4.アイテム購入にまで運要素入れるなよ。運営に文句言ってやる。



前回までのあらすじ。

機械ティラノを野に放った。



◇ ◇ ◇ ◇



俺は再びテトリス片手に遊んでいた。


飽きたわけではないが、そろそろマンネリ化してきた。


DPを使って別のゲームを呼び出すか。


……ん? 入口に誰か現れたぞ?



――――――――――――――*――――――――――――――

ゴブリン Lv:5

スキル:なし

HP 25/25 MP6/6

力5 頑丈さ1 素早さ4 知識1 魔法力1 器用さ6


醜い小人の魔獣。集団で行動する。

――――――――――――――*――――――――――――――



ゴブリンとやらが6体現れる。


――――――――――――――*――――――――――――――

ダンジョン『引きこもり拠点』がゴブリン軍団にクリアされました。

――――――――――――――*――――――――――――――


え? どういうことだ?


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ダンジョンのとある階層に侵入者がいる時に、階層のボスが倒された、もしくは存在しない場合には、その階層はクリアされた扱いとなります。

そして、最奥層がクリアされた場合、ダンジョンがクリアされた扱いとなります。

――――――――――――――*――――――――――――――


ダンジョンがクリアされたら、何かマズイのか?


俺が消える、とか?


――――――――――――――*――――――――――――――

3日間の間、ダンジョンマスターに入るべきだったDPが、ダンジョンをクリアした者に分配されます。

――――――――――――――*――――――――――――――


は?! ふざけんな!


俺はDPを使わなければゲームが購入できない環境にあるのに、それが他の奴に奪われるだと?!


というか、そういう大事なことは早く言えって言っただろ!



――――――――――――――*――――――――――――――

はぁ。

ではダンジョンマスターの私物がゴブリンに取られそうですが、手早く取り返すことをお勧めします。

――――――――――――――*――――――――――――――


げ、あのゴブリンどもが、部屋の端にあるアイテムを漁ってる!



「おい! それは俺のアイテムだぞ!」



俺はゴブリンどもに怒鳴る。


奴らは小さなナイフを持ってはいるが、50cmくらいの小さな体なので、180cmの俺を見ると大慌てで逃げだす。


俺はスポナーとチケットを持ってる奴に殴りかかり、奪い返す。



「ダンジョン入口に大部屋設置!

そして、大部屋にボススポナー【人工翼蛇アーチファクト・ケッツァコアトル】を使用だ!」


――――――――――――――*――――――――――――――

ダンジョン大部屋引換券を使用しました。手持ち6→5

大部屋を1つ設置しました。

ダンジョン通路引き放題券を使用しました。

必要な通路を敷きました。

ボススポナー【人工翼蛇アーチファクト・ケッツァコアトル】を使用しました。

――――――――――――――*――――――――――――――



俺たちのいる小部屋とダンジョン入口の間に、体育館の10倍くらいの大部屋が現れる。


同時に機械の卵がその部屋に吸いこまれ、光が溢れる。



――――――――――――――*――――――――――――――

人工翼蛇アーチファクト・ケッツァコアトル Lv:120

スキル:【光子銃マスター】【上級魔法マスター】【自動HPMP回復】

HP 2300/2300 MP1050/1050

力431 頑丈さ820 素早さ1277 知識206 魔法力302 器用さ30


神とあがめられる伝説の魔獣を機械で再現したもの。

長い体に翼が生えており、とても素早い。

――――――――――――――*――――――――――――――


全長50mは下らない巨大な、羽を持つ蛇が現れた。


ただし、全身機械だ。



「ゴブリンを殺れ!」



こちらの部屋目がけてレーザーが放たれる。


ゴブリンの眉間を打ち抜き、ゴブリンは倒れた。



――――――――――――――*――――――――――――――

ダンジョンクリア者が全滅しました。

ダンジョン『引きこもり拠点』で獲得したDPは再びダンジョンマスターに入るようになりました。

――――――――――――――*――――――――――――――


――――――――――――――*――――――――――――――

討伐 ゴブリン(10DP)x6

手持ち500DP→560DP

――――――――――――――*――――――――――――――



なるほど、ダンジョンをクリアした奴が全滅すれば、再び俺がDPを貰えるようになるのか。


そして、ダンジョンの侵入者は、ダンジョンのアイテム目当てで侵入してくる、と。



――――――――――――――*――――――――――――――

侵入者の目当てはそれだけではありません。

ダンジョンで採れるモンスターや鉱石などの希少素材、特定のダンジョンのみに存在する施設の利用、ダンジョンの雑魚を倒して入手できる経験値、ダンジョンボスを倒すことで手に入るDPなども目的としています。

――――――――――――――*――――――――――――――



ん? DPってダンジョンマスター以外でも使えるの?



――――――――――――――*――――――――――――――

ダンジョンマスター以外だと、進化、スキル入手などのために使用されます。

――――――――――――――*――――――――――――――



なるほど。

ダンジョンのボスを倒して、強くなるわけだな。


そして、その理屈では、ダンジョンマスターである俺はDPを消費して仲間の進化、スキル入手を行うことが出来る、と。



――――――――――――――*――――――――――――――

その通りです。

DP使用方法には、他にダンジョンの拡張・魔獣配置・アイテムや罠など配置・ガチャを行うなどがあります。

――――――――――――――*――――――――――――――



それはDPの解説の時に聞いたな。


ところでダンジョンにゴブリンの死体があるのは自動で消えたりしないのか?

すごく目ざわりなんだが。


――――――――――――――*――――――――――――――

1日の終了時に自動でダンジョンが回収します。

――――――――――――――*――――――――――――――


なるべく早く消してほしいんだが。


――――――――――――――*――――――――――――――

検索対象「ダンジョンクリーナー」結果1,000,000件以上

1.安物ダンジョンクリーナー(10,000DP)

2.スポナー【安物ダンジョンクリーナー】(5,000,000DP)

3.大食い猫(500DP)

……

――――――――――――――*――――――――――――――


ダンジョンクリーナーが、ダンジョンを掃除してくれる魔獣なのか。


安物でも10,000DPって高いなオイ。


そして大食い猫って何だ。

ダンジョンクリーナー関係ないだろ。


――――――――――――――*――――――――――――――

序盤はダンジョンクリーナーは高額です。

なので、大食い猫は手頃にダンジョンの死がいを掃除してくれるという理由で人気の魔獣です。

大型の死がい数百体でもぺロリと食べます。

――――――――――――――*――――――――――――――


へぇ。なるほどな。



「じゃあ大食い猫を1つ購入で」



今日はゲームが購入出来なくなるが、あんな気持ち悪い死体がいつまでも残ってる方が嫌だ。


1日の終了時に回収というが、とっとと消えてもらいたい。



――――――――――――――*――――――――――――――

大食い猫はダンジョンタイプに合いませんが、よろしいですか?

「はい」

「いいえ」

――――――――――――――*――――――――――――――


ダンジョンタイプに合わないとどうなるの?


――――――――――――――*――――――――――――――

本来の50%以下しか力が発揮できません。

なので戦力としては、

ほぼ期待できなくなります。

――――――――――――――*――――――――――――――



いいよ別に。

戦わせるわけじゃないし。


そのうちダンジョンクリーナーを雇うだろうから、それまでのつなぎってことで。



――――――――――――――*――――――――――――――

購入 大食い猫(500DP)

手持ち560DP→60DP

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俺の目の前に、金色の卵が現れる。


――――――――――――――*――――――――――――――

それはレアエッグですね。

普通のモンスター召喚用エッグは白です。

アイテム購入では、たまに購入アイテムがレアアイテムになります。

――――――――――――――*――――――――――――――


アイテム購入にまで運要素入れるなよ。

運営に文句言ってやる。


――――――――――――――*――――――――――――――

運営に、不具合報告・ご意見報告を行いますか?

「はい」

「いいえ」

――――――――――――――*――――――――――――――


いや、よく考えたら、レア狙いの人に何個も同じアイテムを買わせるという、運営の工夫が感じられる。


ネトゲだとクソ仕様だと叩かれるだろうが、ここは異世界。

この仕様はアリだな。


よし。さっそくレア卵を使って大食い猫を召喚だ。


――――――――――――――*――――――――――――――

レアエッグ【大食い猫又】を使用しました。

――――――――――――――*――――――――――――――


俺の目の前に、尻っぽを除いた全長が1mくらいの、尾っぽが二股に分かれたデブい白毛の猫が現れた。

でけぇ。


――――――――――――――*――――――――――――――

大食い猫又 Lv:55

スキル:【上級魔法マスター】【調理マスター】【鑑定マスター】

HP 736/736 MP629/629

力100 頑丈さ85 素早さ234 知識519 魔法力266 器用さ221


長年生きた大食い猫が妖怪となったとされている。

多芸で知識豊富。だが食事がなによりもの楽しみ。

――――――――――――――*――――――――――――――


……俺より強いじゃん。

というか、俺ってこの異世界では貧弱なのか?


――――――――――――――*――――――――――――――

ダンジョンマスターは不死なので、強さ弱さとは無縁の存在です。

ちなみに、ステータスについても、この世界の一般的な成人男性よりやや強いくらいです。

――――――――――――――*――――――――――――――


――――――――――――――*――――――――――――――

伊乃田命いのだまことLv:1

種族:人間(25歳)

所属:ダンジョン『引きこもり拠点』

職業:ダンジョンマスター

スキル:なし

HP 0/0(不死) MP10/10

力18 頑丈さ16 素早さ12 知識27 魔法力10 器用さ36

――――――――――――――*――――――――――――――



俺のステータスを見る。

不死ってのはダンジョンマスターの特権なのだろうが、能力が猫に負けるというのは屈辱だ。



「にゃ!(で、何すればいいの?)」


「ああ、とりあえず、あのゴブリンの死体を片づけてくれ」


「にゃ(食べてもいいの?)」



何となく猫の言っていることが分かるのは、ダンジョンマスターの力だろうか。


――――――――――――――*――――――――――――――

いえ、猫又の力です。

――――――――――――――*――――――――――――――


そうか。



「ああ、食ってもいい」


「にゃー(いただきまーす)」



猫又がゴブリンの頭をかじろうとする。



「待て待て待て。俺のいる部屋で食うな。

部屋1つやるからそこで食え」


「にゃ!(了解)」



俺はアイテムの中からチケットを取り、使った。



――――――――――――――*――――――――――――――

ダンジョン小部屋引換券を使用しました。手持ち6→5

小部屋を1つ設置しました。

――――――――――――――*――――――――――――――



小部屋といっても、高校の教室くらいの大きさの部屋だ。

それが大部屋の隣に配置された。


そういえば、このチケットって猫又でも使えるのか?


――――――――――――――*――――――――――――――

味方魔獣のみ、アイテムを使用したダンジョン拡張が可能です。

DPを用いたダンジョン拡張が可能なのは、そのダンジョンの持ち主のダンジョンマスターのみです。

――――――――――――――*――――――――――――――



そりゃそうか。

でないと、例えば俺がどっかのダンジョンに入り、そのダンジョンに最下層を追加、そのまま最下層へ侵入、でダンジョンクリア、みたいな抜け道ができるしな。


猫又はゴブリンの死体を、新しい小部屋へ持っていった。


床の血は猫又がもにょもにょ言うと消えた。

きっと何かの魔法だろう。


さて、俺の部屋は綺麗になったことだし、テトリスでもするか。



◇ ◇ ◇ ◇


今回の成果。


増減前500DP

―――――

収入60DP

支出500DP

―――――

現在60DP



ダンジョンマップ(1階層)

入:入口

小:小部屋

大:大部屋


小1小2

┃ ┃

┗ 大1(ボス)

  ┃

  入


小1:猫又の部屋

小2:命の部屋

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