『小さなお話し』 その63

やましん(テンパー)

『特急電車』 前編

『これは、本日、やましんが、寝ている間に観たゆめです。したがって、フィクションであります。』


       🚆



 あるひ、ぼくは両親とちょっとした旅行にでかけました。


 いささか古風な、特急電車です。


 そんなに、混んではいませんでした。


 電車は、たいへん好調に、快適に走り出しました。


 しばらくは、地下を走ります。


 やがて、小さな駅を過ぎて、また、トンネルに入ったのです。


 なぜだか、ぼくだけ、トンネルに入ることができませんでした。


 それで、小さな駅の地下通路に、取り残されました。


 『はら〰️〰️〰️⁉️なんでかな❔』


 と、思いましたが、どにもなりません。


 ホームの端は、トンネルの入り口です。


 そこには、上に昇る通路がありました。


 仕方ないので、上がって行くと、こじんまりした駅のエントランスがあり、さらに、地上ホームがあって、普通電車が、各方向に出発して行きます。


 階段を上がりながら、質の良くない怪談映画を観たあとのように、『ぎわ〰️〰️〰️〰️〰️』と、ため息💨をつくと、前を歩いていた面識もないお姉さんが、振り向いて『ぎわ〰️〰️〰️』と、まねして、笑いました。


 そんなことしてる場合じゃないぞ。


 この駅は、特急電車は止まらない駅です。


 どうしよう、とりあえず、携帯で連絡しよう。


 しかし、山間部に入ったんだか、またまた、トンネルに入ったんだか、通じません。


 ポケットには、ちゃんと、改札済みの、特急用切符が入っています。


 別の列車で、追いかけようか、と、時刻表示盤を眺めますが、近郊の行き先ばかりで、よくわかりません。


 そこで、テーブルの上に置いてある時刻表を見ようとしたら、くだんのお姉さんが、なんか、ごそごそやっていました。


『ぎわ〰️〰️〰️〰️❗』


 と、ぼくの顔をみると、うれしそうに、言いました。


『どうか、しましたか?』


 ま、どうせ、バカにされてるなら、話してもいいか、と、われながら、ばからしい事態を話して見ました。


『あらあ? その話し、前にもあった、と、まあ、聞いたわ。ほら、駅員さんに話しましょう。』


『え?初めてなわけじゃ、ないのか?』


 お姉さんとぼくは、駅の事務所に行きました。


 待合室が中にあります。


 なんか、わりとたくさんの人が集まっていて、けっこう、殺気だっています。


 黄色のTシャツを着た、おじいさんが、なんだか、怒鳴っております。


 その前には、気分が悪くなったらしい、お婆さんが、横になっていました。


『ここは、そんなことも、わからないのかあ‼️』


 おじいさんは、かなり、ご立腹です。


 でも、待合室の奥から、どなたかが『わからないんだよ。』と言うと、『わからないのかあ。』と、おじいさんが、少し笑いながら答えました。


 そこで、ぼくは、忙しそうな駅員さんをつかまえ、なんという、ばかな話だから、相手してくれるはずもなし、と、おもいながらも、切符をお見せしながら、事情をお話しいたしました。


 すると、


『え、また、起こりましたか⁉️』


 と、真顔でご返事がかえってきたのです。


 お姉さんが言った通りらしい、です。


 特急電車から、ワープしてしまったのは、どうやら、ぼくだけではないらしいのでした。



・・・・・・・・・  🚝

 


 そのあと、ぼくは、駅長室に案内されました。


 先ほどの、女性の駅員さんと、なぜか、あのお姉さんも、いっしょでした。


『正直、たいへん困惑しています。』


 女性の駅長さんが言いました。


『あなたで、こうしたことは、三人目ですよ。』


『あたくしの、母もでした。駅長さん。』


『ええ、そうでしたね。一番悲惨でした。』


『じつはね、あたくしの、母は、トンネルの壁にからだの前側半分、埋まってしまったのです。すぐに、駅員さんが、引っ張り出して、病院に入りましたが、まだ、意識がはっきりしません。』


『はあ〰️〰️〰️。それは。おそろしやあ。』


 ぼくは、ぞっとしました。


『はい。承知いたしております。あの、で、あなたは、時速90キロで走る電車から、突然、時速ゼロになって、立ち尽くしました。信じがたいけど。でも、ビデオがあります、ほら。』


 話題をそらされたので、お姉さんは、むっときているのが、よく、わかりました。


 その、映像には、突然ホームのはしっこに現れたぼくが、映っておりました。


 あきらかに、幽霊みたいなものです。


『あなたが、電車に、乗車するところも、確認できました。しかし、なぜ? なにか、細工なさいましたか?』


『駅長さん、まだ、疑ってるの?ひどいわ。』


『いえ。物理的にあり得ないだけです。物理的にありえないなら、起こるはずがない。』


『じゃ、なんだというの。母のは、何よ? ぎわ〰️〰️⁉️』


『は? な、なんですか? それは。』


 駅長さんが、びっくりしました。

  

 ぼくは、顔が赤くなるのをかんじました。


『おまじないみたいなものですわ。ね、駅長さん。掘りましょうよ。あの、トンネルの向こう側。絶対、なにか、出るわ。』


『はい〰️〰️?』


『駅長さん、このままなら、また、すぐに起こりますよ。事件になることは、間違いない。今までは、なんとか、穏便に済ましたんでしょう。あたくしも、父が、同じ会社のグループ企業幹部なんで、口止めされてますが、そうも行かないと思います。犠牲者が出ないうちに、やりましょう。なにか、あることは。まちがいないですよ。いろいろ、調べてみましたが、公式記録はみつからないけど、ここの、地下工事が行われたのは、戦争直前です。事故とかが、あったんじゃないかと、思ったんです。ようやく、見つけました。ここは、核シェルター用の

回収工事をしました。このさきは、山の下で、通常よりも、深い。幸い、ここは、核の直撃はなかったけど、首都に落ちたとき、それなりのひとが、実は、避難さ、していたし、地上は、かなり、被害があった。なんせ、20メガトンの弾頭だったのですから。でも、なぜか、ここの、そのときの、記録がない。何が、あったのか? あなた、ご存じなのでは?』 


『ほほほ。失礼しました。当時は、わたくしは、学生時代でした。そりゃ、たくさん、避難はしていたでしょうね。』


 ばたばたと、きちっとした制服の男性の駅員さんが、駆け込んできたのです。

 

『駅長、また、起こりましたが、たいへん、まずいですよ。…………………』


 駆け込んできたのは、助役さんだそうでした。


 駅長さんのお耳に、なにやらささやいています。


 『どしました。こそこそ言ってないで、話してくださいよ。ほんと。怒りますよ。ぎわ〰️〰️。ぎわ〰️〰️‼️』


 お姉さんが、立ち上がって、叫びました。


『あ、あ、あ、落ち着いてください。あの、トンネルに、トンネルのかべから、人の足の、つまり、くつの、かかと、らしきものだけ、ちょっとだけ、出てる、と。お客様から。天井に近い場所で、なかなか、気がつかなかったようでして。駅長、警察がきます。お客様が、通報したようです。』 


『そう。じゃ、しかたないわ。あたしも、もう、上からの圧力は、いやだ。掘りましょうよ。かってにでも。まずは、 そのひとを、助けなきゃ。電車、止める。警察と、上役と、どっちが早いかな? あなた、ホームに、小型重機、入れなさい。』


『え、え、いいんですか。』


『やりなさい、責任は、あたしにある。』


『あなた、ひとりの、せいにはならないわ。きっとね。ぎわ〰️〰️。』


 ぼくは、さらに、困惑してしまいました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

            後編に、つづく

 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る