名のない公園の住人達
無気力0
第1話 見えない景色
この町には、とても大きな公園があります。
休みの日には、子供連れの親子や中高生のグループ、御老人、老若男女問わず集まるのです。
悩みを抱えた人、そうで無い人、気まぐれに訪れた人、様々な人がここにはいます。
また明日も来る人、来週来る人、そしてもう来ない人。
気にもならない出会いと別れが無数に繰り返されるそんな場所。
そんな人達を覗いてみませんか?
あそこにいる若い人、あそこで遊ぶ少年、それを見守るお母さん。
そんな彼らは今何を考えてるのか、知りたく無いですか?
人の数だけ溢れる感情がここには多くあるんです。
では、行ってみましょう。
まずは、あそこのベンチに腰掛けている女の人を覗いてみましょう。
いいご身分だなと私は公園で常々思っている。
自分にではなく、この公園で楽しそうに遊ぶ子供、親、学生にだ。
私は、休みを返上してまで、看護婦という仕事をしている。苦労しているのにも関わらず、他の人間は楽しそうな顔をして、呑気に公園に来ているのだ。
だから、私はこいつらにアピールするように制服を着たままベンチに座り、昼食を食べているのだ。
偉いだろう、偉いだろう、私はお前らとは違って働いてるんだぞ?と思いながら冷えた弁当を食べ進める。
1人で、この公園のベンチ1ヶ所を占領しながら食べるご飯は美味しかった。
堂々と真ん中に座り、まだスペースがあるがそこに座らせないよう荷物を置いて、私のベンチだ!と言わんばかりに見えているはずだ。
それもそうだろ、働いてる私は偉いんだ。
休んでる人と比べれる筈がないだろうと、皆も働いているかもしれないけど、私は今も働いているんだ。
そのささやかなこの時間を誰も邪魔はできるはずもない。
「はぁ.....」
そんな事を、偉そうに脳内で考えている自分がとても嫌になったりもする。
だってそんな事思っていても、どんだけ心の中で偉くなっていても私は「隣いいですか?」って言われたら、偉そうに広げている荷物を片付けて「あっ、.....」とか言いながら言葉に詰まってしまうような小心者なんだから。
でも、そうやって自分は偉いって頑張ってるからって思わないと心がもたないって思う。
仕事では、理不尽な台詞を投げつけられ、苦手なコミニュケーションを取り、心を削りながらお金を稼ぎ、それで生かされているんだから........この短い昼のご飯を食べる時間だけ....この時間だけが私は偉くなれるんだから....
「よし、午後も頑張ろう」
そう言い、彼女は空になった弁当箱をしまい。小さく深呼吸をして、小さな彼女の身体は、大きく踏み出し、苦手な事でもやらないといけない使命感や責任感を持ちながら、心を削ろうとも、この公園がある限り、このベンチをがある限り、いつでもリセットできるのだった。
心の中で、偉くなる自分、周りを見下すも口にはせずそれが自分を救うのであるなら1つのストレス発散方法なのかもしれない。
それが、はたして良いのか悪いのかはわからないし他人が決める事でも無いだろう。
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