第9話- 可愛らしい声が、俺の声と重なった -
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――――――――アッッッッッツゥゥゥゥゥゥゥゥゥっ!!
溶けるような熱さを肌に感じて、飛び起きた。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ、何だ、一体なんなんだ!?」
冷静に感じてみれば、肌触りはとてもひんやりとしている。
あの熱さは気のせいだったのだろうか。
それに、意識がもうもうと遠のく感じの頭痛。
頭痛にめげないよう気をふんばり、俺は首を左右に傾け周りを見渡す。
どうやら、俺は仰向けで寝ていたっぽい。
「ここは、どこだ? 部屋のようだが……」
とりあえず、目の前には白い壁がある。いや、これは天井?
「……見慣れている? ん? なぜそう思ったんだ」
そうだ、俺はこの天井を始めて見たはずだ。
俺の部屋の天井と一瞬勘違いしたようだ。
「いや、やっぱここは俺の部屋じゃないな……ここは一体?」
両手、両足の指を握ったり、開いたりして五体が無事であることを確認する。
生きている。
生きているって、なんて素晴らしいのだろう。
底が無い空間に落ちて無事なのは奇跡としか言い様がない。
(底が無い空間……? ――そうだ!!)
気絶から目覚めてちょっと忘れていたが、俺は健二を探しに、あの不気味な森一緒に行った後、謎の少女に取りつかれた。
その後に、蜃気楼のような空間にダイビングされてしまい、今に至るはずだ。
「たしかに、落ちたはずだけど、結構昔のような気がする、ぞ……?
俺は何日間、ここで気絶してたってんだ……」
と、言うことは――
俺は冷涼な掛け布団をババッと翻し、上半身をぐいっと起こした。
それにしても、ひんやりしているベッドだ。
ジェルとか、そういうのじゃなくて、何て言うのだろうか……。文字通り、ひんやりしている。ずっと触っていても、体温が布団に籠ることがなく、熱だけ吸収されていくような感じだった。
部屋を見渡すと、ベッド以外には木製のタンスが部屋の端にポツンと配置されているくらいで特に目立つものは見当たらない。そして、窓から射す太陽の光がぽかぽか暖かい。
「ここは客室っぽいな。随分と清掃が行き届いているようだが……」
それにしても、懐かしいような懐かしくないようなこの感じは何なのだろうか。
もしかして、俺は夢でも見ているのか?
気絶している間は幽体離脱をしていてずっとこの部屋を眺めていたとか。
そういう感じで懐かしく感じているとか、そこら辺だろう。
「まあいいか。深追いする必要はなさそうだしな」
部屋隅にあるタンス上に見たこともない綺麗な青色の花を眺めて、俺は客室から退出することにする。
ドアの取っ手を掴み、カチャッと開く音がたつ。
少し開いて右側を覗きこむと、いくつかのドアが白色の側面に取り付いている。
ぱっとみたところ、ちょっと長い家の廊下だ。
退出した部屋のドアをゆっくり閉めて、廊下の奥から物音が聞こえる部屋に近づいた。その部屋からは、水が流れている音がザーっと漏れてきている。
「なんか嫌な予感がするんだが……」
もしかして、これって浸水か?
実は、ここは拉致してきた人たちを閉じ込められた空間で殺し合いをさせるとか、そういうゲームなのか?
そして、時間以内に殺せなかったら、水死というエンドを待ち構えている……。
「まさか、生死を掛けたデスゲームの始まり……じゃないだろうな」
俺は悍ましい妄想を繰り広げ、何としてもここから脱出してやると意気込み、そのドアを開けると、
「「え?」」
可愛らしい声が、俺の声と重なった。
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