緊急事態宣言で大学がなく暇してたら、隣に住んでいる彼女幼馴染が同棲しようと言い出した

さばりん

第1話

「……暇だ」


 政府からの特定地域への緊急事態宣言が発令されて、間もなく二週間。

 全国への緊急事態宣言が出てから一週間ほどだろうか。


 世の中は、ウイルス一色。

 不要不急の外出制限が政府から要請され、俺が通う大学も、密室・密接・密集の三密を防ぐため、授業の延期が決定した。


 俺、浅見柊太あさみしゅうたも、一人寂しくリビングのソファに寝転がり、スマホゲームとヨウツベでゲーム実況者の動画を見て、暇を持て余していた。


 バイト先の飲食店も、緊急事態宣言により休業。

 外に出る機会は、ほどんどない。


 大学の奴らは皆、スウィッチのオンラインで遊んでいるらしい。

 しかし、俺はスウィッチ本体を持っていないため、仲間に入れなかった。

 

 カラオケやラウワン・ショッピングモールなどの娯楽施設も全般的に休業しているので、友達を誘って遊びに行くことも出来ない。

 まあそもそも、外出自粛要請の中でわざわざ無理に外に出て感染するリスクを負う必要もないしな……。

 だって、ウイルスにかかるのだけは、絶対御免だから。

 

 ちまたでは、若い世代は危機感が薄いと言われているらしい。

 けれど、俺みたいに危機管理能力をしっかりと持った若者だっている。


 なぜ俺がこれだけ危機感をつのらせているのかというと、十年前くらいに流行った新型インフルエンザ。

 俺は見事に流行の波に乗る形で、そいつに感染してしまった過去がある。

 

 当時小学生の学習塾で集団感染が起こり、その感染者の一人になってしまったのだ。

 大学生になった今でも鮮明に覚えている。

 普通のインフルエンザよりも頭痛が激しく、めまいや立ちくらみ、吐き気が酷く、辛い思いをしたあの経験を。


 今回のウイルスは、若者は無症状患者の人も多いらしい。

 だが、軽症の場合でも、インフルエンザの30倍は辛いと語る感染者もいる。

 

 30倍だぞ、30倍。

 小学生の頃経験した、あの新型インフルですらあんなに苦しんだのに、それの30倍なんて、俺には耐えられる自信が無い。


 だから、こうして俺は政府の要望にのっとり、きちんと隠居大学生活をしている。


 まあそのおかげで、やることがなさすぎて外にも迂闊に出れないので、家の中で退屈・窮屈・鬱屈のまさに三屈状態なんだけどね。


 ちなみに両親は、外出自粛要請の逆境に逆らう形で、テレワークならぬ、まさかのオフィスライフ。

 政府の緊急事態宣言により、両親の勤める会社が打ち出した考案がオフィスライフ。


 外出自粛要請期間中は、会社で所有している月極駐車場内に設置されたシャワートイレ付のキャンピングカーで過ごしてもらうという、なんとまあ画期的なシステム。

 そこから、オフィスまでは徒歩30秒。

 通勤時や家内感染感染のリスクを防ぎつつ、業務を通常通りこなすという、なんとまあ素晴らしい対策。

 おいおいおい、社員一人一人にそこまで完璧に待遇出来るなら、逆にテレワークか休みにしてやれよ。

 

 どんだけ働くことに命かけてんだ両親が働く会社は……ブラックすぎんだろ。


 俺だったら、間違いなくそんな政策打ち出されたら、方針に従わずにぬるっと退職するまである。

 一方で、両親は社畜精神を絶賛ブラック企業によって培われている奴隷社員だから仕方がない。


 そんな両親を心中で哀れに思いつつ、一人怠惰にリビングのソファで寝転がり、ゴロゴロ、ゴロゴロうたた寝していると――


 ピンポーン


 家のインターフォンが鳴った。


 なんだ?

 こんな真昼間の時間に?

 ceep《せーぷ》の配達か?


「はーい」


 受話器を取って、画面を確認すると――


柊太しゅうたー!! 開けてー!!!』


 隣の家に住む、幼馴染が叫んでいました。

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