02「魔法使い」

 ぐつぐつと煮える釜には赤黒い液体。

 所々腐食した黒ずんだ棚には、小さな壺がいくつも並ぶ。

 粉末状になっていないマンドラゴラ、トリカブト、ジザガオ等々様々な薬の材料が積まれる一角には、不精で溜まってしまった古い杖が何本も。


 テーベ文字、ルーン、オガム等々解き明かそうとした様子が見受けられる雑記が床に散らばり、足の踏み場もない。


 開閉された形跡のない暗幕には埃やら何かの粉末やらが付き、薄暗い部屋の中で妙に明るい。


雑多に物が溢れる中、蝋燭ろうそくの火で照らされる机には数枚の紙。

「なぜ自分を改めないといけないのか」「自分の優秀さを理解させる方法……?」等々プライドの高さがわかる。


 しかし壁には、「人と会う際は笑顔で」「舌打ちしない」等の注意事項が所狭しと貼られていた。



 ――ここはきっと、【捻くれた魔法使い】の部屋。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る