幸せってなんだっけ?
無月兄
第1話 失恋、そして未知との遭遇
「彼女ができたんだ」
照れながら話すサトルは、今まで見たことのないくらい幸だった。
「へえ、よかったじゃん」
だから私も、笑顔でそれに返事をする。きっとそれが、小さい頃からずっと一緒にいた友人としての、正しい反応のはずだから。
だけど…………
「サトルのバカー! 私だって、ずっとサトルのこと好きだったのにーっ!」
家に帰った私は一人叫ぶ。両親共に帰りが遅いから、誰に遠慮することなく大ボリュームで叫び散らす。
どうしてこうなったんだろう。少し前までは、明日から始まる、高校に入って初めての夏休みにワクワクしていた。
何して遊ぼうか。どこかに行くなら、サトルも誘ってみよう。そしてあわよくば、長年暖めてきたこの恋心を伝えて……そんな事を考え、浮かれていた自分がバカみたいに思える。
「そう、一番バカなのは私……」
今にして思うと、私がサトルと付き合うチャンスは、告白する機会は今までにいくらでもあった。
なのに私にはその勇気がなくて、ずっと仲のいい友達のポジションで満足していた。これじゃ、他の誰かに先を越されたって仕方ない。そんな自分の臆病さが、どうしようもなく許せなかった。
「ああ、私のバカ」
もう何度目かも分からない「私のバカ」を呟いた時、唐突にそれはやって来た。
ガシャーン!
急に部屋のガラスが割れ、窓を突き破ってUFOが飛び込んできた。
もう一度言う。UFOが飛び込んできた。
UFOの大きさは、この部屋の半分くらい。そんなものが猛スピードで突っ込んで来たものだから、当然その衝撃も凄まじい。
壁は壊れ机は倒れ、そして私は派手に吹っ飛ばされる。
そうか、これは夢なんだ。
そんな事を思いながら、私の意識は急速に薄れていった。
「夢じゃなかった……」
どれくらいの間気絶していたんだろう。目を覚ました私が見たのは、破壊された部屋と相変わらずそこにあるUFO。それに、私と同じくらいの歳の少年だった。
「ごめんなさい。少し着陸を失敗してしまいました。僕は銀河の中心にあるボッヘリト星からやって来た、スイフカヤシタと言います」
少しじゃない。そんな言葉が出かかったけどグッと堪える。
見た目はごく普通の日本人。強いて言えばちょっぴりイケメンなくらいで宇宙人感ゼロだけど、このUFOを見る限り、言ってることは本当と思っていい。宇宙人相手に下手な事を言ったら、何をされるか分からない。
「まずは、壊してしまったものを元通りにしようか」
スイ……なんとか。ええい、もう面倒だからスイでいい。
とにかくスイはそう言うと、右手を上げパチンと指を鳴らす。するとその途端、部屋の真ん中に鎮座していたUFOが消え、壊れた壁や窓が一瞬にして元に戻っていった。
「なに、これ……」
まるで魔法のような光景に目を丸くするけどスイは何でもない事のように話を進める。
「ボッヘリト星の科学に不可能はありません。それより私の目的ですが、簡単に言うと、あなたを幸せにするために来たのです」
「はっ?」
さすがは宇宙人。全く理解不能な事を言ってくる。
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