結婚って、こんなんでしたっけ!?  ~私と課長の成り行き結婚~

心寧

第1話 彼との別れ

「・・・じゃあね、バイバイ。」


綾瀬 心アヤセ ココロ、25歳。


半年付き合った1つ年下の彼と、たった今、別れました。


嫌いになったわけでも、浮気があったわけでもないが、何となくもういっか

と思ってしまった。


「別れよう」


そう私が言うと、彼は引き留める事もなく、すんなり了承。


そして、現在に至る。




「ハ~、一人かぁ~。」


考えてみれば、高一で初彼が出来てから、今まで一日も彼氏がいない日は

なかったなと気がついた。


165㎝の女の子にしては少し高めの身長に、モデルのようなほっそりした身体に

似合わないEカップの胸。

ハーフのような容姿に明るい栗色の髪と瞳の色。

くっきりとした二重に大きな目。


薄化粧なのに、十分派手に見える顔のせいか、声を掛けてくる男に事欠かなかった。


私だって、馬鹿でもなければ天然でもない。


自分でも、そこそこ美人の部類に入るだろう自覚はある。


「付き合おう」


と言われれば、気持ちが無くても取りあえず断ることなく付き合ってきた。


その結果が、今まで彼氏が途切れたことが無かった理由。



そんな女が何故彼氏と今まで続かないのか・・・。



それは、家の頑固親父のせいだ!


何故かというと・・・。


まぁ、派手な外見もあって付き合う人たちは、簡単に遊べる相手と思って声を

掛けてきていたのだろう。



でも・・


東北のそれも、かなり過疎化の進んだ田舎出身の私は、見た目の派手さとは、

全く真逆の地味で人付き合いも苦手、思ったことも、なかなか口に出せない

ような性格。


でも、打ち解けた人には普通に話せる、自分の家族にはおっかなくて

煩いお姉ちゃんと言われるくらい、内弁慶。


共働きの両親の為、幼い頃から家のこと掃除や洗濯、料理など当たり前のように

やってきた。


3つ下の妹と6つ下の弟の面倒も見てきた。



そのかいあって、かなり家庭的な一面ももっていた。



その為、遊んでそうに見えていた女が実は家庭的と分かった、歴代彼氏たちは、

付き合って一か月もすると「結婚しよう」と言うようになった。


私も、意外に惚れっぽい性格なのか、気持ちもなく付き合いはじめても、その頃

には大好きな彼になっている。


ということで、返事はもちろん


「うん、私も結婚したい!」となる。



だが・・・ここで話がすんなりいけば、私が何人とも付き合う事もないの

だが・・・。


ここで登場するのが、家の頑固親父!


彼とのラブラブな雰囲気の中、親に会いたいという彼の願いを叶えるべく

ドキドキしながら親に電話を掛ける。


何度か鳴る呼び出し音の後


「もしもし、綾瀬ですが・・・」


「あ、お母さん。お父さんいる?」


母に父を電話口に呼んでもらう。


「お父さん、実は結婚したい人が出来て、会ってほしいんだけど」


小さい頃からかなり怖い父、亭主関白そのものの父。


私は、勇気を振り絞ってそう言葉にしたのだ。




だが・・・・



「会わん!」 ガチャン!!



一言で電話は切られた。



事の顛末を彼に言うと、


「会ってもらえるまで何度も連絡してみよう」


と、優しい笑顔で私を励ましてくれる。


でも・・・それが何度も続くと、彼もイライラしてくる。


私は、親が祝ってくれなければ結婚はしたくない。


そうこうしていくうちに、もういっか~と私の方が、諦めてしまい

別れ話を切り出してさようなら。




もうこの展開は、既に6回にはなる。



私って、結婚できないかも・・・。



田舎の結婚は早い。


同級生たちは、どんどん結婚していき、私は遅い部類に入っていた。




「当分、彼はいらないかも・・・」


ポツリと呟き、一人暮らしの自分の部屋に帰った。




彼氏と別れたからといって、生活は何も変わる事はない。


今日もいつものように身支度を整え、会社に向かう。



私の勤める『西園寺サイオンジ物産』は西園寺コーポレーション

を親会社にもつ系列会社の一つだ。


西園寺コーポレーションは日本のみならず、世界各国にもその名を

知られる大企業。


私はそのうちの、西園寺物産で事務として働いている。



会社の前まで来ると、同じ部署の久宝 穂高クボウ ホダカ課長の

姿が見えた。


久宝課長は、27歳の若さで営業成績NO.1の実力を買われ営業部の課長

になったエリートだ。


その上、彫の深い顔にキリっとした眉、くっきりとした二重のアーモンド

アイ・・・・天は二物も与えるらしい。


そんな課長は、会社でも女子社員の人気NO.1だ。




エレベーターの前まできた所で、課長に声を掛けた。


「久宝課長、おはようございます。」


「あぁ、綾瀬か。おはよう。」


課長の低音のセクシーな声が耳に心地いい。


朝からこんな課長の声が聴けるとは、今日はついているのかもしれない。




エレベーターから降りると、課長の後に続き営業部のドアを通った。




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