

 さらに厄介なのは、魔法を含む飛び道具が通じないということだ。


「ユイの魔法も、俺の弓も通じないと思ってくれ」


「だったら私とキリエがメインだね」


「ああ、俺とユイは可能な限り援護に回る。二人とも頼んだぞ」


「任せろ!」


「頑張るよ!」


 気合十分のミアとキリエ。

 そうして、ミノタウロス戦が開始する。

 部屋はヒドラのときと同じで、殺風景で広いだけだ。

 ミノタウロスはアックスを構え、俺たちを見つけた途端に突っ込んでくる。

 俺が矢を連射して牽制するが、青白い結界に阻まれ通らない。


「情報通りか。あとは任せたぞ」


「おっしゃ!」


 キリエが速攻を仕掛ける。

 アクセラレートと自分で名付けた彼女の突進は、目で終えない速度を発揮。

 しかし、ミノタウロスは反応し回避する。


「うっそ! これ躱せるのか!」


 キリエも思わず驚いて声をあげた。

 彼女の突進が回避されたのは、俺も初めてみたぞ。

 ミノタウロスの俊敏性は予想以上に高いらしい。


 俺とキリエが驚いている中、ミアは隙をついてミノタウロスに接近していた。

 ミノタウロスも彼女に気付き、アックスで応戦しようとする。


「遅いよ!」


 ミアの剣のほうが圧倒的に速い。

 アックスでの攻防は一瞬で押し負け、ミノタウロスはアックスをクロスさせて防御の姿勢をとる。

 さらに大きく後方へ飛び上がり、ミアから距離をとる。

 

「そこだ!」


 着地のタイミングを計り、キリエが超スピードで突撃する。

 まだ空中にいたこともあり、今度は回避が間に合わなかった様子。

 ミノタウロスの片足が抉れる。

 それによって膝を突くが、すぐにアックスでキリエを攻撃しようと振りかざす。

 キリエは瞬時に方向を反転させ、もう一度地面を蹴って加速する。

 そのままアックスを振りかざした腕を刺し穿ち、アックスは地面に落ちる。


「今だミア!」


「わかってる!」


 すかさずミアが畳み掛ける。

 胴体を連続で切り刻み、持ち上げたアックスも弾き飛ばす。

 そして、最後のトドメは――


「あたしが貰うよ!」


 キリエの槍がミノタウロスの胸を貫く。

 見事な連携でミノタウロスを倒したミアとキリエ。

 消滅していくミノタウロスを背に、二人はハイタッチをする。

 俺はそれを微笑ましいと思いながら眺めている。

 隣にいるユイは、ちょっぴり羨ましそうだ。


「次はユイにも頑張ってもらうからな」


「うん」


 そうして、俺たちは次なるボス部屋へと移動する。

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