続 フォンテーン自身が語った、彼の半生
1963年に仮出所をしたフォンテーンは、ハロッズでスーツを新調すると、母とウートンの結婚式に出席した。
そして執事の職を探し、上流階級のお屋敷の住み込みで働く。金持ちの元で働くのは盗みの成果だけでなく、本物の上流階級の生活に触れることでフォンテーンは満足を得た。
性的魅力に溢れていたフォンテーンは、ある屋敷で女主人に惚れられ、ベッドに誘われた。
ある屋敷では、リストにない銀器を売払い、金を稼いだ。
しかし転職先である金融業者クロア氏の屋敷で、フォンテーンの身元が主人に発覚した。またも逮捕されてしまう。容疑は宝石の窃盗だった。計画では、その主人から大金を盗み、海外へ高飛びをする予定だったというのに……。
刑務所に送られたフォンテーンは仲間3人で脱獄し、1966年に再逮捕されるまで窃盗と強盗を繰り返した。
金持ちへのウサを晴らしたい一般人たちが、次々有名な泥棒へ宝石のありかの情報を送る。
賭け屋の自宅へ押し入り強盗をしたフォンテーンは2人の仲間と警察官に扮装し、その賭け屋が盗品を売買していたことを知ると、警察へ匿名で通報をした。
その後、宝石店のショーウィンドウを破って強奪するが、仲間2人が次々に逮捕されてしまう。
単独になった直後、マーガレットという妊娠した若い女性と知り合い、その娘はフォンテーンに「私の娘」と呼ばれるようになる。
マーガレットと同棲しながら、農場で詐欺を働き、クリスマスのパーティに招待した宝石商から空手形で宝石を買った。それがもとでついにフォンテーンは再逮捕された。
警備の厳しい刑務所に収容されたフォンテーンは、不正を働く看守を告発する。その看守は受刑者たちから賄賂を受け取り、記録をきれいなものに改ざんした。そうすると保釈の可能性が高くなるのだが、その看守はサディスティックで受刑者たちを痛めつけていた。
フォンテーンは所長に訴え、初めは相手にされなかったが、受刑者たちが体験したことを話すと刑務所の腐敗が問題になった。しかし、そのサディスティックな看守は罪に問われることはなかった。「受刑者たちが大金を持っていない」ため、裁判で賄賂は不可能と判決が下ったためだった。
嘘つき呼ばわりされたフォンテーンは、(刑事が彼のそばでこっそり落とした)10ポンド札を持ち「金を得る手段はある」と訴えるも、看守は無罪放免で終わった。
刑務所の不正義に失望するフォンテーンだったが、生涯の恋人であるバーナードと出会う。
深い仲になった2人は、出所したらまっとうになって一緒に暮らすことを固く誓う。46歳にして真実の愛を知った。
1970年、先に仮釈放になったフォンテーンは、恋人バーナードのためにある作戦を実行した。
ある男娼の友人から革製のブリーフケースを受け取る。それは金持ちの男性客から盗んだもので、フォンテーンが錠を破ると国家機密の書類が入っていた。
恋人バーナードを早く釈放させるよう、その書類を使ってソヴィエトと裏取引を試みるが、その半ばで結婚したばかりの妻ルースの裏切りにあい、頓挫してしまう。2人(バーナードとルース)同時に愛された悲劇を嘆きつつ。
逮捕されたフォンテーンと入れ替わるように、バーナードは出所した。ルースを使って恋人に高級車を贈ったが、その車でバーナードは事故を起こして他界してしまった。
50歳のフォンテーンは恋人の死にショックを受け、この世を呪い、人生の道をさらに踏み外すきっかけとなる。
1977年、刑務所を仮釈放されたフォンテーンは、執事としてレディ・ハドソンの屋敷で奉公を始める。
服役中にできた恋人のライト青年を呼び寄せ、雑用係としてともに働いた。
フォンテーンは退職後に屋敷の窃盗をする計画だったが、ライトは「早く盗もう」とせかす。そして女主人のダイヤモンド指輪を盗んだことを知ったフォンテーンは怒り、口論となった。
その後仲直り、また口論を繰り返していたある夜、泥酔したライトに銃を撃たれる。幸い、銃弾はフォンテーンの頭をかすめただけで終わったが、この時、命の危険を感じ、ライト殺害を決断した。
以前、ライトは出所したばかりの時、同性愛者の外国人を殺したと、ほのめかしたことがある。だから殺られるのは時間の問題だ。
翌朝、ライトを連れて猟に出たフォンテーンは、猟銃でライトを殺害する。ウートンといっしょに森に穴を掘ってライトの遺体を埋めようとしたが、地面は凍っていた。いったん、諦め、小川のそばに隠し、1週間かけて埋めた。
埋めた場所は殺害仲間のウートンすらわからないほど、完璧な仕上がりだった。
ついに殺人を犯したフォンテーンはつぎにレディ・ハドソンを狙うものの、通報の電話が夫人を救う。「令夫人様。お宅の執事は、宝石泥棒の前科者ですよ」と。電話の主は、新婚時、フォンテーンが付き合っていた愛人の女だった。
警察に連行されたフォンテーンを仕方なくレディ・ハドソンは諦める。女主人は素晴らしい仕事ぶりだった執事の追放を惜しんだ。
しばらくパリに引きこもっていたフォンテーンは、次の雇い主を探し、スコット=エリオット家の執事になる。
非常に裕福な老夫妻はフォンテーンと親しくなり、とくに夫人は「あたくしのお友だちのロイ」と呼ぶほど仲が良かった。
夫妻の銀行口座から金を引き出し、空にすることを計画。キトーという男を仲間にする。病院で出会ったメアリーの友人である。キトーは稀代の泥棒フォンテーンを信奉するが、その彼がフォンテーンを滅亡へと導くことになる。
ある夜、スコット=エリオット氏の部屋を見たいと言い出したキトーと、夫人の部屋へ忍び込むと、でかけていないはずの夫人がそこにいた。「こんな夜更けに何をしているの?」と夫人が問いかけた直後、キトーが夫人の口を抑えて窒息死させる。
フォンテーンはウートンに連絡し、夫人の遺体を車のトランク積んで隠した。
妻の不明を怪しむ前に、フォンテーンは酒に睡眠薬を混ぜ、それを主人に飲ませる。ぼんやりとした意識のスコット=エリオット氏を車に乗せて出発した。メアリーが夫人の衣装を着て、主人の妻になりすまし、小切手を換金する。
村の宿に泊まった翌日、車をレンタルして夫人の遺体を積み替えて、森に埋めた。
そしてフォンテーンたちは、スコット=エリオット氏も殺害する。スコットランドのホテルに宿泊した翌日、車に乗った主人が「小便をしたい」と言って降ろし、背後からキトーが首を締めるが抵抗される。フォンテーンが老人を地面に押し倒し、キトーがスコップで頭を殴った。
遺体を木の下に埋め、フォンテーン、キトー、メアリーは車で旅を続けた。
軽率なメアリーはロンドンの友達に電話をし、夫人の毛皮のコートを着て村をぶらついた。フォンテーンは再三注意をするが、彼女は言うことをきかない。
スコット=エリオット夫妻の殺害が発覚することを恐れたフォンテーンは、暖炉の火かき棒で彼女を殴り、ビニール袋を被せ窒息させた。
メアリーの遺体を川に投げ捨てる。
フォンテーンは大金を手に入れて南国でのんびり暮らしたいのだが、キトーは違った。彼は犯罪者として成功をおさめたいのだ。
その頃、3年の刑期を終えたフォンテーンの異父弟ドナルドが出所した。義父ウートンとうまくいかず、フォンテーンもドナルドをひどく嫌っていた。軽蔑する弟の殺害を決め、仲間に入れるフリを装いながら、ドナルドをクロロフォルムで窒息死させる。
遺体を車のトランクに積み、フォンテーンとキトーは埋める場所を探す旅に出るものの、キトーのミスで警察に捕まった。ナンバープレートを付け替えたが、税支払い済のステッカーの番号はそのままだったからだった。
宿に泊まったとき、オーナーが「怪しい」と感じ、警察へ通報したことで発覚する。警官に車を調べられ、ドナルドの遺体が見つかり、フォンテーンとキトーは逮捕された。
そして終身刑を言い渡される。
※下記ブログに2019年11月16日に掲載したコラムと同じ内容を投稿しました。
英国執事とメイドの素顔
19世紀イギリスに実在したリアルな使用人とヴィクトリア朝豆知識。
https://sitsuji.ashrose.net/archives/2214
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