【書籍化決定】俺だけ作れる魔道具で、ポンコツパーティーを最強に! ~ハズレスキル【鑑定眼】、実は神スキルでした~
塩分不足
1.無能冒険者、追放される
この世界は不平等だ。
生まれ持った才能や場所によって、人生の大半は決められてしまう。
努力は元々持っている才能を強化し、補填する行為に過ぎない。
つまり、初めから何も持っていない者は、努力したところで報われない。
それでも人は夢を見る。
成りたい自分を想像して、いつか掴み取ろうとひた走る。
どれほど険しい道のりだろうと、努力すればたどり着けると信じている。
そうして人は、見果てぬ夢の結末を知るんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「シンク、お前は今日でクビだ」
「へっ……」
清々しい早朝。
騒がしいギルド会館の中でもハッキリ聞こえる声で、パーティーリーダーのガランがそう言った。
俺の頭は一瞬真っ白になって、言葉を失ってしまう。
「な、なんで急に……」
「急にだろうと理由くらいわかるだろ?」
「それは……」
ガランに言われた通り、心当たりはある。
だけど、信じたくない俺は黙って目を逸らした。
そんな俺を見て呆れながら、ガランが言う。
「鑑定眼なんて外れスキルしか持ってないお前は、うちのパーティーのお荷物なんだよ。今日までは知り合いの好と情け半分で入れてやったが、もう限界なんだよ。なんせ俺たちも今日から、上級パーティーの仲間入りだからな」
「うっ……」
咄嗟に返す言葉が出てこなかった。
ガランの言っていることは全て事実だったから。
この世界の人間は、十歳の誕生年に身体検査を受ける。
検査内容の中には、もって生まれたスキルや魔法適正が含まれていて、皆はその結果を元にして、将来なりたい職業を決めたりする。
俺の場合は――
魔法適正:該当なし
保有スキル:鑑定眼Lv.10
隠れスキル:該当なし
という感じの結果だった。
鑑定眼というスキルは、その名の通りアイテムの鑑定に使われるスキルだ。
ちなみに限界レベルだから、どんなアイテムでも鑑定できる。
道具屋さんだったら喉から手が出るほどほしいスキルだけど、冒険者を目指していた俺にとっては外れ中の外れスキル。
検査結果を見たときは、全身の骨が折れるような衝撃が走ったよ。
俺は昔のことを思い出したことでさらに落ち込みながら、何とか引きとめようと言葉を搾り出す。
「で、でも! 罠の探索とか仕掛けの解析とか……俺がやらなきゃ誰がやれるんだよ」
鑑定眼はアイテムを鑑定するスキルだが、限界レベルともなると、アイテム以外も調べられる。
その数少ない長所を使って、これまではダンジョンの罠や仕掛けを解いたり、手に入れたアイテムを調べたりと頑張ってきた。
のだが……
「はっ! 馬鹿にしないでくれる? それくらいアタシでも出来るから!」
そう自信満々に言い放ったのは、弓使いのティアラだった。
エルフである彼女は、人間よりもちょっぴり長生きで傲慢な性格をしている。
一応レンジャー役だけど、いつも俺がやっていたし、今さら彼女に出来るとは思えない。
少なくとも俺はそう思っている。
「そういうわけだ。君の代わりは彼女に任せる。何も問題はない」
パーティーの魔法使いのユナンもそう言っている。
隣に座っている無口な盾役ドーロも、うんうんと頷いていた。
どうやら思っているのは俺だけらしい。
これはもう……何を言っても無駄そうだ。
悟った俺は、がっくりと肩をおとす。
「……決定事項なんだな?」
「ああ。もう新しくメンバーになる奴も決まってるんだ」
「そう……か」
人数の補填もバッチリらしい。
これじゃ本当につけいる隙がない。
「わかった。今日までありがとう」
「おう。まっ、せいぜい頑張れよな! あー道具屋とか始めるなら教えろよ? 客として貢献してやるから」
ガハハハと豪快な笑い声が響く。
俺は彼らに背を向け、ギルド会館を出た。
こんなにも一瞬で全てがひっくり返るなんて、誰が想像できただろう。
いや……俺の場合は必然だったのかもしれない。
外れスキルしかもっていない俺は、冒険者としても外れなんだから。
もっと早くに気付けばよかった。
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もう一作新たに投稿します。
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