14「三十六計 -さんじゅうろっけいー」

藤代ふじしろ君。これはどういうことかしら?」

「私のために、主夫になってくれるって言ったじゃない」

「わたしと温かい家庭を築くって、子供は二人以上って……」

「あたしが卒業するまで待つというのは、嘘だったんですか?」


 妖艶な笑みを浮かべる女社長。同期内で最初に出世したキャリアウーマン。子供好きの保育士。夢を追う女子高生。四人が四人とも、を自分だけの恋人と思っていたのである。


「藤代グループと一緒にできたら、事業の新展開ができたのよ」

「藤代家に婚前挨拶をしに行ったら、息子はいないと言われたわ」

「わたしが求めたのは、表の人。代藤極道の人じゃない」

「時々、香水の匂いがすると思っていましたが……」


 それぞれ違う理由で、代藤が名前をかたっていたことがばれてしまった。

 どこにも逃げられずにいると、ヘリコプターが近づいてきた。そして下りてきた縄梯子なわばしごを掴む。すぐに上昇。

「楽しい一時ひとときをサンキュー!!」

 投げキッスをして、代藤はその場から逃亡した。



三十六計さんじゅうろっけい:困ったときは、どのような方法よりも、その状況から逃げ出すのが最も賢明であるということ』


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