09「上品」

 大きく開放的な窓から、さわさわと風が吹き込む。レース刺繍のカーテンが揺れ、柔らかい日差しに照らされて白く光っている。


 天井からは、インテリアも兼ねた照明器具。複雑に交差している細い線を囲うように貼られている和紙のおかげで、温かい明かりで部屋を照らすのだろう。


 部屋の角には、背の高い観葉植物。手入れが行き届いているようで、艶のある濃い緑色をしている。その対角には、百合ゆり霞草カスミソウなど白で統一された花が花瓶に活けられている。


 壁際には、丸ざぶとんが載せられた安楽椅子。すぐ横には丸テーブルと、毛糸が入ったかごと棒針が二本あった。


 安楽椅子の正面には大きな棚があり、賞状やトロフィーがいくつも飾られている。下段には、様々な国の言語で書かれた、装丁そうていが立派な本が並ぶ。金字の背表紙がきちんと整列している様は、なかなか壮観だ。



 ――ここはきっと、【上品なマダムの趣味】の部屋。




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