第7話 地下室の足音

 高校時代からの友人Sさんに聞いた話。


 Sさんは二十代から塗装業の会社で真面目に働き、独立して子供も娘二人が出来、念願の一戸建てを手に入れた。


 元々は古い民家が建っていたところだったが。持ち主はそこを使っておらず、寝かしていた土地だったので安く買えた。新築の時も仕事仲間に頼み格安で仕上げてもらったので大満足だった。


 玄関を開けると奥にキッチン、隣にバスルームと水場があり、その手前はリビングとリビングに隣接して小さな和室があった。二階にも部屋がいくつかあり、子供たちはそこを使っていた。


 奥さんも普段は二階を使っていて、Sさんが寝ている部屋はリビングの隣の和室だった。


 その和室が少し妙なんである。夜寝ているとカツンカツンと硬い靴底の革靴の様なものでコンクリートの上を歩いているかのような足音が、地面からするのである。


 それは一定の範囲をぐるぐると回っている様に聞こえる。毎日ではなかったが週に二三度、きまって真夜中に聞こえた。足音がするとなぜか目が覚めるという。


 家に地下室を造った覚えはない、何らかの地下施設があるようにも思えなかったが、あまりに気になるので自宅を建設した業者を呼び調べさせた。


 すると、キッチンに床下に入れる場所があり、そこから入り調べてみたところ、リビングの下あたりに地下室へ続く階段があったのだという。地下室の場所はちょうど和室の下だった。


 地下室に入ってみるとコンクリート張りの部屋に、神棚と壁に日の丸が掛かっていたそうである。


 地下室の床は埃まみれで何かが歩いたような跡はなかった。地下室の雰囲気に少しぞっとしたが、不思議とそれほど悪意あるものではないのではという感じがしたそうだ。


 さてどうしようかと、とりあえず神棚を神社に持ち込んで供養した。日の丸も御焚き上げしてもらい、地下室はそのままにしたという。


 その後足音はほとんどしなくなったそうだが、稀にまだ聞こえるという。

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