第23話 先を行く者

 僕の中学時代からの友人M月君の体験談。


 M月君が高校生の頃、出ると噂の城跡公園へ男四人で肝試しに行った時である。


 山間にある古い公園で、周囲は笹薮になっており、見通しは良くない。


 夜中の駐車場に車を停め、ずっと奥へ続く階段を上って行く、階段は結構急で思ったよりハードな運動だなと、軽口を叩きながら歩いていた。


 もう少しで展望台になっている社へたどり着こうかという時、ふと、パシンッ! パシンッ! と何かを叩くような音がする。


 笹薮に枝を打ち付ける音の様にも聞こえなくはないが、どうも頭上の空中から聞こえるようでもある。


 自分達が出した音ではない、近くに野生動物でもいるのかと辺りを伺ってみると、メンバーの一人A君がスタスタと先を歩いて社の中に歩いて行ってしまう。


 何だ? Aのやつと思いながら先へ進もうとすると、後ろからA君が走ってくる。


「すまん、靴紐ほどけた。置いて行かんで」と言ってやって来るではないか。


「えっ!? お前さっき社の中へ入って行ったよな?」とM月君が訊くと。「知らん、後ろで靴紐直してた」と言うではないか。


 三人はパニックになり、来た道を全力で引き返しました。A君はポカンとしていましたが、皆が逃げるので急いで後をついてきたそうです。


 四人は車に乗り込むと、急発進で逃げました。


 あれは一体何だったのか、今となってもよくわからないそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る