2.ガチャがレアばかりだと? 運営に文句言ってやる。


前回までのあらすじ


伊乃田命いのだまことはダンジョンマスターに転生した。

ダンジョン名は『引きこもり拠点』。

ダンジョンアドバイザーは『人工音声』。

ダンジョンタイプが「近未来」になった。

テトリスの携帯ゲームで遊び始めた。



◇ ◇ ◇ ◇



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入手 「自然獲得(500DP)」

手持ち0DP→500DP

――――――――――――――*――――――――――――――


レベル99だ。


俺じゃなくて、テトリスの難易度の話だ。


このテトリス、レベル1から始まり、得点を入手するとだんだんとレベルが上がり難しくなる。


ブロックの落ちるスピードが上がり、下から不揃いなブロックがせり上がる。


だがそれだけだ。


それに次に落ちるブロックがわかっているため、普通に対処できるってもんだ。


レベル99にしては、集中力が切れてアウト。

それを繰り返す。

俺は時間を忘れるくらい楽しんだ。


どれくらい楽しんだかというと、夕方から始めて朝の日差しが入り、自分が徹夜していたことに気付くくらい。


いやー、レトロなゲームはシンプルながら良いものだ。


それに、この携帯ゲーム、全然電池切れしない。

これが異世界の力か。


俺は体を起こし、立ち上がろうとしたが、くらっとする。


……予想以上に体は疲れているらしい。

ちょっと仮眠するか。


俺がもう一度横になろうとすると、壁の照明が弱くなった。

気を使ってくれてありがとう人工音声さん。


1日経過したので、500DP貰えたし。

使い方は起きたら考えよう。おやすみ。




◇ ◇ ◇ ◇




起きたら、天井に星空が見えた。


プラネタリウムか。ダンジョンのくせにいきなことをしやがる。


俺が起きると、プラネタリウムを照射していた光源の光が消え、変わりに壁のLED電球っぽいのが光りだす。


目が覚めたら夢でしたー、という展開を期待していたのだが、どうやら本当に異世界へ転生したらしい。


今何時くらいだろう。



――――――――――――――*――――――――――――――

時刻を確認します。

現在13:32です。

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夜起きて昼寝る。


深夜バイトしてたら、昼夜逆転生活は自然に身についた。


それにしても、俺の体は腹も減らないしトイレに行きたくもならない。

どうやら普通の人間でなくなってしまったらしい。


ま、ゲームさえ出来れば、そんなこと些細な問題だ。



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メールが1件届いています。

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メール? 見せてくれ。



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ダンジョン運営がんばってなんだな 差出人:女神パチモ

初心者にはこの説明書を渡しているんだな。

この本で序盤は乗り切るんだな。

添付:初心者用ダンジョン運営説明書

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メールを開くと同時に、分厚い辞書みたいな本が現れる。


こんな厚い本なんて読みたくねー。

絶対に開かないぞ。



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初心者用ダンジョン運営説明書に、

11連ガチャ引換券が挟まっています。

――――――――――――――*――――――――――――――



パラパラパラ……。


本をめくってると、人工音声さんの言うとおり、11連ガチャ引換券と書かれたチケットが1枚挟まっていた。


これ、どうやって使うんだろう?



――――――――――――――*――――――――――――――

「11連ガチャ引換券」を使用します。

よろしいですか?

「はい」

「いいえ」

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人工音声さんに言えばいいのか。

もちろん「はい」で。



――――――――――――――*――――――――――――――

以下のアイテムを入手しました。レア度S、SS、SSSが当たりです。

「ダンジョン大部屋引換券x6(レア度S)」

「ランダムスポナー【人工産物アーチファクト系】(レア度S)」

「ボススポナー【人工翼蛇アーチファクト・ケッツァコアトル】(レア度SSS)」

「ボススポナー【人工アーチファクトTレックス】(レア度SSS)」

「ダンジョン小部屋引換券x6(レア度S)」

「トラップ【サイバーブレード】x10(レア度S)」

「トラップ【化学ガス】x10(レア度S)」

「携帯食料セットx100(レア度S)」

「ダンジョン通路引き放題券(レア度SSS)」

「アイテムスポナー【完全ランダム】(レア度SSS)」

「小型監視カメラx100(レア度S)」

――――――――――――――*――――――――――――――



ポン、とアイテムが俺の前にちらばる。


おい、ちょっと待て。

当たったのがレアばかりとはどういうことだ。


ガチャもくじびきも、ハズレがあるからこそ当たった時の喜びが大きくなるというもの。

当たりばかりのガチャとか、いったい何に喜べというのか。


それにガチャといえば、あのガチャポンを回す演出が必要だろう。

いきなりアイテムだけドロップするとか……。


運営はロマンを何も分かっていない。

文句言ってやる。



――――――――――――――*――――――――――――――

運営に、不具合報告・ご意見報告を行いますか?

「はい」

「いいえ」

――――――――――――――*――――――――――――――



はい。


俺の目の前に女神パチモの像が現れる。



「何なんだな。ボクこう見えて忙しいんだな」



パチモ像が喋る。



「あのガチャはどういうことだ?」


「ああ、喜んでもらえただな?

そのダンジョンに適性の高いものが当たるようにしているんだな」


「ガチャ演出なし、レアばかり当たるとか、そんなガチャやっても面白くないぞ」


「そうは言っても、他のダンジョンマスターから演出はまどろっこしいと言われたし、ハズレアイテムを盛り込むと文句が止まらなくなるんだな」



どうやら俺以外にもダンジョンマスターは存在し、そいつらがぬるいことを言ってるせいで、こんな酷いガチャになってるらしい。



「文句があるなら、ダンジョンマスター階位1位になるといいんだな。

多少の横暴言っても許されるんだな」


「それは興味ない」



俺は引きこもってゲームを楽しめたら満足なのだ。



「ああ、別のダンジョンマスター達がボクを呼んでるんだな。

ダンジョンバトル申込み?

今行くんだな」



そう言ってパチモ像は消えた。

彼女も忙しいらしい。


俺は目の前の大量のアイテムを見ることにした。




◇ ◇ ◇ ◇


今回の成果。


増減前0DP

―――――

収入500DP

支出0DP

―――――

現在500DP

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