06「騎士」

 壁と床が石造りのこの部屋には、砂がよく溜まる。通りに面していない、格子がめられただけの小窓から吹き込むのだ。毎日使うであろう寝台の上にも、大量の砂が積もっている。


 寝台すら砂に埋まりそうな部屋の一角に、板で区切られた場所があった。

 小部屋だ。

 わずかな風の通り道すらない密閉性の高いそこは、床に照明器具が置かれている。そして、人の目線よりも少し高い位置に棚があった。


 砂漠の強い日差しや吹きつける砂から頭部を守る、クーフィーヤ。クーフィーヤを留める、イガール。そのどれもが、足元の光に照らされている。

 最早これは、棚ではなく祭壇だろう。


 クーフィーヤもイガールも色は黒。それはこの国で第二王子を示す色だ。

 よく見れば、祭壇に置かれた品々は全て上等な素材でできているとわかる。部屋の様子から、それらは王子から贈られた品のようだ。だからあがめているのだろう。



 ――ここはきっと、【第二王子に心酔する騎士】の部屋。

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